一休み
「ね、姉様……」
「ちょっと疲れたわね」
「あんなに法力量があったんですね……」
簡易椅子に座って休んでいる彼女が驚いた顔をしてこちらを見てくる。隣に腰かけて私も休む。
「私もちょっと驚いてるわ」
自分の法力の限界なんて調べたこともなかったし、イオナにとんでもない量としか聞かされていなかったからここまで大量だとは思わなかった。
「お疲れ様、ミア」
セイラが飲み物を渡してくれる。
「ありがとう。セイラ」
「レイさんもどうぞ」
「ありがと」
「ただ、あんまり私の色が変わらなかったのは……そう言うことなんでしょうね」
「大丈夫ですよ姉様!私が守りますから!」
「ありがとうね、レイ」
一般的な魔法の才能がなくても、何とかなりそうでよかった。
「今日はもうこの試験で終わりでしたよね、姉様」
「ええ。そのはずよ」
「じゃあ、着替えたら姉様のお部屋にお邪魔しますね」
「ええ」
しばらくすると全員の検査が終わらずとも帰っていいとアナウンスがあったので少しだけ休憩してから、更衣室へ向かった。
少しだけまだ混んでいたが二人に手伝ってもらって手早く着替えた。
更衣室を出て、廊下で待っているとしばらくして素敵な服に着替えたレイ達が出てくる。
「姉様。お待たせしました」
流れるように私の腕につかまってくる。ふわっといい匂いがしてくる。こういうところがとても可愛いのだ。私の妹は。
「ミア様、そろそろお帰りになりますか?」
「ええ。今日の予定は終わったし」
「では、参りましょうか」
「レイ。歩きだけど大丈夫?」
「もちろん大丈夫です!姉様と一緒に歩いて帰ります!」
少し歩きづらそうだが、ゆっくりと歩いていけば問題はなさそうだ。どうせなら他の人みたいに馬車で来ればよかった。
「姉様のいまのお住まい楽しみです」
「そんなに楽しいものじゃないわよ。仮の物だから狭いしね。それより色々貴女の話が聞きたいわ」
「私も姉様のお話聞きたいです」
「ネイさん、あの二人本当に仲いいんだね……」
「ええ。私の知る限り最高に仲のいい姉妹です」
「確かに……」
少し周りの視線を二人占めしつつ仮住まいに戻って来る。
「私のお家にようこそ、レイ、オーバ」
扉を開けて二人を案内する。
「わぁ……狭いですね」
「だから言ったでしょう」
どうやらメーシャたちはまだ帰っていないようだ。
「レイは私と寝るわよね。荷物はこの辺においておいて頂戴?」
「わかりました」
とりあえず荷物を置いてベッドの上に座る。当たり前のように隣には妹が座っている。
「昔と比べたら格段に小さいわね……」
「でも、同じベッドで寝るのは昔と一緒ですよ」
「それはそうね」
お風呂と晩御飯を済ませてベッドに座ると、ネイがお茶を入れてくれる。
「ありがとう、ネイ」
「レイ様はもうすぐでお風呂を済ませて来ると思います」
「じゃあ、待ってましょうか」
「はい」
しばらくすると寝間着に着替えたレイが部屋に戻ってくる。
「姉様~!」
ベットにダイブするように飛んできて私の腰にぎゅっと掴まってくる。
「どうしたの?レイ」
「姉様のそのお姿も久しぶりです……!」
「もう……そんな珍しいものでもないでしょうに」
「いいんです!」
しばらくぶりの私を抱きしめながら堪能しているようだ。
「そう言えば、今あの家はどうなっているの?」
「……あんまり良くはないです。姉様がいなくなってからお母様も姉様兄様も清々したように過ごしてらっしゃるし」
「……そう」
「姉様のお部屋も倉庫にされて私物を勝手に捨てられてしまいましたし」
「そうなの……残念ね」
持ち出すことのできなかった大事なものもあったから残念だ。
「でも、いくつかはオーバと協力して私の部屋に置いてあります」
「本当?良かったわ」
「ただ姉様にお会いしたしもうあの家に戻らずに姉様たちと一緒に暮らしたいです……」
私を見上げながらお願いするような視線を送ってくる。できるだけかなえてあげたい。