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最後の試験に向けて

「お昼美味しかったですね、姉様!」

「ええ。そうね」

場所は移り、第二戦闘試験のために広めのグラウンド、野外スタジアムのような所に案内された。皆、戦闘用の服を着て、各々の得意武器を持っている。やはり多いのは剣、槍、弓だろうか。このうち何人かは魔法を使うのだろう。

早速名前を呼ばれた二組が競技場に降りて、互いに剣を構える。

「————。始め!」

合図を受けて互いに踏み出し剣を打ち合う。ここから見ている限りだとあまり強い人たちではないように見える。師匠や妹と練習をしていた時に比べるとあまり激しさがない。

「あの子たちには勝てそうな雰囲気がありますねぇ、姉様」

「あまり油断をすると良くないけれど確かにそうねぇ」

ただ、彼らの派手な服装と装飾のついた剣でゆっくりとした打ち合いを行っていると剣舞をみているようで少し満足感がある。

「やめ!」

しばらくして教官の声がグラウンドに響く。だいぶ疲れている彼らがこちらに戻って来る。そして、入れ替わりに生徒の名前が呼ばれて次の試験が行われる。似たような戦闘が続いて少しだけ飽きの来たところで名前が呼ばれる。

「ラスティナ・ミアリーン!、ラスティナ・レイリーン!、ヴァーミリオン・ロベリア!、ヴィスカリア・エイリーン!前へ!」

なんだか聞いたことのある名前が聞こえてきた。

「あら……?」

「ミア!」

「二人とも……」

「久しぶりね!」

「姉様、この方たちは……」

「あ、えーっとね……後で紹介するわ」

話してばっかいると教官が少し怖い顔をしているから一旦話を中断して位置につく。

「私が相手ね」

「エイリーン、お手柔らかにお願いよ」

「では、始め!」

その合図とほぼ同時に彼女は踏み込んで一気に迫ってくる。彼女の強さは魔獣討伐の時に十分知っているので、あまり驚きはなかった。

「ふっ……!」

繰り出される突きを剣で受けてそのまま上に弾き返す。一度距離を離したところでもう一度彼女は迫ってくる。間断なく攻撃を繰り返す作戦らしい。

「どうかしら……っ!」

かろうじて避けてはいくが、一撃一撃が重い。予想はしていたけれど秘剣を使わなくてもかなり強い。

「受けてばっかじゃ勝てないわよ……!ミア!」

「ええ!そうね……っ!」

彼女の突きを避けてから小銃、元の世界での拳銃みたいなものを懐から取り出して彼女に発砲する。しかし彼女も驚いた顔を見せつつ銃弾を弾いて距離をとる。

「ミアそんなもの持ってたのね……!」

「驚いた?エイリーン」

火薬式ではないので片手で撃っても全く反動がなく使いやすい。とは言え私もここで緋剣斬を使うわけにもいかないし特殊剣なしで勝負を付けたい。

「今度はこっちから……!」

私に使える数少ない魔法、身体補助を使って体を加速させる。

「受け取ってよね!」

全体重を乗せた一撃を彼女にたたきつける。

「やるわね……!」

何と彼女も正面から私の攻撃を受けている。体が少し沈んでいるがなんと耐えきったらしい。ゆっくりと弾かれて距離を開けられるがまだまだ攻撃する。

「終わらないわよ!」

今度は体重を乗せた一撃ではなく、剣先が見えなくなるほどの速度で斬撃を繰り返す。師匠に教わった剣技だが彼女もそれに追いついてくる。

「やるわねミア……!でも!」

その言葉と前後して、斬撃を避けられたところで彼女の剣が私の剣を下から思いっきり弾き上げる。

「あっ……!」

私の手から剣が離れて、少し遅れて金属音が響く。

「そこまで!」

教官の声で試験が終わったことが分かる。惜しいところだが負けてしまった。

「負けちゃった、わね」

「ミア、やっぱり強かったわね」

「エイリーンこそ」

剣を収めた彼女が私の方にきて手を握ってくる。

「あの時思ってたのよ、一回戦ってみたいなって。戦えて本当に良かったわ」

そう言って笑顔で抱き寄せてくる。そして数回背中をポンポンと叩かれる。

「姉様~!」

と思ったら、妹が吹き飛んだ私の剣を持ってこっちに寄って来る。

「勝ちました、姉様!」

「あ、お疲れ様。頑張ったわね、レイ」

「えへへ……。あとこれ、姉様の剣です!」

「ありがとう」

エイリーンのポンポンから解放された後、レイを褒めるために軽く頭を撫でる。


ここから先の一対一の戦闘は疲れたのもあってネイと一緒に休憩部屋で休んでいることにした。第三戦闘試験、最後の試験は開始時間が決まっているのでそこまではゆっくり休むことができる。

「姉様、最後の試験私と組んでくださいますよね」

「ええ。そのつもりだけ……」

「ミア!最後の試験私と組んでくれるわよね!」

「ね、ねぇミアリーン。私と最後の試験組んでくださらない?」

妹に答えようと思ったらさっきの二人も私と組もうと話しかけてくる。

「エイリーンにロベリア様……」

「あら、さっきの」

「皇女殿下も……」

「姉様、そう言えばこの方々は……?」

妹が私の袖を引っ張って聞いてくる。

「そう言えばあとで紹介するって言ったわね」

「こちらがエイリーン。ちょっとした任務で知り合った帝国の皇女様よ。それでこちらがロベリア様。つい最近護衛任務を受けて知り合ったの」

「なるほど。エイリーンさん、ロベリアさん。私はラスティナ・レイリーン、姉様の妹です」

綺麗な一礼をして自己紹介を済ませる妹。相変わらず所作が綺麗だ。

「よろしくね、レイリーン!」

「素敵な妹さんね」

ファーストコンタクトはどうやら成功らしい。三人とも仲良くしてくれると嬉しい。

「ってそうじゃないわよ!ミア!私と組んでよ!」

「でも……私、レイと組もうと思ってたのよ」

「むぅ……」

「では、エイリーンさんとロベリアさんで組んでみればどうでしょうか?」

レイがそんなことを提案する。二人とも顔を見合わせる。

「ふむ……アリね」

「よろしくお願いいたしますわ」

どうやら通じ合ったらしい。がっしりと手を握って闘志が満ちているようだ。彼女たちと当たるかはわからないが、当たったらとても楽しそうだ。


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