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皇女の煌臨(Side:エイリーン)

体がとても軽い。煌臨をするとこんなに体が軽くなるなんて。

「ふふっ」

思わず笑みがこぼれてくる。ミアとレイが私の活躍を見ていてくれる。ここでかっこいいところを見せて二人とも私にメロメロだ。

「こんなんじゃわたしに届かないわね」

私に飛んできた矢も銃弾もすべてを弾いてさらに足を進める。正直相手がさっきより弱いので助かった。二年生の遠距離主体のチームにこの草原で当たるのは本当に運がよかった。

「ふふふっ」

だんだんと相手の陣地が近づいてくる。そろそろこの目で直接陣地が見えてくるころだろうか。

「そろそろ罠に気を付けないと危ないわね」

さっき少し踏んでしまったがいくつか罠が設置されているみたい。ここから射撃の密度が高くなってくるので罠にかかってなんていられない。

「そろそろ、ね」

陣地まであと数十メルまで近づいてきたところで足を緩めて歩くくらいの速さにする。走りに法力を使わなくてよくなった分今度は攻撃に使って行こう。

「そんなんじゃ届かないわよ」

剣で矢を弾き、頭を狙った物も掴んで捨てる。

「今度からはこっちも行くわよ!」

いつもの癖で次やることを宣言してしまったけどまあいい。法力を込めて左手に剣を作り出して矢の飛んできたところへ投げる。一回きりのものではあるからつくりは甘くてもいい。「ふっ……!」

踊るように右手の剣で矢と魔法を弾きながら左手に作った剣を放り投げていく。狙いは甘いけど着弾したところで爆ぜてしまうので構わない。

「あぁ……!楽しい……!こんなに撃たれることなんてないわね!」

魔法を斬るたびにかけらがきらきらと舞って私を彩ってくれる。これを見たら二人とも私に惚れてしまうかもしれないわね。そう思いながら作った剣を投げるとあらぬ方向に一部飛んで行ってしまう。ちょっと優雅さが欠けてしまったかも。

「あら……段々大味になってきたわね」

矢を放ってくる数が減って魔法による攻撃が増えてきた。もちろん私は止まらない。段々と地面がボロボロになって相手の隠れる場所もなくなって来た。そろそろ仕留めに行くしかないか。三人の大体の位置は分かった。

「まずは……貴方ね」

狙った彼はこの中で一番強いと思われる。たが、正確に顔や急所を狙ってくるのでとても防御がしやすい。優秀なだけにちょっと惜しい。将来的には私達のいい相手になるのかもしれない。

「くそっ……!」

10メルまで近づいたところで彼は魔法を捨てて斬りかかってくる。

「あら……」

正直近接勝負に持ち込んでくるのは好感度が高い。剣戟を交わすごとに激しい音が響く。この人、剣にも魔法を付与できるみたい。護身用の剣で私の剣と打ち合うなんてやるわね。

「でも……っ!」

相手を押し切ってまた10メルほど投げつけてから左手に剣を持ち換えて、今度は右手で、作り出した剣を投げつける。投げつけた勢いのまま前のめりに前に進む。着弾して土煙が立って視界がふさがれる。

「ふっ……!」

気配を感じ取って思いっきり剣を突きたてる。何かを貫いた感覚。

「もらった!」

しかし、土煙を割いて右手側から現れる彼。なるほど、幻惑を食らったわね。私の胸元に迫る刃。しかし、その刃は空中を舞っていった。

「強かったわ」

驚く彼の顔を見ながら二つの剣で×を描くように体を斬る。光に包まれるのを見届けて一息。

「強く作るのもできるのよ……ふふっ。さて……次、ね」

ひゅっと耳元を通り抜けていく矢。そこね。ぐっと足に力を込めて一気に飛び掛かって一撃を見舞う。

「嘘でしょ……⁉」

驚いた顔の先輩。弓ごと真っ二つに斬りつけた。まさか相手もこの距離をひとっ飛び

するとは思ってなかったのだろう。

「最後は貴女ね」

「こ、凍れ……っ!」

「遅いわ」

相手の魔法の発動がが終わる前に迫ってがら空きの胸に刃を突き立てる。勝負あり、ね。

「試合終了!」

最後の一人が光に包まれて消えたところで試合終了が告げられる。ミアたちがいる方向に振り返ると二人ともこっちを見ている。

今回の試合で三人を一人で殲滅できたことだしミアとレイも私に惚れるに違いない。ロベリアもノアもエトラも私の事を大好きになったわね間違いない。

「ふふっ」

そうだ、せっかくだし彼女たちに皇女たる私の笑顔をあげちゃおう。きっと喜ぶ。



「え、エイリーン。すごいわね」

「一人で三人を倒しちゃうなんて……」

試合から戻ったところでエイリーンに駆けよって声をかける。

「ふふっ。そうでしょ」

「強くて可憐だったわ。ほんとに素敵だった」

ぎゅっと手を握って彼女の目を見て伝える。巫女さんのように、華麗に攻撃をいなしながら舞っているようだった。思わず口を開けて見入ってしまうくらいの神々しさ、と言うべきものだったかもしれない。

「と、当然よね!」

珍しく頬をほんのり染めながらぷいっと斜めを向いてしまうエイリーン。私の気持ち、伝わっただろうか。

「姉様ったらまた人の事を誑かして……」

ぼそっと妹が何か言っていたけど聞き取れない。ほんのり私をジト目で見つめている気もする。

「三人とも、一旦出るように」

咳払いを一つした審判の先生に注意をされてしまう。

「あ、申し訳ありません」

「行きましょう姉様、エイリーンさん」

「そ、そうね」

一旦休憩のためのスペースに戻る。いつの間にか三人で手をつなぎながら仲良く帰っていた。私を真ん中にして。

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