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皇女の煌臨

「さて、次の試合は……改めて言うけど二人に休んでもらえるようにするわね」

控室でしばらく休んでいたが、次の試合も近づいてきたしエイリーンが私たちの前に立ってそう言ってくれる。

「休むって言っても……本当に何もしなくてもいいの?」

彼女がそう言うんだから圧倒的に自信はあるんだろうけど、ここまで来て何もしなくていいって言われるとどうやって勝つのかは気になる。

「ええ。二人とも私の秘策を見てくれればいいわ」

レイと顔を見合わせる。どうやら次の試合はかなり手持ち無沙汰になりそうだ。

「じゃあゆっくりと観戦させてもらうわね」

「楽しみです!」

私も彼女くらい自信をもって戦えるようになりたい。

「ふぅ……」

水分補給を挟みつつ次の試合に向けて心を落ち着ける。個人的にさっきの試合の反省も挟みつつ。

「あんまり思い詰めちゃだめよ?ミア」

「えっ?ええ」

「さっきの油断、ずっと引きずってたりしないわよね」

そう言って私の顔を覗き込んでくる。もしかして全部ばれてるのかもしれない。彼女はエスパーか。

「そんなことはない、わよ」

「そう?ならいいけど……私の戦ってる姿ちゃんと見てくれなきゃ嫌よ?」

「もちろん集中するわ」

ちょっとかわいい様子を見せてくるエイリーン。そんな姿を見せられるとしっかり見ないと、と思ってしまう。

「じゃあ、そろそろ行きましょうか」

しっかりと休憩を挟んだことだし、ちょうどよく試合開始の時間も近づいてきていた。

「しっかりと休ませてもらうわね」

「ええ。期待してていいわよ」


ふわっと草の匂いが鼻腔をくすぐる。どうやら今回は草原らしい。

「ずいぶん見通しがいいわね」

「思ったよりいい場所に当たったわね」

「そうなの?」

魔銃を使って遠くまで見通したら相手の陣地まで見えてしまいそうだ。

「ええ、今回の私にとっては……ねっ!」

その言葉を言い終わる前にキィンと甲高い音を立てて私に当たりそうだった矢を弾くエイリーン。

「噓っ……」

「煌臨したらこのくらい余裕よ」

「と言うか結構近い距離にいるのね……敵」

少し姿勢を低くしてエイリーンに言う。さっきの攻撃は全く気付くことができなかった。

「そんなに姿勢低くしてたら私の姿見えないわよ?」

「高くしてたら狙われちゃうじゃない」

「私が何とかするし、大丈夫よ」

自信満々にそう言ってくれるエイリーン。というかさっきより雰囲気が違う。オーラが出ているというか、法力が溢れだしているような。

「なんかエイリーンさんいつもより強そうな雰囲気が出てますね……」

「そうよね……」

「煌臨がうまく使えてよかったわ」

ふふんっと少し自信ありげに胸を張る彼女。煌臨、というモードらしい。とても強そうな響き。

「じゃあ、私行ってくるわね」

「うん。行ってらっしゃい、エイリーン」

「行ってらっしゃいませ」

まるで少し近くのお店に出かける、くらいのテンションで見送りをした。と思ったら次の瞬間には思いっきり相手の陣地へダッシュしていた。

「早っ」

あっという間に数百レムは走っているように見える。どんどん小さくなるエイリーンの背中を見ていると、時折さっきも聞いた甲高い音も聞こえる。少し頭を上げてもこちらは狙われないみたいなのでちょっと姿勢を高くする。

「敵の陣地の場所が分かりやすいからエイリーンさん一直線に突っ込んでいってますね、姉様」

「あんなことできるのってエイリーンだけな気はするわ」

だんだんと遠くなって見えにくくなってきたので、二人で魔銃のスコープを覗き込むとエイリーンの後ろ姿が少しはっきり見えるようになる。相手の陣地に近づいていったところでだんだんと速度が遅くなっているみたい。あえて緩めているのか何かあったのか。

「どうしたのかしら……」

「エイリーンさん、笑ってませんか?」

確かに彼女、笑っているように見える。

「いたるところから撃たれてる気がするんだけど……全部弾いてるわね」

笑顔で迫ってくるエイリーン怖いかもしれない。しかも仮想空間のようなところから剣のようなものを出して投げつけている。

「そんなことできるの……?」

「さ、流石ですね……」

相手の攻撃は一つも通っていないのにエイリーンの投擲は相手を割と正確にとらえている。致命打こそ当ててはいないが傷はついているみたい。

「エイリーン、防御に一切気を使ってないのがすごいわね。全部弾いてるわ」

今回の敵はさっきと同じように遠距離主体なようで三方向どころかもっとたくさんの方向から射撃をされているにもかかわらず彼女の歩みは変わらない。そして、エイリーンと敵の姿がおそらく数十レムまで近づいたであろうところで彼女は一気にとびかかる。

「生き生きしてるわね」

あのエイリーンに近接勝負をもちこまれたらとてもじゃないけど勝てる気がしない。数回の剣戟ののち相手の剣が彼方に弾かれて彼もそのまま光になって消えていった。

「ね、姉様……あのエイリーンさん、私達で勝てるでしょうか……」

「わ、私達なら大丈夫よ……きっと!」

妹を励ますようにそうは言ってみたものの私も勝てるかといわれるとはっきりと断言はできない。うーん……と少し考え出る間に彼女は二人目を処理していた。

「最後の一人……残ってエイリーンと戦うのは嫌ね」

当然のように最後の一人は抵抗むなしく彼女に一刀で光に変えられていた。と、同時に相手を全員戦闘不能にしたので試合が終了した。最後こっちを向いてにこっと笑ってくれるファンサービスまでくれた。

「これは完璧な皇女様ね……すごいわ」


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