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皇女のお出迎え

「だいぶ日が落ちてきたわね」

「ん?ほんとだ。あとちょっとしか探せないわ」

もうだいぶ山を登ってきた気がする。暗くなってから降りるのはめんどくさそうだ。合流してからずっと同じ鬱蒼とした山道を歩いている。

「そう言えば、ミアリーン達は今夜は泊まるところ決まっているの?久しぶりにお話したいし一緒に来ない?うちに」

「決まっているけれど……。どうする?」

振り向いてネイとセイラに聞いてみる。

「ミア様のなさりたいように」

「いいんじゃない?面白そう!」

セイラは思ったより乗り気だ。

「じゃあ、お言葉に甘えてもいい?」

「もちろん!良いわよね」

「今夜はご予定がございませんのでご随意に」

「良し!」

皇女殿下は気分がよさそうだ。ルンルンで先頭を歩いていく。と、思ったところで突然彼女が立ち止まってしゃがむ。

「何あれ……」

しゃがんで隣に行ってみると、茂みの先が開けていて高い崖がそびえ立っている。根元に大きい洞穴が開いていて最近何かが近くを通ったかのような地面の荒れ方をしている。

「何か大きいものが動いた様子……ね」

「もしかしてあそこに……?」

「狙いはあれなのかも……」

二人で話し合っていると、後ろから小声で皇女のお付きが声をかけてくる。

「皇女殿下……!そろそろ戻らねば帰れなくなってしまいます」

「……そうね。一旦帰りましょう。明日は一番にここまで来て見てみましょ」

頷いてそろりそろりとその場を離れる。思ったよりも大掛かりになりそうだ。


ほとんど陽が沈んだころ、帝国の国境を越えてエーレンベルに到着した。国境の帝国側の町で二つの国の文化がまじりあっている。実際、街並みはあまり変わらない。

「ここが帝国かぁ~」

セイラは目をキラキラさせながら辺りを見回している。

「どう?私の国は」

「綺麗でとてもいいところだと思う」

「そうでしょうそうでしょう!」

とても自慢げだ。

しばらく街の大通りを歩いていくと、大きい砦のような物が見えてくる。

「あれがこの町の……?」

「そう!私の城よ!と言ってもただ最近ちょっといるだけだけれど」

「大きいのね……」

「王国との商売で儲けているらしいからね」

上手く税を集めているようだ。

正門の脇の扉から城内に入っていく。大きいだけあって多くの人がいるようだ。

「こっちこっち!ついてきて!」

皇女殿下の先導で城の中の複雑な通路を歩いていく。

「ここは言うならば離宮ね。今は私が自由に使っているの」

「流石皇女ね……自分専用の場所があるなんて……」

「大したことないって~。どうせ一時的なものだもん」

「それでもすごいわよ」

「私なんてこんなすっごい所で暮らしたことないもん」

セイラも同調してくる。実際一時的とはいえこんな広大な建物をぽんと貸してもらえるのは一般人では体験できまい。

「でももうすぐ王国に行くしなぁ……。あっちに行ったらそうそうこんなことできないもんなぁ」

「あら?王国に来るの?」

「そうよ。じゃ、この部屋使ってね」

中庭を少し歩いてからちょっと豪華な扉を開いて中に案内してくれる。後ろをついていって部屋の中を見ると、三人で使ってもスペースが余りそうな大きい部屋だ。

「広い……」

「ほんと、すごい居心地よさそうだし……」

「ふふっ。喜んでもらえてよかった。明日のためにもしっかり英気を養ってよ?」

「ええ。特にセイラはゆっくり休むのよ」

「え?私?」

「そりゃそうでしょ。あの槍で初撃を叩きこんでから戦闘開始だもの。一撃で仕留めてくれたらすっごい楽だわ」

「な、なるほど……責任重大だね」

「そんなに気負わなくていいわよ。外したって私達がいるもの」

「なんかそれ聞いて一気に楽になったかも」

そんなに信頼してもらえたとは。

「ごはんの用意できたら呼ばせるわね」

「ん。わかった」

それを聞いていったん皇女殿下は部屋を出ていった。お付きの人たちも彼女についていった。

「まさかこんなところに居られるなんて……」

腕につけた腕章を外してベッドにどかっと横になる。

「ミア様、はしたないですよ……」

「まぁまぁいいじゃんいいじゃん。身内しかいないんだから」

「私も身内カウントなのは嬉しい~!」

上からドカッと覆いかぶさるようにセイラが乗ってくる。いい匂いがぼふっと周りに漂ってくる。

「ちょっと苦しいわよ……」

「あっごめんごめん」

そのまま横に寝転ぶ。昔妹も同じようなことをしてきた気がする。もうしばらく会っていないから会いたい気持ちが最近高まっている。あと少しの我慢だというのに。

寝転ぶとどっと疲れが体に出てくる。このまま寝てしまいたくもなるがごはんまでご馳走してくれるということなので断るわけにもいかない。お腹も減っているし。

「ネイ。ちょっと疲れたからお呼びがかかるまで休むわね」

「かしこまりました」

そのまま目を閉じて意識が闇に落ちていき、次に目を覚ました時にはごはんの時だった。しっかりとネイが起こしてくれてその後はリラックスして夜を過ごすことができた。

料理の方は普段食べているものとは違ったがとてもおいしいものだった。宿の料理もおいしかったがやはり高い身分の人間の食べる料理は段違いだ。

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