便利な航空艦
「それはそれは……その節はミア様をお助けいただいてありがとうございました」
「いえいえ。結果的に素敵な出会いができたので大丈夫ですよ。本当にかわいらしくて素敵なマスターです」
本当に物腰柔らかで優しい自動人形だ。むしろそこら辺の人間よりよっぽど人として付き合いたい。
「当艦にいらっしゃるときはネイ様もゆっくりしてくださいませ」
「ありがとうございます」
「あら……?」
しばらくしてネイ達の元に戻って来ると、何やら二人で談笑をしているみたいだ。あの二人いつの間にそんなに打ち解けたのかしら。
「本当にミア様って可愛らしいですよね」
「ええ本当に。妹想いでもあり部下想いでもある素敵な方です」
「私達、幸せ者ですね」
「ですね」
ほんのちょっとだけ私が恥ずかしくなるような話をしている。素直に褒められる言葉を向けられる耐性がなさすぎる。こっそりと二人の側へ行く。
「ミア様、おかえりなさい」
「え、ええ。ただいま」
「マスター、この後はどうされますか?」
いつの間にか持っていた日傘をさしてくれるイオナ。日差しが少しだけ強いので助かる。
「そうね……服を作り終わるまでまだかかるでしょうし休んでましょうか」
「かしこまりました。では、艦橋の隣の部屋で休憩いたしましょう。ご案内します」
「お願いね」
また、彼女を先頭にエレベーターで下に降りていく。ネイは未だに慣れなそうだ。
「イオナさん、ミア様のお茶を淹れたいのですが台所はどこですか?」
「ここを出て少し歩いたところにありますので……ご案内いたしますね」
「ありがとうございます」
「少しマスターをお一人にさせてしまいますが大丈夫ですか?」
「もちろんよ。そのくらい」
イオナと言いネイと言い私を慕ってくれているのは分かるがたまに子供みたいな扱いをしてくることもある気がする。そんなにちっちゃい子供じゃないのに。
「ほらほら、早く行ってらっしゃい」
二人が扉から出ていくのを見送ると、部屋の中は空調のわずかな音しか聞こえなくなった。
「はぁ……こんなに静かになったの久しぶりかも」
というかこんなに前の世界と似た場所に来たのが久しぶりで少し懐かしさを覚えている。意外とこっちの世界でここまで生きてきて、エアコンがなくても何とかなるらしいがやっぱりエアコンのある生活は素敵だ。科学技術万歳。学院を卒業したらもうこの艦に住んで一生エアコン付きの部屋にいようかしら。
そういえばあっちの世界の妹はまだ元気にしているだろうか。レイほどではないけど私のことを好いていてくれたあの子。荒れていないといいけれど。
しばらくぼーっと天井を眺めてそんなくだらないことを考えているとまた扉が開いて二人が戻って来る。
「ミア様、お待たせしました」
そう言って二人分のお茶を淹れてくれる。
「ありがとう」
私の前とイオナの前にお茶を置いてくれる。
「ネイ様、私は飲食を必要としませんが……」
「あ、普段の癖でつい……」
「まぁイオナも飲んでみればいいんじゃない?ネイのお茶美味しいわよ」
自動人形がお茶を飲むなんて聞いていないがキッチンがあるくらいだし食べることもできるのだろう。せっかくだしネイのお茶を飲んでみてほしい。
「マスターがそう言うならば……」
茶葉が違うのか普段飲んでいるお茶とは違う味だが、飲みやすい。流石ネイだ。
「美味しいわ、ネイ」
「ありがとうございます、ミア様」
「良いお茶です。ネイ様はお茶を淹れるのがお上手なんですね」
「ね。本当に最高だわ」
しばらくお茶を楽しみつつ涼しんでいると誰かが部屋に入ってきた。
「マスター、イオナ様。津軽です。二戸が洋服の製作に入ったのでレイ様をお連れしました」
「姉様お待たせしました~!」
スッと私の隣に椅子を動かしてくっついてくる。
「満足する出来にはなりそう?」
「ええ!ニノヘさんがお洋服を作るのがとってもお上手みたいでしっかり私の考えを形にしてもらえました!」
「それはよかった。着るのが楽しみね」
「明日にはできるそうです」
ネイが追加で淹れてくれたお茶を飲みながらワクワクしているのが伝わってくる。
「明日までかかると言うことはマスター達のお休みする場所を用意しないといけませんね。津軽」
「イオナ様。かしこまりました」
少ししたところでイオナに用意してもらった部屋に移った。ネイに軽食を作ってもらって窓の外を眺めたりレイと話しているだけで時間が過ぎていった。やっぱりレイと二人で話し合うのは楽しい。
この艦にはまだ大きいお風呂は付いてないみたいなので部屋付きのシャワーで汗を流した。妹たちはシャワーに慣れないみたいで使い方を教えながら洗ってあげた。身内とは言えシャワーしているところを見られるのは少し恥ずかしい。
結局、その日はイオナイドの中でゆっくりと休んだ。
「おはようございます、マスター」
「ん……おはよう。イオナ」
「ネイ様が朝ごはんを作っていらっしゃるので、代わりにマスターを起こしにまいりました」
「ありがと……」
「姉様、髪を梳かしますね」
「ん……」
妹は目覚めばっちりの様で私の髪を触ってくる。
「マスターのドレスは出来てるみたいですから朝食を召し上がったら試着してくださいませ」
「わかったわ……」