大人な贈り物
「おはよ、ノア。エトラ」
「おはよう」
「お、おはようございます……」
一階にはすでにノアとエトラが待っていた。二人とも私服がかわいい。
「みんな揃ったわね。少し広めの馬車にしたからこの人数でもゆったり乗れるはずよ」
「ありがとう」
「いいのよ」
そう言ってエイリーンが先導して馬車の方へ向かう。あまり派手ではないがシックな高級感というものを備えている。いつもロベリアかエイリーンに馬車を頼んでいる気がして少し申し訳ない。と思いながら歩いていたら彼女が手で入ってと促してくれる。
「さ、入って入って」
「お邪魔します」
馬車の中にはふかふかの敷物が引いてある。ソファーまで高級だ。座るだけで疲れがふわっと溶けていきそうな感じ。
「こ、こんなのに座っていいんですか……」
エトラが早くもあわあわしている。
「いいのよ。と言うか早く座らないと出発できなくなっちゃうわ」
そう言ってエトラの肩を軽く押して座らせるエイリーン。ぽふっと沈み込む彼女の体。目を真ん丸にして柔らかさに驚いていてかわいい。
「ふふっ。じゃあみんな座ったし出発するわね」
ゆっくりと動き出す馬車。
しばらく馬車が動いてからロベリアが口を開いた。
「それで、今日はどう動いていくつもりですの?」
「とりあえず最初に皆にできた水着の試着をしてもらおうと思ってるわ」
今日のおでかけのリードをしてくれるのはエイリーン。任せて頂戴!と言われたのでほとんど全部任せてしまった。
「お買い物はそのあと、って感じね」
「じゃあ一旦その試着のできる場所へ向かってるんですのね」
「そうね!」
彼女が選んでくれた水着を見るのが楽しみ。久しく水着を着ることもなかったし、海水浴なんて小さいころ以来だ。
「と、もう着いちゃったわね」
そんなことを考えていると目的地に着いたらしい。
「足元、気を付けてね」
完璧なエスコートで降りると、目の前には二階建ての石造りの建物。この都市ではまあよくあるタイプの建物だ。
「ここは……」
「私たちが持っている建物よ!使わないみたいだから貸してもらったわ!」
「へぇ……すごいわね」
「さぁ入って!」
ぎぃっと扉を開くとメイドが数名出迎えてくれる。
「いらっしゃいませ。お嬢方」
「わぁ……!」
エトラやノアは普段あんまりメイドにかかわることがないから少し驚いているみたい。
「準備できてる?」
「もちろんでございます。お嬢様」
「じゃあ早速案内してちょうだい」
「かしこまりました」
そう言ってメイドを先頭に二階の広めな応接室のようなところへ通される。あまり荷物もないから小さいバッグを置いて少し落ち着く。
「お嬢様、もうフィッティングを行っても……?」
「ええ。皆も大丈夫よね」
「もちろん」
「かしこまりました。各部屋に使用人を配置しておりますので案内させます」
すごい。一人一人にメイドがついて案内して着る手伝いをしてくれるみたい。豪快な人の使い方だ。
「じゃあみんなまたあとでね」
「ミアリーン様。本日お手伝いをさせていただきますシエラです」
「よろしくお願いするわ」
私と同じ銀髪のメイドが案内してくれるみたい。
「ではこちらへ」
そう言ってシエラの後をついていく。すぐ隣の部屋へ案内された。何気ない部屋だが結構広い。ちゃんと窓にカーテンをかけて外の視線を遮るようにしてくれたその配慮が嬉しい。
「ではミアリーン様、早速お着換えに写ってもよろしいでしょうか」
「もちろんよ。お願いね」
どんな水着なんだろう。すごい気になる。
「お嬢様からは二つの水着を預かっておりますが……両方着られますか?」
「そうね……。せっかく用意してくれたなら着てみたいわ」
「では、最初に『きっとミアには大人すぎたかしら』とお嬢様の言伝があった方から着ていただきます」
「わかったわ」
ちょっとエイリーンの言い残したことが気になるけどとりあえず来ているものを脱いで一糸まとわぬ姿になる。
「おぉ……」
脱いでいる最中彼女からちょっと声が漏れていた。少し恥ずかしいかも。
「そ、それでどんな水着なのかしら」
改めて、裸の状態でじっと見つめられると流石にちょっと恥ずかしくて手で体を隠して尋ねてみる。
「も、申し訳ありません少し見惚れていて……。こちらの水着になります」
そう言って渡されたのは確かに大人な水着だった。
「えっ……えぇ!?」
いわゆる黒のセクシーなレオタードタイプという奴だろうか。体の中心がお腹くらいまでがっつり開いていて脇も結構開いている。そして結構ハイレグっぽい角度がついている。
「えっと……おやめになりますか?」
「うっ……」
せっかく用意してくれたんだし一度は着てあげたい。が……これで外に出るのは恥ずかしいかもしれない。
「とりあえず……一旦着てみるわ」
ちょっと悩んだ末に一度着て彼女に見てもらうことにした。