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救出劇の後

次に目を覚ますと前も見たことあるような天井があった。

「あれ……?私……」

「お目覚めですか?マスター」

「イオナ……?」

「ええ、そうですよ。マスター」

まだ頭が痛い。だが、おでこに冷たいものがのっかっている。

「ここって……」

「イオナイドの中でございます。申し訳ございません、マスターの部屋は襲撃されてしまったのでこちらに移動しました」

「なるほどね……」

どうやらあの部屋のことはばれてしまっていたらしい。イオナイドがあって良かった。

「マスター、お食事をとられますか?一応ご用意はしていますが」

確かにお腹はだいぶ減っている。あんまり食べていなかったし。

「……そうね。頂くわ」

「では、持って参りますね」

そう言って彼女は部屋を出ていった。体を起こしてみると、全身が痛い。おでこに乗せてあった冷やしタオルもお腹に落ちてきた。

「逃げられたのね……」

首元を触ると相変わらず嫌な首輪がついている。今更ながら服が着替えさせられているのに気が付いた。入院着みたいな服を着せられている。肌に直接触れているのに違和感があんまりない。いったいどんな素材でできているのかちょっと気になる。

「マスター。お持ちしました」

いつの間にかイオナがおかゆを私の目の前においてくれる。と同時にお腹の方からくぅと音が鳴る。ちょっと恥ずかしい。

「いきなり普通の食事では体に良くないかと思いましてこちらを用意しました」

「あ、ありがとう。助かるわ」

実際温かいご飯が食べられるだけありがたい。一口食べると体中に美味しさが染み渡る。久々にこんなに温かくて美味しい食事をした気がする。

「……おいしっ」

あっという間に食べ終わってしまった。

「お薬も飲んでくださいね」

「ん。わかったわ」

まるで前の世界の薬みたいな錠剤を水で流し込む。

「ねぇ、イオナ」

「はい、マスター」

「あれから何日経ったの?」

「ほぼ丸一日ですね」

となると明日か明後日に入学パーティーだろうか。あの誓約書を書いてしまった以上行くことはできないかもしれないが。

「マスターの体調が治り次第、学院まで送って差し上げますね」

「えっ……?母があの書類を出してしまったらもう入学できないはずよ?」

「いえ、マスターを救出した際にレイ様たちがその書類を処分したそうです。軽い小火騒ぎになったらしいですが」

「そうなの……。って、レイは無事なのね。よかった」

自分の入学書類よりも妹の方が大事だ。あのどさくさで取り残してしまったら母に何をされるか分かったものではない。

「はい。王都のとある場所で護衛付きで待機していただいています。マスターの首のこともありますし」

「あぁ……これ、ね」

「解析は進んでおりますのでもう少し我慢いただければ外すことが叶うと思われます」

「……本当に?」

外せないと聞いていたのに……。本当に彼女たちは規格外だ。

「ええ、我々にお任せください。その間にマスターは体調を整えていただければ」

「そうさせてもらうわ」

「では、後のことはネイ様にお任せいたします。ご用の際にはお呼びくださいませ」

ぺこりと一礼をして部屋を出ていく。そして代わりにネイが入ってくる。こちらを見るなり心配そうな顔をして私の元へ駆け寄ってくる。

「ミア様!ご無事ですか!」

「大丈夫よ。ちょっと体が痛むくらい」

「よかった……。あまり無理をなさらないでくださいね」

「ん。そうするわ」

そうして彼女の手を借りてまた寝かせてもらう。なんだか昔に戻ったみたいだ。

「なんだかちっちゃいころに戻ったみたいね」

「ミア様、風邪を引いた時あんまり甘えて下さらなかったですけどね。ふふっ」

「それじゃあ、今は甘えさせてもらおうかしら」

彼女に手を伸ばしてみる。確かにちょっと甘えてみるのもいいかもしれない。

「ミ、ミア様!?」

どうやら彼女には想定外だったみたいで驚いている。もちろん私が伸ばした手はしっかりと握ってくれている。ほんのり温かくて安心する。

「ネイもあの時ケガしなかった?本当にいつも迷惑かけてごめんね」

「……大丈夫ですよ、ミア様。私はずっとミア様と一緒にいますから」

驚いた顔から優しい顔に変わる。声色もとても柔らかい。そんなに年は離れていないはずなのにまるでお母さんみたいだ。

「ありがとうね」

「セイラさん達も早く会いたがっていましたから、早くお体治しましょうね。ミア様」

「ん。そうね」

少し話しているうちに眠くなってきた。薬の影響だろうか。さっきまでずっと寝ていたのにまた眠気が襲ってきた。

「少し、寝るわね……」

「はい。おやすみなさいませ」


「ミア、だいぶ元気そうでよかったわ」

「あんまりのぞき見はいいものではないですけれど……」

「どうせあっちからはばれていないんだから大丈夫よ!」

「不思議なものいっぱいだよねぇここ」

「皆様、あまり騒ぐとマスターのお部屋に聞こえてしまいますよ」

「えっ、そうなの!?」

「冗談ですよ」

少し離れた部屋では艦内だけで使える仮想モニターのようなものを三人で見入っているマスターの友人がいた。

「そろそろ大丈夫ですか。余りマスターの寝顔を観察されるのもちょっと困るので」

「大丈夫よ!ミアなら怒らないわ!きっと!」

本当にこの皇女様は自信が溢れている。根拠がない時も多いが。キラキラした彼女の眼を見ると本当に怒られないかもしれないとさえ思えてくる。

「マスターの首輪の処置もありますので……」

「そう言えばそれもあったわね。じゃあ仕方ないわ」

「あれ、本当に外れるんですの?」

ロベリア様はまだ半信半疑の様で、何度か確認してくる。

「ええ。そのはずです。何としてでもイオナイドの名に懸けて外します」

我々がマスターの願いに答えられないなどあってはならない。彼女の願いは出来る限り全てかなえたい。


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