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顔合わせ

「少しだけ心配が拭えないわね」

「ですが、お相手はあのヴァーミリオン家のご令嬢ですよ?家名を汚すようなことはなさらないのでは……?」

「相手が貴族ならね」

「……もしかしたらミア様を覚えてらっしゃるかもしれませんし……」

確かに社交界では少し悪目立ちした私たち姉妹だがあのご令嬢に目を付けられているとも思えない。

「そんなことはないでしょ……きっと」

ともかく三日後のために鎧や服を綺麗にしておかねばなるまい。

「ミア様の装束は綺麗にしておきますね」

「ネイとセイラのも綺麗にしなきゃだめよ。第一印象は大事なんだから」

「かしこまりました」


そして、件の三日後。見事に晴れている。

「こういう日に晴れが多いのはいいことね。雨だと気分が下がるし……」

「ミア様雨は昔から苦手ですものね」

「そうなの?雨って気分が落ち着くから好きだな、私」

「家庭事情があまりよろしくなくてね」

セイラは私と違って雨は好きらしい。身近に一人くらい、雨が好きな人間がいた方が案外雰囲気が暗くならずに済むだろうか。

「あっ……変なこと思い出させちゃった……?」

「いいのよ。昔のことだし」

「ミア様、まだセイラさんにお伝えしていないのですか……?」

こっそりとネイが耳打ちで聞いてくる。

「まだ何て言うか悩んでいるのよ……」

「何々?内緒話?」

「別に大した話じゃないわよ」


途中でクランによって、いつもと違う正装っぽい服を着ている受付嬢と一緒に別邸へ向かう。

「おはようございます。皆様」

「おはよう。道案内はお任せしていいのかしら」

「はい!ここからさほど離れてはいませんので少ししたら到着しますよ」

自信満々な彼女に先導を任せて後ろをついていく。

「やっぱり、カーンの中心部に行くとだいぶ大きい屋敷が増えてくるわね」

「そう言えば皇女様の使っているところもすごかったよねぇ」

そんなことを話している間にあっという間に大きい屋敷の前に着く。正門の守衛らしき人に声をかけてご令嬢に連絡を取る。

「入って大丈夫ですよ。屋敷の入り口でメイドが待っていますから、そちらの方に声をかけてください」


そして屋敷の中に入れてもらうが、正門から入り口までが思ったより遠い。

「庭広すぎ……」

「持て余しそうよね」

「クランの建物幾つ入るんだろ……」

おもいおもいの感想を呟いて歩いていると入り口の前に確かに人が立っている。

「ようこそ、ロベリア様のお屋敷へ。クランの方々ですね?ご案内します」

「よろしくお願いします」

長身のメイドが扉を開けて、屋敷の中に案内してくれる。廊下も長いし天井も高い。まさにやんごとなき身分のお屋敷といった感じだ。実家と同じ雰囲気を感じる。

「こちらのお部屋でお待ちくださいませ。ロベリア様をお呼びしてまいりますので」

そう言って応接室のような場所に通してくれる。


「ねぇ……なんかこのお屋敷人が少なくないかしら」

「そう?お屋敷広いからじゃないの?」

「でもこの広さのお屋敷を持ってるならもう少し従者の行き来があってもいいと思うのよね」

「確かに。以前お世話になっていたお屋敷でもここまで人の気配が少ないことはありませんでしたね。ミア様」

「そうね……」

「失礼いたします。ロベリア様をお連れ致しました」

コンコンと扉がノックされて、さっきのメイドがまず入ってくる。そして、その後ろから真っ赤なドレスに身を包んだご令嬢が。ちょっとツリ目気味でとげとげとした雰囲気のある美人という感じだ。やはり以前に何かのパーティーに行った時に遠目で見たことがある気がする。

「レディ。いつものをお願いできるかしら?」

そのまま対面に座ってメイドに向かって何やら伝える。そのままレディと言われたメイドは部屋を出る。

「かしこまりました」


「さて。ずいぶんかわいらしい冒険者だけど大丈夫なの?」

いきなり目の前のご令嬢は攻撃的な言葉を発してくる。

「見た目は可愛らしい、美しい冒険者ですが実力は保証いたします。こちらの通神書をご覧ください」

受付嬢は私たちが達成した任務やクランに入ってからの略歴をまとめた通神書を彼女に手渡す。

「ふぅん。カーン1のクランが推薦するくらいには優秀そうね」

メイドが持って来たお茶を飲みながら目を通していく。

「なんだか貴女、どこかで見たことがある気がするわね……気のせいかしら?」

私の方に鋭い視線を向けてくる。

「……そう、ラスティナの姉妹みたいな雰囲気……」

「恐らく気のせいだと思いますよ。私は所詮冒険者。そんなに身分の高い人たちとは関わりがありませんから……」

「最近姉の方が消えた。とは聞いたけれど。そう言えば貴女がクランに入った記録があるのは最近なのね」

「たまたまでしょう。私はその時期に実家を出てカーンで一人立ちしようと思っただけですから」

「……そう。そう言うことにしておいてあげるわ」

ずっと鋭い目つきで見てくる彼女、どうやら疑いは晴れていないようだが一旦は放置してくれるようだ。

「まぁ、良いわ。依頼は私の保養中の護衛と身の回りの世話。これだけよ」

「失礼ながら、ロベリア様程の方ならわざわざ新しく部外者を雇わずとも大丈夫なのでは……」

「ええ。私も本当ならそうしたいけれどできないの。屋敷で得体のしれない病気が流行っていてね。レディ、そこのレディシア以外の従者はみんな倒れてしまったの」

ぺこりとレディシアと言われたメイドが礼をしてくる。

「代わりに本家から来た従者は私のことを嫌っているようだし、私もあの人たちは苦手だから何も知らない貴女達を雇おうと思ったのよ。レディ一人だけじゃあの広い別荘は大変だろうし」

「なるほど……」

「レディはこの娘達はどう?合格?」

ロベリアは後ろに控えた彼女に意見を求める。

「少なくとも所作に問題はないと思われます」

どうやらここに案内されてからずっと見られていたらしい。

「貴女が言うなら大丈夫そうね。貴女達三人、合格よ。明日屋敷に来なさい。馬車を用意して待っているわ」

彼女がいきなり立ち上がって私たちに指をさす。流石ご令嬢、人に命令を出す姿が様になっている。


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