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やっとの帰還

「本当に、いつも手間をかけるわね」

「いいんですよ、ミア様」

自分の部屋に戻ろうとするにも一人では歩けない。片側をネイに支えてもらってやっと歩けるくらいだ。

「……初めてね、こんなにボロボロになったのは」

「ミア様は進んで無理をする方ではないですものね」

「まぁ、ね。これっきりにしたい所だわ」

「私としては、頼っていただけて嬉しいですよ?」

確かにさっきから彼女はちょっと上機嫌だ。いつもネイには頼りっぱなしだと思っていたけれど彼女から見ると案外そうでもないのだろうか。

「いつでもネイのことは頼りにしてるわよ」

「もっと甘えてくださってもいいんです。ね、ミア様?」

彼女はこちらを覗き込んで微笑みながら言ってくれる。そんな顔で言われたらもっと頼りたくなってしまうではないか。せっかく妹とも再会できたから姉らしいところを見せたかったのに。

「……気分が乗ったらね」

「はーい」

私ももっと素直に気持ちを言うべきなのかもしれないけど口にできない。そんな葛藤を抱えていたら自分の部屋の前にいた。

彼女にベッドへ寝かせてもらったところでイオナが部屋の扉をノックしてきた。

「マスター、今よろしいですか?」

「ええ」

ネイに扉を開けてもらうとイオナだけでなく二戸が入ってきた。何か大きな荷物を持っている。

「二人して……どうしたの?」

「明日、マスターを王都まで送り届ける予定なのですがせっかくなのでこちらをお持ちください」

「何々?」

二戸が荷物を開けるとそこには無くなったはずのドレスが入っていた。てっきり奪われてしまったと思っていたのに……、取り返してきてくれたのだろうか。

「これ、いったいどうやって……」

「マスターのため、この二戸、徹夜で仕上げさせていただきましたわ」

無表情に見えるその表情がほんの少しだけ自信ありげに見える。

「嬉しい……ありがとう、二戸!」

「良かったですね、ミア様」

「ええ……!本当に!」

「そこまで喜んでもらえると人形冥利に尽きますわね」

「絶対に着こなして見せるわ」

これは何が何でもパーティーに出なければ。写真が取れればいいのだが……、元いた世界じゃないしそれは厳しい。パーティーに出る時に八戸を呼んでみようか。

「では、また明日。しっかりお休みくださいませ、マスター」

「おやすみなさいませ」

そう言って二人は出ていった。

「ミア様、お二人の言うようにしっかりとお休みしましょう。明日少しでも動けるように」

「ええ……そうね」

そう言って彼女は布団をそっとかけてくれる。

「……早くレイに会いたいわね」

「明日、会えますよ」

「母に妨害されないかしら……それでなくても妹にもしものことがあったら……」

「レイ様にはオーバも雫もおりますし大丈夫ですよ。何かあったら知らせてきますってミア様」

「……それもそうだけど」

やはり一抹の不安はぬぐえない。あの母のことだ、私の排除にあれだけ執着して来たのだから諦めているはずがない。どんな手段を使って妨害をしてくるか、パーティーをぶち壊しに来るかわからない。

「それに、ロベリア様もエイリーン様もいらっしゃいますし下手に手は出せないですよ。いくらあの奥方様とはいえ」

「だといいのだけれど……」

「ともかくミア様は体力と法力を回復させないと。それから考えても遅くはありませんよ」

「確かにそれもそうよね……うん」

彼女の言う通り一人で動けない私がいくら考えたところでレイを守れない気がする。

「じゃあ、私はここにいますから。安心してお休みになってくださいね」

そう言って彼女は手を握ってくれた。

「……子供じゃないんだけど私」

「少しくらいお世話させてくださいませ、ミア様」

「わ、わかったわよ」

仕方ない。確かに安心するのも事実だしほんのり温かいし少しは眠りやすくなっているはずだ。疲れているせいかいつもより短時間で意識が闇に沈んでいった。



「……ア様、ミア様。起きてくださいませ」

「んぅ……?」

「ミーアーさーまー?起きてください!」

「ん……おはよ、ネイ……」

眼を開けるとネイが布団を引っぺがしていた。

「もう朝ですよ」

「もう……?」

「もう、ですよ」

昨日よりは少し体のだるさが取れた気がするが体を起こすのにまだ時間がかかる。少し頭もくらくらする。

「体調はいかがですか?」

「昨日よりはマシ……ってところかしらね」

「あまり良くはなさそうですね……では今日も付きっ切りでお支えしますね」

「お願いするわ」

そう言って彼女は手を差し伸べてくれた。その手を取ると引っ張ってくれて立つことができた。昨日よりはまっすぐ立てている気がする。

「そう言えばどちらに?朝ごはんは運んできますけど」

「……用を足しによ。……言わせないでよ、もう」

「し、失礼いたしましたミア様」


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