すやっとチルタイム
「ミア様、明日はお休みですから頑張ってくださいね」
まだ起き切っていない頭にネイが語りかけてくれる。眠くてあくびが止まらない。
「ほらミア~?制服ちゃんと着て~?」
「んー……」
「今日はいつにもまして姉様眠そうですね」
「昨日の疲労があまり抜けなかったようで……」
結局昨日はお風呂を上がった後半分寝ながらご飯を食べてレイとセイラにお布団まで連れて行ってもらって寝かしつけされた気がする。
「眠い……」
なんとか制服を着せてもらって眠そうな顔以外はしっかりとキマった。
「もう少ししたら出る時間ですけど……なんかスッキリするようなもの……」
「ちょっとスッキリするお茶を淹れてきますね」
そう言ってネイとオーバがお茶を淹れに行く。
「講義中寝そうだね、ミア」
「今日は本当に寝ちゃうかも……ふぁ」
昔、高校に通ってた頃はあんまり授業中に寝ることはなかったと思う。真面目な生徒であったはずだし、夜更かしもあんまりしなかった。ついでに言うなら激しい運動もそんなにしなかったし。
「真面目に受けなきゃだめだよ~?せっかく講義受けるんだから」
「わかってるわよ」
「姉様いつも真面目に受けてますよね」
セイラに頭を撫でられながら淹れてもらったお茶をすする。ちょっと渋めで目が覚めそうな感じ。
「姉様、お目目覚めました?」
「ちょっとはね」
「ホント~?まぶたが重そうだよ?」
「ミア様、レイ様そろそろ」
三人でちょっと遊んでいたらいつの間にかそんな時間に。
「あ、じゃあ行ってくるわね」
「行ってらっしゃいませ」
「いってらっしゃ~い!」
結局お昼前の講義は眠すぎる中何とか起きて耐えることができた。
「だめ……眠い」
お昼になったのでまとまった休憩が取れる。いつもはお昼を食べに行くところだけど今日に限っては眠気が勝ちそう。
「姉様。だいぶ舟をこぎそうになってましたけどどうしますか?お昼にしますか?お昼寝しますか?」
「ちょっとお昼寝したい気分かも。ごめんね、お昼一緒に食べれなくて」
「いいんですよ。姉様。どちらで寝られるんですか?」
「そうね……あったかそうだし中庭とかいいかも。静かだし」
「では後で捜しに行きますね」
そう言ってレイはお昼を食べに行った。さて、私は寝る場所を探すことにしよう。
「中庭……程よく日なたで人のいないところ。ここでいいかしら」
ちょうど空いているベンチを見つけて座る。ほんのり温かい日光が眠気を増幅させる。あっという間に意識が闇に落ちていく。
「……こんなとこで寝るなんて」
「……貴族ともあろうものが」
「……みっともないですわね」
「……どうしたの?喧嘩?寝てる子にイタズラは感心しないなぁ~」
「……こんな場所で寝る愚か者に教育してるだけですわ」
「……はぁ」
何か優しい暖かさと耳障りの良い鼻歌を聞いていた気がする。すごい懐かしい感じがした。
「んぅ……?」
目を覚ますと視界が横を向いていた。あれ?私座って寝ていたはずなのに。なんだか頭の下も柔らかいものが敷いてある。
「あ。起きた?」
「えっ……?」
そこにいたのはなんとメア先輩だった。どうしてこんなところに。
「おはよっ。いやぁ~気持ちよさそうに寝てる後輩を見つけちゃってね」
「だからって膝枕をしなくても……」
「えぇ~?私の膝枕ダメだった?」
そう言うわけではない。何なら程よくあったかくて柔らかった。いい匂いもしたし……。
「というか寝顔ふつうにみられちゃいましたね……ちょっと恥ずかしい」
「お外で寝てたのにそんなの気にしてたの?」
「よだれ出して寝てたら恥ずかしいじゃないですか……」
「それはそれでかわいいと思うけどなぁ」
という話をしながら体を起こそうとしても膝枕をされている体勢から動けない。メア先輩思ったより力強い。
「もうちょっと寝てな~?」
「で、でも」
「いいからいいから。疲れてるんでしょ?」
「でも講義も始まるし……」
「大丈夫大丈夫。後で起こしてあげるから」
結局その言葉を信じてもう一度眠りの世界に入ってしまった。次に目を覚ました時には怒ったアル先輩の声が目覚ましアラームになった。
「何してるの?メア」
「あっ」
「……んぅ?先輩……?」
ぼんやりと視界に写るアル先輩。怒っているように見える。
「後輩を膝枕してさぼった時間はどうかしら」
「い、いやぁつい……かわいくて……」
「姉様……!」
先輩の後ろからレイも顔をのぞかせる。心配そうにこちらを見ていた。
「この馬鹿ぁ!後輩をさぼりに巻き込むんじゃないの!」
結局一緒にお説教を受けてしまった。怒ったアル先輩、だいぶ怖かった。