ドレスのお披露目
しばらく髪を梳かしてもらったところでネイとオーバが朝食を運んできてくれた。手際よく並べられていくおいしそうな朝食の匂いが鼻腔をくすぐる。若干視界がブレているのは眠さからくる涙のせいだろう。
「本当に姉様は朝弱いですね」
「こんなに朝弱かったかしらねぇ……私」
「疲れがたまっているのでしょうか」
「一度しっかり休むのもありかもしれませんね」
「そうねぇ……」
そんなに眠れていないこともないはずだけれど……少し気を付けよう。
朝食を食べ終わって口を拭いてから一呼吸置いて立ち上がる。
「じゃあ、行きましょうか」
ちょうど薄い寝間着を着ていて着せ替えがしやすいし早めに済ませたい。そして私も二人が考えてくれたドレスを早く見てみたい。
「かしこまりました。ご案内します」
津軽のいる部屋に昨日ぶりにお邪魔すると布切れが床の所々に落ちている。
「あ、おはようございます。マスター」
「お疲れ様、津軽」
「しっかりとドレス、出来上がっておりますよ」
自動人形なので疲れていないのは分かっているのだが、ほんの少し疲れているようにも見える。不思議なものだ。彼女がカーテンのようなものを引くと、そこには煌びやかなドレスが鎮座していた。赤を基調としたドレスで、派手な装飾がついているわけではないがエレガントと言うべきなのだろうか大人っぽさが溢れている。背中はそこまで大きく空いているわけではないがある程度開いている。もちろん胸側も下品にならないくらいに開いている。薄めの布のおかげで見た目は露出が少ない。
「早速ご試着なされますか?」
「ええ。もちろん」
「ではこちらに。ネイ様もどうぞこちらへ」
津軽に連れられて更衣室に入る。
とりあえず寝間着を脱いでそこらへんにぽいっと放る。いつものようにドレス用の下着にまず着替える。当然彼女たちに作ってもらったものなので完璧にサイズがぴったりだ。
「ミア様、こちらにどうぞ」
「ん」
ネイと津軽が待ち構えているので、後は二人に任せて着させられるままだ。きゅっとお腹の部分が締め付けられる。程よい締め具合で快適だ。絹のような肌触りだ。
「きつくないですか?ミア様」
「大丈夫よ」
「マスター、こちらもお付けになってください」
そう言って彼女は頭と腕に飾りをつけてくれた。
「これで終了です。きついところはないですか?」
「うん。完璧。ちゃんと着られてる?似合ってる?」
一応鏡を見てしっかりと似合っているかは確認できているが他人から見てどう見えているかも気になる。
「完璧です、マスター」
「ちょっと胸元が開いている気もしますが十分お似合いになってますよ、ミア様」
ポンポンと軽く頭を撫でてくれる。
「よかった」
「ではレイ様に見せに行きましょうか」
「そうね」
「姉様!すごいお似合いです!」
さっきの部屋に戻った瞬間、レイが大きな声を上げる。そんなに大きい声を上げることなんて見たことないのに。私の周りをぐるぐる回って隅々まで確認している。
「こんなにしっかり似合うなんて流石です姉様!」
「わぁ……!すごい似合ってるねミア!お姫様みたい!」
「二人ともありがとう」
少しくるっと回ってみると裾がひらりと舞い上がってそれっぽく見える。
「と言うか改めてみるとミアって魅力的な体つきだよね。出てるところは出てるし引っ込んでるところは引っ込んでる」
「でしょう?セイラさん!」
褒めてくれつつ背中をすいーっとなぞるセイラ。ほんのちょっぴりぞわっとする。
「セイラだって綺麗じゃないの……」
「いやいやミアには負けるよ~」
「津軽、レイ、こんな素敵なドレスをありがとうね」
「いえいえ。マスターのお役に立てて良かったです」
「これでパーティーがなおさら楽しみになりました!」
「レイのドレスも早く見てみたいわね」
ドレスを脱いで、持って行く用に梱包しておく。何と津軽が普段着も作ってくれていたみたいでそれに着替えることにした。涼しげなワンピースだ。
「普段着まで……ありがとうね」
「お似合いでよかったです、マスター」
「ミア様、荷物の準備終わりましたよ」
「分かった。ありがとう」
用事は終わったしそろそろ帰ろうか。荷物も積み終わったし日もそこそこ高い。
「そろそろ戻ろうかしら?」
「結構居心地よかったんですけど、そろそろ戻らないといけなそうですね」
「今戻ったら日の高いうちに戻れそうです」
「既に準備は整っておりますのでいつでもおっしゃってください」
「分かったわ」