プチお茶会
「お疲れ!ミア!」
「しっかり勝ちましたわね」
見学席に戻ると先ほど勝利を収めた二人が出迎えてくれた。
「ええ。レイのおかげで楽に勝てたわ」
「いえ!姉様のおかげです!」
「二人とも強かったわよ!」
エイリーンが私達の後ろに回って肩をポンポンと叩いてくる。
「勝てたのはいいですけれど、これからどうしましょうか」
「確かに、試験終わっちゃいましたもんね」
最初の二組で私達の出番は終わってしまって、後はつまらない試合を見ているしかやることがない。
「あれを見続けるのも詰まんないわねぇ」
私達の次の組の子が試合をしているが私達と比べるとお世辞にもレベルが高いとは言えない。
「あくびが出ちゃうわね」
「そんなこと言うと悪いわよ」
結構エイリーンはストレートに言う子なので少し怖い。オブラートと言うものを知らないのだろうか。まぁこの世界にオブラートは存在しないのだけれど。
とは言え確かにつまらない。家の品格を疑われないようにそれなりの姿勢でみなければならないのがつらい。もうあの家に帰るつもりなんてないのに背筋が伸びるのは教育のたまものかはたまた難儀な性か。
そんなことを考えていると久しぶりに見た人がこちらに歩いてくる。
「お久しぶりです、ミアリーンさん」
「あ、レディシアさん」
「ロベリア様、ご用意できました」
「ありがとう、レディ」
「何を用意したの?」
「どうせ暇ですし、少しお茶会でも致しません?」
「あら!準備がいいわね!」
「姉様!」
「ええ、お邪魔しましょうか」
レディシアの先導で競技場を離れてとある一室に案内される。既にお茶菓子がたくさん置いてある。
「いつの間にこんなに」
さすがの貴族様だ。とてもじゃないが私では用意できない。
「私達もいいんですか?」
セイラやネイの分のお茶まで用意されている。
「もちろん。従者だからって友人の分のお茶を用意しないほど狭量ではないわ」
「ありがとうございます」
「ほら、早くお座りになって」
彼女が早く座るように手で示す。ふかふかのソファーに座ると、隣に妹が座ってくる。反対側にはセイラが座る。
レディシアがお茶を入れて、ロベリア様がお茶を一口飲んでお茶会が始まる。
「……おいしっ」
「ほんと、いいお茶だ」
「温かいです……姉様」
「本当に仲がいいのね、二人とも」
エイリーンがこちらを見てニヤッと笑っている。
「もちろん。私の唯一大好きな家族だもの」
「姉様……!」
隣の妹がどんな顔をしているか、なんとなくわかる。
「ネイやセイラも大好きだしロベリア様もエイリーンも大好きだけどね」
「あら、嬉しい」
「ミア~!」
セイラがぎゅっと反対側から抱きついてくる。ロベリア様は何も言わないがお茶を飲む振りをして照れ隠しをしているみたいだ。
「もう……そんなに引っ付いたらお菓子が食べられないじゃないの」
「食べさせてあげますよ!姉様!」
そう言って口元にクッキーのようなものを差し出してくる。サクッとした感触がしたと思ったらバターのような風味が口の中に広がる。
「そう言えば、二人とも最初のパーティーは行くの?」
この試験が終わったら学院新入生をメインとしたパーティーが開かれるらしい。
「もちろん行くわよ」
「行かない選択肢はありませんわね」
「やっぱりそうよね……」
新入生同士の交流をメインとしているので基本的には行くのだ。友達、交流関係を築くのが苦手だからあまり行きたくない。とはいえそんなことを言っていたらまた孤立してイジメられるかもしれない。
「行きたくないの?ミアは」
「少しだけ行きたくない」
「それはまたどうして?」
エイリーンだけでなくロベリア様も興味津々に聞いてくる。
「……パーティーが苦手なの」
「「えっ」」
二人ともあっけにとられたような顔をしている。
「嘘でしょう……?ラスティナの銀吹雪ともあろう貴女が……パーティー苦手なの?」
「姉様、確かに私と一緒じゃないとパーティー来てませんでした……」
「人と話すのが苦手なのよ……」
「えぇ?私とはすぐに打ち解けられたのに?」
「エイリーン、貴女は別よ。あの時は協力するように言われてもいたしね」
「ふーん」
「こうやって深窓の令嬢の評価は上がっていくのかしらね……」
「深窓の令嬢って……」
流石にそこまで評価の高い人間ではない。
「でも姉様、今度は大丈夫ですよ !」
「どうして?」
「私達が一緒ですから!」
「確かに」
「そうね」
レイだけでなく二人もうんうんと頷いている。
「私達が一緒ならパーティー何てちょちょいのちょいですよ姉様!」
「……心強いわね」
不安感がないではないが確かに一人でいるよりはずっとましだ。
「まぁ、私達はパーティー慣れしているし一緒にいればいい縁も結べると思いますわ」
既にいい縁は結べていると思うけれども、特に口にはしない。