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思わぬ出会い

次の日、起きると既にネイが扉横に控えていて今日何がしたいかを聞いてくる。

「うーん……街を歩いてみたいかも。レイは……まだ寝てるみたいだし今日は二人で、かな?」

レイはとなりですやすや寝息を立てている。幸せそうな顔だ。

「かしこまりました。オーバにはそのように伝えておきます」

ネイもつられて小声で部屋を出ていく。そのまま顔を洗いに行ってから朝ごはんを食べる。

「今日の朝もおいしいものをありがとう。ネイ」

「ありがとうございます。ミア様」

「街は歩いて回りますか?それとも乗り物に乗って回りますか?」

「あんまり遠くには行かないだろうし歩いて行きたい……かな」

「かしこまりました」

お茶を飲んで一息ついたところで、ネイに外行きのお洋服に着替えさせてもらって二人で外に行く。

「せっかくならレイにプレゼント買いたいかも……」

「それは大変素晴らしい考えだと思いますミア様!ええ!」

「そう……?えへへ……」

大きい通りを歩いていると様々な店が出ていて目移りしてしまう。今日はネイもメイド服を着ていないので本当に姉妹のように外からは見えてるのかもしれない。さっきから商店の人が声をかけてはおまけをくれる。

「嬢ちゃんも姉ちゃんもカワイイね~。これ、おまけつけとくよ!」

「ありがとう、ございます……!」

「良かったですね、ミア様」

少し買い物をしただけで荷物が増えてしまった。

しばらく歩いているとアクセサリーを売っている店があった。

「ネイ、この指輪とかレイにぴったりだと思わない?」

小さめの青い宝石のついた指輪を指さす。

「素敵だと思いますよ、ミア様」

「レイの目とおんなじ色の宝石……綺麗」

小さいケースに入れてもらってその指輪を購入する。ちょうどいいのでネイにも一つ贈り物をしてみようか。

「ねぇねぇ、ネイ。ちょっと後ろ向いてて少し離れてて」

「えっ?ミア様、それは……」

「いいからいいから」

ネイの背を少し押して店から離す。

「ねぇ、店主さん。この金色のネックレスってこのお金で買える……?」

貴族とはいえ子供だ。そんなにお金を持っているわけではないから足りないかもしれない。

「もしかしてあの姉ちゃんに贈りたいのかい?」

店主のおじさんは何かを察したように訪ねてくる。その通りなのでこくりと頷く。

「なるほどな。じゃあちょっとだけおまけをしてあげような」

金色のネックレスの先に何かを付けてくれている。少し経ったところでお金を渡してそのネックレスを受け取る。

「おぉ……!」

金色のネックレスに紫色の宝石がついている。さっきは付いていなかったがどうやらおじさんが付けてくれたようだ。

「姉ちゃんを大事にするんだぞ、お嬢ちゃん」

「……うんっ!ありがとう!」

早速ネイに渡そうと走って後ろを向いているネイに後ろから抱き着く。

「ミア様!?どうされたのですか?」

「ちょっとしゃがんでしゃがんで!」

ネイは普段見ないような様子のミアに困惑しつつもしゃがんであげる。

普段は大きくて、めったに見ることのない綺麗な首筋をなぞりながらさっき買ったネックレスを付ける。

「ん……ミア様……?これは……」

「いつも……ありがとうの気持ち……!」

「ありがとうございます……!一生大切にいたしますね!」

振り返って本当にうれしそうな顔をしながら抱き締めてくれる。本当に喜んでくれてよかった。


しばらく、上機嫌なネイと一緒にまた大通りを歩いていると十字路に差し掛かる。

「きゃっ!?」

ネイのスカートにぼふっと何かがぶつかる音がする。

「わぁっ!」

どこかで聞いたような驚いた声が聞こえる。

「だ、大丈夫?」

「大丈夫だ……こちらこそすまぬ!」

昨日の自信満々そうな少女がどうやらネイにぶつかってきたらしい。昨日とは違ってあまり派手すぎない外行きのドレスを着ている。

「おや……昨日の」

「ちょうどいい!妾を助けてくれ!」

「えぇ!?何かあったのですか?」

私とネイの手を引っ張って建物の物陰に移動する。

「実は……妾はここの名物の甘味を食べたいのだが……メイドが許さなくてな」

「そう言えばおひとりでしたね」

この町では一つ名物のお菓子があって、マカロンのような物がアイスみたいな氷菓子と一緒に出されるものらしい。最近庶民の間ではやっているようだ。

「どうして許されないのです……?」

「その……毎食の量が多くて、菓子を食べると食べきれないのだ……」

「あらまぁ……」

「でも一度は食べてみたいのだ!海を見ながら!」

「じゃあ私と半分こしない?」

ふとそんなことを提案してみる。この可愛い少女の喜ぶ顔が見てみたくなった。一度助けてもらったことだし。

「……良いのか?」

「私は大丈夫」

「それでは、私が買って参りますね」

海岸沿いのテラス付きの店でネイがお菓子を持ってくるのを待つ。

「なぁ、お主」

「え?私?」

「そう、お主だ。お主の名を聞きたいのだ。妾はエイリーンだ」

エイリーン……どこかで聞いたことがないこともない気がする。

「私はラスティナ・ミアリーンと申します」

「ふむ……ミアリーンよ。お主の姉は何というのだ?」

「あの人は私の姉じゃなくて……」

「お待たせいたしました」

意外と早くネイが戻ってきた。意外と量が多い。これは確かに重そうだ。

早速エイリーンが氷をすくって食べている。

「おいしいですか?」

「うむ!甘くておいしいぞ!感謝する!」

本当にうれしそうに食べている。私もマカロンのような物を一口食べてみた。

「ん……これ自体はそんなに甘くないのね」

食感がサクサクとしていて甘すぎないので、掛かっている蜜とうまく調和している。二人で食べていくと思ったより早く食べきれてしまった。

「おいしかった……またここに来たらこれが食べたい」

「確かに……」

「お二人とも満足されたようでよかったです」

「そうだ!お主の名前は何というのだ?」

「私ですか?私はネイと申します」

「ネイとミアリーンか。うむ!覚えたぞ!いつか我が国に来たらこのエイリーンが必ずごちそうをふるまうからな!」

「ふふっ。楽しみにしていますね」

店を出ると時間は夕方に近づいていた。

「エイリーンさん。送りましょうか?」

「いいのか?」

「ええ。お一人でお帰りさせるのも少し不安なので」

「ありがとう!頼む!」

そう言うとネイと私の間に入って両手をつないでルンルンで歩き始めた。歩いているうちに段々と高級な宿屋がある地区に入ってきた。

「ここらへんでよいぞ!すぐ近くだからもう大丈夫だ!」

「そうですか?じゃあ……ここらへんでお別れですね」

「うむ!世話になったな。ネイ、ミアリーン!」

「またどこかでお会いしたらよろしくお願いします」

「もちろんだ!帝国に来たらエイリーンの知り合いだと言えば私に会える!」

「あ、もしかして……帝国って……」

「ではな!」

そう言って、確かめる前にエイリーンは20レム程離れた宿屋に向けて走って行った。

「どうかされましたか?ミア様」

「ううん。何でもないわ」

「ではそろそろ私たちも帰りますか?」

こくりと頷いてそう遠くない帰り路を歩いて帰った。段々と涼しくなってきた潮風が心地いい。

「着いたらすぐに晩御飯のご用意をしますね」

「じゃあ……その間にレイに贈り物をしてこようかな」

「喜んで頂けると思います」

別荘の門をキィと開けると、少しして家の扉が勢いよく開く。

「ねーさまおかえりなさい!」

レイが走って私の方に抱き着いてくる。ネイは先に家の中に入って晩御飯の用意をしに行った。

「ただいま、レイ」

「どうだった?海!」

「綺麗だったわよ。次はレイも一緒に行きましょう?」

「うん!」

「それとね……」

一旦抱きついているレイを離して、指輪の入った小箱を取り出す。

「ちょっと目をつむって?レイ」

「ん!わかった!」

目をつむったレイの指をとって指輪を通す。

「目開けてもいい?」

「うん!いいよ」

「わぁ……!」

自分の指にはまった指輪を見てぱぁっと顔を輝かせる。

「ねーさま……!この指輪!いいの!?」

「もちろん。ネイの為に選んできたんだからね」

「嬉しい……!ありがと!」

こんなに喜んでもらえると私も選んだ甲斐があったというものだ。ご飯を食べているときもお風呂に入るときも指輪が気になるようでちらちらと視線を送っていた。

寝る時もずっと嬉しそうにしていてくれた。

「気に入ってくれてよかった」

横になったレイの顔を見ながら手を絡める。

「えへへ。いつか私もねーさまに贈り物するからね!」

ぎゅっと手を握ったままもっと顔を近づけてくる。

「楽しみにしてる」

「うんっ!」

しばらくしているとすぅすぅと寝息が聞こえてくる。興奮していたのもつかの間、疲れてしまったのだろう。

昔、あっちの世界の妹ともこんな風に一緒に寝たことがあったっけ。あの時は貝殻で作った何かをあげた気がする。ちょっとだけ懐かしくてあの頃が恋しく感じる。多分もう二度と会えないだろうけどもう一度、会いたい。


あっという間に航空艦に乗って帰る時間になってしまった。

「また海に行きたいね。ねーさま!」

「そうね。いろんなところに行きたいわ」

また楽しくもない日常に戻ってしまうのは悲しいがお父様はたまに私たちを出かけさせてくれるしそれまでの辛抱だ。

「ミア様、レイ様、こちらの艦ですよ」

少し離れたところでネイが手招きをしている。

「は~い!」

レイ、ネイ、オーバが居れば私には十分だ。母の棘なんて怖くない。


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