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頼もしい旧友

セイラの矢で一匹一匹比較的小さな獣を仕留めつつ、ネイと私で近づいてくる獣を切り落としていく。

「キリのない……!」

一匹、また一匹と首を落としたり口から尻まで横薙ぎにしていく。

五匹くらい殺したところで、目の前にグルルルと唸っている先ほどよりも倍以上に大きい虎のような獣が現れる。

「嘘でしょ……?何でこんなのが……」

その獣は吠えながら片腕を上げて鋭い爪ごと振り降ろしてくる。こんなものまともに受けたら腕が折れてしまう。

「危なっ……!」

そのまま地面を突き刺した爪が引き抜かれる前に甲の部分に剣の一閃を叩きつける。が、思ったより硬く少し血を出させたに過ぎなかった。

「硬いわね……」

よもや一刀で切り捨てられないような獣がいるとは思わなかった。

「ミア様、あの爪を受けては流石に危険です」

「そうね。柔らかい部分を斬られるように回り込まないと……」

言葉を交わしながらも襲ってきた小さな獣を切り捨てていく。

「ミア!ほとんど雑魚は片付いたから、私の弓であの獣も一撃で仕留められるよ」

「ほんと?」

「ほんとほんと!ただちょっと無防備になるから気を引いて欲しいな」

「分かった。ネイ、やろう」

「かしこまりました」

ネイが敵の右側に、私が敵の左側から迫っていく。

獣はどちらに対応するかを一瞬迷ったがネイの方へ向いて爪を振り上げた。

獣の爪と彼女の長刀が一瞬ふれ合ったところで長刀は爪に沿うように流れていって腕に当たる部分を斬りつける。

「甘い……ですよ!」

赤い液体が飛び出してきて獣も少しひるむが、もう片方の腕で再度ネイを襲おうと振り上げる。私も足を斬って動きを制限しようと近づいていく。


「この槍をもって、獣は倒れ伏す!」

セイラの声が聞こえたかと思うと獣の体が跳ねた。いや、上半身が浮いてそのままひっくり返ったと言った方が正しいだろうか。ネイに襲い掛かろうとしていた獣は頭蓋を槍で撃ち抜かれ一瞬で絶命していた。

「すごい……」

「ミア~!ネイ~!大丈夫?怪我無い?」

走ってこちらに向かってきた彼女は血の跳ねた部分を見ながら訪ねてくる。

「大丈夫よ。それよりも一撃で仕留めるなんてすごいわね」

「硬い頭蓋を貫通していますね……」

「すごいでしょ!私のとっておきの一つなの!」

とっても誇らしげでかわいい。


獣を倒して血をぬぐっていると茂みから誰かが出てくる。

「この獣を仕留めたのは貴女達?」

白を基調とした緋色の散りばめられた服を着ている同じ年くらいの少女を先頭に10人くらいがこちらに歩いてくる。先頭の少女は若干の微笑みをたたえていて後ろの数人と違って敵意はなさそうだ。

「ええ。貴女は?」

近づいてきたところで我々と同じ腕章をつけていることに気づく。ただし、彼らの腕章には帝国の紋章がついている。

「貴様らこの方が誰だと……!」

「いいのよ。彼らは帝国の者ではないのだし」

「しかし……!」

後ろから強い言葉を発しようとしている男を彼女は片手で制す。

「私は、ヴィスカリア・エイリーン。帝国皇女よ」

「皇女様!?」

とてつもなく驚いているセイラの反応を見て皇女は満足そうだ。しかし、エイリーンという名前をどこかで聞いた覚えがあるがどこで聞いたか思い出せない。文献以外の身近な場所で聞いたことがあったはずなのだが。

「私はミアリーン。こっちはネイ。王国の冒険者です」

「わ、私、セイラって言います!」

「ん……?ミアリーン、ネイ……?どこかで聞いた名ね……」

こちらの自己紹介を聞いて皇女は何やら首をかしげている。

「思い出した!ライバークで会ったラスティナ家の者ね!会いたかったわ!」

突然思い出したようで抱きついて背中を撫でてくる。ライバーク、という言葉で私も思い出した。

「もしかして……昔海辺で会った帝国のお姫様……?」

「そう!そうよ!」

懐かしいものだ。もう十年くらいになるだろうか。

「あの時はいろいろと世話になったわね。いつの間に冒険者になったの?」

「皇女殿下……!」

「あぁ。まだ討伐の途中だったわね」

このまま思い出話で時間が過ぎていきそうなところを部下が止めに入る。

「そうだ!ミアリーンも手伝ってほしいわ」

「何を討伐しているの?あの獣達なら……」

「違うの。どうやらこのあたりに獣騒ぎの首魁がいるようだから、それを殺してしまえば他の獣も元の住処に戻って行くはずなのよ」

「そうなの……?もちろん協力するのに異存はないわ」

「ありがとう!あの獣を三人で殺せるくらいの戦力なら大歓迎だわ!」

「それで、その首魁のいる場所は分かっているの?」

「森の深くで大きい獣を見たって村人がいたからとりあえずその大きい獣を探している最中ね」

「大きいって言うと……」

「さっき戦ってた獣よりも多分大きいと思うわ」

トントン拍子で話が進んでいって皇女の部隊と行動を共にすることになった。


「ねぇねぇネイ」

「どうされました?」

皇女と話しながら進むミアリーンの後ろの方でこっそりセイラがネイに話しかける。

「ミアってラスティナの人なの?あの貴族の?」

「たまたま同じ苗字なのではないでしょうか?」

皇女が言っていたことを聞き逃していなかったようだ。

「ふーん……そっかぁ」

少し腑に落ちないようだがとりあえずは納得してくれたようだ。


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