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報告と昇格

「うーん……ごめん。そのお願いは聞けそうにないわ」

「……そっかぁ。いやぁ行けると思ったんだけどなぁ~」

彼女は少しだけ悲しそうに、けれど気丈に振舞っている。

「でも……必ず会うことができると思うの。だから、また会った時にお友達として関わってほしい」

「本当?言ったわね?絶対にまた会えるのね?」

「え、ええ。約束するわ」

少し圧の掛かった感じで聞いてくる。ちょっとだけこわい。

「じゃあ、来年を楽しみにしてるわ」

ちょうど、話し終えたところで山のふもとについてしまう。ちょうどエーレンベルとルインベルの中間くらいの場所だろうか。

「帰ってきたって感じする~!」

「まだ街についたわけじゃないんだから気を抜かないの。セイラ」

「いいじゃんいいじゃ~ん」

「ここで、一旦お別れかしらね」

「そうね」

ちょっと陽が落ちてきている。

「また、必ず会いましょうね」

「ええ。必ず」

彼女が差し伸べてくれた手を握り返して握手をする。ほんのり汗ばんでいるけど不快感はない。


「じゃーねー!」

セイラが元気に手を振って彼女たちを見送る。皇女もこちらを向いて手を振り返してくれる。

「じゃあ、私たちも帰りましょうか」

「ルインベルに着く頃にはもう夜になっていそうですね。ミア様」

「温かいご飯食べたいね」

「夜市か何か開いていたら寄っていきましょうか」

「良いね~!」

さっきまで人がいっぱいいたので急に3人になるとちょっと物寂しさを感じるが、いつもに帰って来たような感じもする。

「なんだか久しぶりに大人数で任務をした感じがするわ」

「確かに。あのわがまま領主の所に行ったっきりかな?」

「あー……そう言えばその時以来かもね」


街に着いて、宿に戻って来ると周りはすっかり真っ暗になっていた。流石に時間が遅すぎて酒場くらいしかやっていないようだ。

「美味しいご飯……」

セイラは分かりやすくがっかりしている。

「ネイ、どうしようか……」

「そうですね……軽いものなら作れますが……」

「うーん……。イオナ呼ぶ……?」

「イオナ様……こんな夜中にも呼べるのでしょうか……?」

「多分呼べば来てくれるとは思うけど……」

「呼ぼっ!」

セイラはどうしてもおいしいご飯が食べたいみたいだ。かく言う私も同じくおいしいものが食べたい。

「……わかったわ」

心の中で念じる。

(イオナ、こんな遅い時間だけど迎えに来てほしいの。できる?)

(かしこまりました。お迎えに上がります)

しばらく待っていると、窓をコンコンと叩く音がする。

窓を開けると、三人の自動人形が入ってくる。

「マスター。お迎えに上がりました」

丁寧に礼をしてくれる。

「ありがとう。船はどこにあるの?」

「郊外までつけております。あとは我々がお連れ致します」

「ん。わかった。お任せするわ」

「はい。では失礼して……」

そう言うと三人はそれぞれ一人ずつ抱っこして、そのまま窓から外に飛び出す。

「えぇぇっ!?」

セイラは派手に驚いている。そう言えば彼女は自動人形に抱っこされて移動したことはないのだったか。これから回数は増えるだろうしいずれ慣れてくれるだろう。


イオナイドの艦内に着くと、イオナが出迎えに来てくれた。

「ご無事で何よりです。ますたー」

「ありがとう。早速で悪いのだけれど……その、ごはんの用意をお願いしてもいい?」

「ええ。もちろんです」

すぐに彼女たちが出来立ての料理を用意してくれた。疲れた体に沁みる美味しさだ。セイラは久しぶりに妹に会えたのも相まってとても機嫌がよさそうだ。

「メーシャ~!いい子にしてた?」

「うん!」

「いい子のメーシャにはカーンに戻ったら何か買ってあげよ~!」

「いいの!?」

「もちろんだよ~!」


「マスター。このままカーンに戻ってよろしいでしょうか」

「ん。それでお願い」

「かしこまりました」

少し休んでいる間にカーンにつくだろう。本当に彼女たちに感謝してもしきれない。


カーンに到着してセイラ達を先に宿に送ってから、クランに報告に行く。早速奥の部屋に通されて話をする。

「えっ!?もう終わったんですか!?」

「ええ。帝国側の方とうまく連携を取ることができたので」

通神書と討伐した獣のかけらをいくつか机の上に置く。

「早いですね……。こちらで全部ですか?」

「はい」

最後に腕章も返しておく。

「では帝国側のクランからの報告と照合して、報酬をお渡ししますので数日お待ちください」

「わかりました」

「それと、今回の任務が成功と認められた場合にはミアリーンさん達のクラスをアルジェント級に昇格します」

「ありがとう」

あまり意識はしていなかったが、アルジェント級というとクランの規模にもよるがおおよそ10~30人くらいだろうか。結構上の方に来てしまっているようだ。

「この短期間でここまで昇格なされる方は珍しいですね。これからもどうぞよろしくお願いします」

「ええ。こちらこそ」

どうぞよろしくと言っても入学までの期間だからもういくつ任務を受けられるかわからないが。そろそろセイラにも私の身分を明かさなければならない時期だ。


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