ひと段落
次に目を覚ました時には最初の転送場所に戻っていた。青空がとてもきれいに見える。
「ぁ……?」
さっき相手の槍を避けたと思ったら、その槍が分裂して私の全身を貫いた気がする。意識がすぐ飛んでしまったのでそれ以外の事を覚えていない。ただとても綺麗だったしとても痛かった。
「わ、私……つながってる……わよね?」
腕とか足とかを触ってみるがしっかり繋がっている。当り前ではあるけど、思わず確認しないとと思ってしまうくらい強い攻撃だった。
「はぁ……」
どうやら帰ってきているのは私だけみたいだけど、あのレベルの人が三人。エイリーンとレイは大丈夫だろうか。
「あんなに強い人たちがいるなんて思いもしなかったわね……」
ほとんど攻撃を与えられなかった。圧倒的実力差を感じた。
「こんなんじゃ顔向けできないわね」
しばらくするとレイ、少し時間を空けてエイリーンが帰ってくる。
「姉様……!大丈夫でしたか?」
「ええ。私は大丈夫だったわ。一撃で仕留められたからね」
「まさかあんな攻撃を食らうとは思いませんでしたね……姉様。手助けに行けなくて申し訳ありませんでした……」
「ちょっと……!謝らないで、レイ。あの時は一対一なんだからそれぞれ相手に集中しないといけなかったでしょ」
思ったよりレイが申し訳なさそうにしていて少し焦る。ただ私の実力不足が原因なのに。
「ですが……」
「まぁ、欲を言えば分断されないように……二人で一緒に戦い続けるようにすることは大事だったかもしれないわね」
「そうね」
「あら……お疲れ様、エイリーン」
「お疲れ様、二人とも」
ちょっと疲れをにじませた彼女。初めてそんな姿を見たかもしれない。
「一番最初にやられちゃってごめんなさいね」
「いえ。あれは明確に私たちが弱かったわ。あそこまで実力差があると思わなかった……」
初めて彼女が自分の弱さについて話しているところを見た。自分たちの実力が足りなかったのを素直に認められるのは彼女が強い理由なのかも。
「目標ができた……って考えればいいのかしらね」
「そうねぇ……超えるべき相手が生まれた、って言うのはいいことかもしれないわね」
「目標は大事ですもんね、姉様」
「やぁ。お疲れ様」
プチ反省会中、突然後ろから肩をぽんと叩かれたので振り向くと、さっきの三人組がそこに立っていた。
「さっきの試合、いい試合だったよ」
「お、お疲れ様です……」
「三人とも、今年入ったばっかよね?それであそこまでできるなんて将来有望だと思うよ」
「特に皇女様、貴女は特に強かったわ」
「お褒めに預かり光栄です。貴女にはまだ追いつけてないですけど」
「ふふっ……。いつか私を超えてくれる日を楽しみにしてるわね」
エイリーンと戦ってた人はなにやらバチバチに向かい合っている。なんというか戦いが好きなもの同士という感じか。
「ねぇ……ちょっと。体とか痛くない?大丈夫?」
「あ、えっと……大丈夫です」
彼女たちの話に耳を傾けていたら後ろから肩を叩かれた。そちらを向くとさっき戦ったあの人がちょっと心配そうにしている。
「だったらいいんだけど……ちょっとやりすぎたかなって」
「そ、そんなことないですよ。全然痛みは残ってないです」
「そう……?やっぱりあんまり貴方弱くはないのね」
褒めているんだか褒めてないんだかわからないことを言われる。
「そ、そうですか」
「もっと鍛錬を重ねればどんどん伸びる気がする。来年以降が楽しみかも」
頭を撫でながらそう言ってくる彼女。
「が、頑張ります……!」
「私を負かしてくれる日を楽しみにしてるよん」
微笑みながらそう言ってそっと離れる。
「じゃあ、私たちはこれで。また会おうね」
次の試合に備えて彼女たちは控室に戻っていった。あっという間の時間だったが彼女たちと一つつながりができた気がする。
「あ、名前聞くの忘れたわね」
「どこかに書いてあるんじゃないの?」
そうは言いつつも周りにそれを調べるものがない。まぁあとで調べればいいか。
「一旦ロベリア達のところに戻る?」
「そうね。私達、競技はもう残ってないし……軽く休んでから帰りましょっか」
「改めて、お疲れさまでした。姉様、エイリーンさん」
「お疲れ様ね。二人とも」
さっと私の魔銃のケースを持たれた上に、反論をする前に両腕を二人に組まれてしまう。
「……二人とも、ありがと」
ちょっと歩きづらい。
少し短いです。申し訳ありません。