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解放

目を覚ました時、太ももの上が少し重かった。少し目線を落とすとネイがすぅすぅと寝息を立てている。

「……かわいいわね」

頭の痛みもだいぶ薄れて、気持ち熱も下がったように感じる。彼女たちのおかげだ。しばらくかわいい彼女の寝顔を眺めていようかと思ったが、私が少し動いてしまったので彼女が起きてしまった。もったいない。

「ぁ……ミア様……?」

「おはよう、ネイ」

「も、申し訳ございません!いつの間にか眠ってしまいました……」

「いいのよ。寝られる時に眠ったほうがいいもの。それより、付きっ切りで看病してくれたみたいで……ありがとうね」

「いえ、当然のことですよミア様」

彼女がずっと手を握ってくれていたみたいで、このおかげで悪夢を見ずに済んだのかもしれない。

「体調はいかがですか?」

「昨日よりはだいぶましになった気がするわ。少し楽よ」

「では、何か軽くお腹にいれるものを持ってきますね」

「ありがと、お願いするわ」

さっきからお腹が鳴りっぱなしでちょっとだけ恥ずかしい。しばらくすると、ネイとイオナが一緒に入ってきた。

「あら、おはよう。イオナ」

「おはようございます、マスター。体調が良くなったとのことですのでお食事が終わったら首輪の破壊をしたいのですが」

「ええ、もちろん。お願いするわ」

正直早くこの首輪を外してほしい。もちろんほかのところのベルトも。そのためにも早く食事を済ませてしまおう。


「さて、マスター。そのような姿をさせて申し訳ありません。体が動いてしまうとマスターの体に障るので一時的に拘束させていただきます」

今、私は手術台のような台の上でうつ伏せになり体が動かないように拘束されている。スカートだけ身につけて上には何もつけていない。病み上がりの体には少し寒いかと思ったが暖房のおかげで平気だ。ネイも少し離れたところから心配そうに私のことを見ていてくれる。

「全てのベルトと首輪を外すためにお洋服を脱いでいただいていますが寒くないですか?」

「ええ。大丈夫よ」

「ではこれから破壊してまいりますね」

「解呪じゃないの?」

普通こういう呪具のようなものは時間をかけて外すものだとばかり思っていた。

「普段ならそうするのですが、マスターのこれからの予定を考えたところその首輪を短時間で外すには圧倒的な法力で術を破壊しつくしてしまうのが一番早くマスターの負担が小さく、早いことが分かったのでその方法を取ろうかと」

「なるほどね、わかったわ」

やはり正攻法で外すのはだいぶ手間のようだ。本当にあの母はいったいどこでこんなものを調達してきたのだろうか。ますます不思議だ。そんなことを考えていると首の後ろに何かが当たる感覚がする。一瞬のちくっとした感覚の後弱い圧迫感を感じた。

「痛くないですか?マスター」

「ん……大丈夫」

「では、始めます」

そう言うのが聞こえると同時に体から法力が吸われていくのが感じられた。普段は決して味わうことのない速度で法力が消費されていく。

「なんか……熱くない?」

「申し訳ございません。もう少し我慢を」

首が段々と熱くなってきた。ほんのりと髪の焦げる匂いがしてくる。と思ったら、五分くらい経った頃、いきなり大きな音を立てて首輪がはじけ飛んだ。

「痛っ……!」

すぐに圧迫感が無くなってほっとしたと思ったら、ヒリヒリする首元に冷たい感覚がはしる。

「イ、イオナ!?」

「火傷を放置してはいけないので冷やすことだけお許しを」

「わ、わかったわ……」

どうやら火傷をしてしまったらしい。胸元や手首のも同じように爆発するのだろうか。少し恐ろしい。

「……少々お待ちを」

それを察したのか彼女はそう言って部屋を出て、何か黒い布のようなものを持ってくる。

「失礼します」

その声と同時に彼女の手が私の背中を触ってくる。シルクのような布がベルトとの間に入ってくる。

「先ほどのように火傷をするのを防ぐために少々布を入れさせていただきました」

「あ、ありがと。イオナ」

「では、また続きを始めますね」

「ん」


思ったより時間はかからなかった。ものの三十分くらいで全ての処置は終わった。終わったと思ったらすぐにネイが駆け寄ってきた。

「お疲れさまでした、マスター」

「やっと終わったのね……」

「ミア様!大丈夫ですか!」

「大丈夫よ」

とはいうものの熱いは熱かったし体から力が抜けていく感覚が気持ち悪くて早く終われとずっと思っていた。

「それにしても、このようなものを調達なさるとはいったい……」

イオナは私の拘束を外しながらそう呟く。ネイは私の首元を冷やしてくれていた。

「あはは……母のことだし色々な伝手があるんでしょうね」

そう言って体を起こそうとすると腕の力がふっと抜けて倒れ込んでしまう。貧血みたいな感じと言えばわかりやすいだろうか。目の前が真っ暗になってないのが違うくらいだ。

「マスター、急に体を起こしてはいけませんよ」

「ご、ごめんなさいね」

彼女が体を支えてくれたおかげで顔面から机とキスするのは避けられた。

「いいですか?マスターは今、大量の法力を使ったので珍しくすっからかんです。しばらくは体の調子は良くないと思うので、私達はもちろんネイ様達にもしっかり支えてもらってくださいませ」

「わかったわ」

「お任せください、ミア様!」

早速彼女に体をさせるのを手伝ってもらって、服を着させてもらった。驚いたことに信じられないくらい体がだるくて力が入らない。


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