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心の準備

階段を上って少し廊下を歩く。そうすると[203]と書かれた扉が見えてくる。

「203……ここみたいね」

時間が経ってだいぶくしゃくしゃになっている父の手紙を見ながら鍵を取り出す。ガチャッと音を立てて鍵が開いて扉が開く。

「だいぶ埃っぽいわね……」

「ミア様、少々お掃除をいたしますのでお待ちを……」

「いいわ。私もやる」

「ミ、ミア様!?そのような汚れ仕事は私に……」

「ご令嬢でさえお掃除をするのよ。私だって」

実際のところプロのネイの邪魔になりかねないとも思ったが、やはりあの姿を見た以上私だってやりたいのだ。

「私もやる~!」

セイラもノリノリだ。

「……かしこまりました」

そう言いつつネイは奥の扉を開けに行って外の空気を入れる。

「ネイ様。こちら、掃除道具を持って参りました」

「ありがとうございます。イナさん」

既にイナが掃除道具を持ってきていた。どうやらこの屋敷には共用の物があるらしい。

「では、私が埃を落としますのでミア様とセイラさんは窓を拭いてください。イナさんはメーシャさんのお相手を。シズクさんは水をとってきていただけますか?」

「かしこまりました」

ネイが指示を各自に出して早速掃除を始める。


「結構……大変ね」

「そう?楽しくない?」

「楽しいって言うのもそりゃああるけれど、大変じゃないの?」

「ぜーんぜん!むしろこれくらいで良いのかな?ってくらい!実家じゃ結構やってたしね」

「そうなの?」

あまり彼女の実家の頃の話を聞いたことがなかったのでちょっと驚いた。

「あんまり実家の話聞いたことなかったわね。そういえば」

「あー。メーシャのことでいっぱいだったし、ミア達との生活が楽しかったしね」

「そうなの?」

私達との生活が楽しいと言ってもらえるなんて嬉しい。

「ええ。別に実家が楽しくなかったわけじゃないんだけどね」

「たまには、貴女のお家のお話も聞いてみたいわ」

「え!?うっそぉ~!私よりミアのお家の話聞きたいよ!妹さんのお話とか!」

「レイの事?」

「そうそう!学院で会えるんでしょ?どんな子なのかなぁって」

「会ったほうが分かるとは思うけれど…」

「でもちょっと分かったほうがワクワクするじゃない?」

そういうものだろうか。

「じゃあ、ちょっとだけ……そうね。綺麗な黒い髪をしていてね、私よりも美人でいい子よ」

「黒い髪なの?ミアと対になってて素敵ね」

「私よりもきれいな髪よ」

「そうなの?今でもこんなに綺麗な髪なのに?」

そう言って彼女は私の髪を撫でてくる。

「ちょっと……!」

「こーんな銀色でキラキラしてるんだよ?」

「お二人とも?お話に花を咲かせるのは結構ですけれど、お掃除もしてくださいね」

いつの間にか目の前にニコニコとしているがちょっと圧のある顔で私達の目の前に立っていた。確かにだいぶ手が止まっていた。

「ご、ごめんネイ」

「いえ」

そう言って彼女はそのまま部屋の掃除に戻っていった。

「今のネイさん、ちょっと怖かったね……」

サッと離れてまた窓を拭き始めたセイラがボソッと呟く。


皆で手分けして掃除を行っていると、あっという間に掃除は終わってしまった。と言うより部屋が狭いので皆でやると必然的に早く終わってしまうのだ。

「結構この部屋、狭いわね」

もちろん想定では私とネイだけだったのでベッドは二つしかない。とりあえず私とネイで一つのベッド、セイラとメーシャで使ってもらおう。シズクとイナの分は追加で用意するしかない。

「我々は、睡眠を必要とはしません。マスター」

「でも、二人にもベッドを用意したいの。仮のでも。私のわがままだけど」

「マスター……」

自動人形にベッドとは私も酔狂な人間かもしれない。

「とりあえず、学院寮に引っ越すまでの我慢だから。ごめんね」

「たまにはこのくらい狭いのもたまにはいいんじゃない?」

セイラはルンルンでベッドに座っている。

「メーシャもお姉ちゃんと寝られて嬉しいよね~」

「うん!」

「私達が学院の試験を受けているときは、メーシャちゃんはイナと街でも歩いて来たら?」

「かしこまりました」

「良かったねメーシャ~!」

「セイラはネイと一緒に来てもらうからね」

「もちろんです」

「はーい」

「そう言えばセイラの服は間に合ったのかしら」

「マスター、こちらにございますよ」

シズクが新品の服を用意してくれていた。そのままセイラに渡す。

「これ!?いいの?」

「ええ。イオナにお願いしたの」

「ありがとう!大切にするね」

ネイとほぼ同じデザインだが細部が少しだけ異なっている。喜んでくれて何よりだ。


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