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軟禁生活

「あれがミアのお母さんなの……?」

少し怯えを含みつつ尋ねてくる。私だけ縛られていてうまく動けない。

「……ええ。私達の母よ」

「あんなに怒ってるなんていったい何が……」

「昔にちょっとね……これからちょっと不便をかけるかもしれないけど後で必ず埋め合わせるから許して」

「う、うん……」

一気に暗い気持ちになってヴェルーナに戻ってきた。ここの別荘には何回か来たことあったけどいい思い出はそんなにない。あの母と一緒にいればそれも無理からんことではある。私一人で従者用の部屋に軟禁される。ネイとセイラは別の部屋みたいだ。

「はぁ……」

今度こそ殺されてしまうかもしれない。部屋の前にはいつもの通り母の私兵がいて外に出られそうにない。部屋の中には見たことのないメイドがいるし。

「何か御用ですか」

「何でもないわ」

ちらっとそっちの方を見ると、すぐに反応してくる。怪しいことをしたらすぐに見つかりそうだ。だが、出来ることはやっておこう。

(イオナ、イオナ。聞こえる?)

(どうかされましたか?マスター)

ほんの少しのラグを挟んで声が聞こえる。

(本当に申し訳ないんだけど私の家に何人かで来てほしいの)

(かしこまりました)

(追って指示は出すから)

いつでも来てもらえるようにしたら少しは心の余裕が出るし、この機会にしっかり休んでおこう。

それから数日、私は食って寝てとニートみたいな生活をしていた。まぁ食事も適当なあまりものだったしいっぱい動いていたらお腹が空いて仕方なかっただろう。メイドに監視されながら寝るのは少し緊張したけれど。

そんなくだらないことを考えていると扉が開いて私兵が入ってくる。どうやら私をどこかに連れて行くらしい。半ば予想は付いていたが、母のいる部屋だった。両手を縛られて跪かされて母の前にいる私。普通に考えたら母娘の話すシチュエーションではあり得ない。

「……それで、何か御用でしょうか母様」

「お前に母様と呼ばれる覚えはなくてよ」

冷たく吐き捨てられる。

「なぜあの子と一緒にいたの」

「それは……」

「あの子は学院の試験を受けさせに行ったはずなのだけれど。お前もまさかいたの?」

「入学するので当然受けに行きました」

「まだそんな戯言を……」

「そうでなかったらドレスなんて作ってもらってないです」

バシッと音が響いて頭に衝撃が走る。

「いちいち癇に障る子ね……」

「……申し訳ございません」

また叩かれる。

「お前を入学させるわけにはいかないわ」

「ですが、既に試験を受けて通っていますので……」

「辞退しなさい」

「……」

「お前のような危険な化け物を高貴な学院に入れられるわけないでしょう」

また、化け物呼ばわりだ。本当に血がつながっているのだろうかこの母は。

「……嫌です」

「何ですって?」

見えはしないが鋭い視線が突き刺さっている気がする。

「既に家からは追い出されてますし……もう関係ありません」

「言い訳しない!表向きはまだラスティナの名前で通っているでしょうが!」

「ですが……」

何度も叩かれながらも反論をしようとする。

「あの二人がどうなってもいいの?」

しかし、その言葉一言で何も言えなくなってしまった。

「あの二人を無事に解放して欲しければ今すぐ入学をやめてレイリーンから離れなさい」

「あの二人に何を……!」

顔を上げて問おうとすると兵士に頭を思いっきり押さえつけられる。

「さあ、早く入学しないと言いなさい」

「……嫌です」

「なんて?あの二人のことどうでもいいのかしら」

「あの二人は関係ないでしょう……!」

「だったらお前が早く学院に入学するのを諦めなさい」

「……」

しばらく沈黙を続けていると彼女はため息をついて言った。

「もういいわ。また明日聞いてあげる」

その言葉を合図にまた腕を掴まれて引っ張られ、さっきの部屋に閉じ込められる。何日もこれが続くとどんどん疲れてくる。



「ねぇネイさん」

「どうしました?」

「ここにしばらく閉じ込められてるけど、ミア大丈夫かな」

「……大丈夫だと思いたいのですが」

「殺されたり……しないよね。実の親子なんだし」

「だと良いのですけれど……」

「嘘、だよね?」

あの方の気質だと殺されても不思議ではない気がする。

「そもそも私達も無事でいられるか……」

本当に困った。


そんなことを考えているとすっかり辺りは暗くなっていた。この部屋には監視はいないが扉の前には誰かがいる。

「ご飯は美味しいけど……なんか空気ピリピリしててやだなぁ」

セイラさんはため息をつきながらベッドに横になっている。やることもないしそろそろ寝るしかない。寝る準備を万端にして横になろうとしたその時、ベランダの方からコンコンと音が聞こえる。おそるおそる開けると、寝間着に着替えた主人の妹がいた。

「レ、レイ様!?」

「しーっ!バレちゃうでしょ」

「も、申し訳ございません……」

とりあえず彼女を部屋の中に入れてこっそりと話し出す。


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