姉妹の奮闘
そうして無差別建物攻撃が終わった。十数発は引き金を引いたからだいぶ疲れた。
「姉様、お疲れ様です」
「ありがと、レイ」
とりあえずまた対人用の弾に変えつつ、この試合で使うこともないだろうし魔銃を仕舞う。
「お手伝いしますね」
二人で片付けるとあっという間だった。
「二人とも、お疲れ様!」
片付け終わったと思ったらいつの間にかエイリーンが背後に立っていた。まさかジャンプしたんじゃないでしょうね……。
「どうだった?何かわかった?」
「ええ!ばっちりよ」
ふふんと胸を張る。
「ミアの撃ったものはほとんど当たって派手に爆発してたんだけど……なんと一か所だけ防がれてたわ」
「なるほど……」
「というわけでこれからそこにご挨拶に行くわよ!」
もしかしたら罠ということもあるかもしれないが、このチームは攻撃をする方が性に合っている気もするしこの作戦に乗ろう。
「こちらの陣地は大丈夫ですか?」
「一応私の方で誰か近づいたらわかるようにはしておいたから安心していいわ」
流石。いつの間にか準備が終わっている。
「それじゃあ私は陣地にこれ、置いてくるわね」
「ええ。流石に使うことはないと思うしいいわよ」
そして、三人とも猛スピードで相手がいると思われる建物の方へ走っていく。もちろん魔法を使って自己強化を挟んで走っている。近くまでついたところで解除をしてゆっくりと近づいていくことにするが、思ったよりここから先障害物が少ない。
「……これ、ばれないように近づけるのかしらね」
「だいぶ開けていますね」
「いっそのこと建物まで一気に走るっていうのもありかもしれないわね」
「う、嘘でしょ?」
一発でばれるしどんな罠があるかわからないのにそれはちょっと怖い。
「ちょっと本気よ?相手の虚をつけるかもしれないしね」
そう言われるとそういう見方もあるかもしれない。結局彼女の指示に従うつもりだから、彼女ができると思ったならそれの通りにやるつもり。
「ここから見ても特に変わったところはないわね……」
人の気配もここからだと感じられない。
「……よし。決めたわ。一気に建物に突入することにしましょ」
「わかったわ」
「三人で一気に行ってそこからは改めて、って感じね。準備はいい?」
「ええ」
「大丈夫です」
目の前の百メートル前後の開けた土地。何があるかはわからないけど一気にここを抜ける。
「行くわよ!」
さっきのように自信に強化をかけて一気に走り抜ける。一歩を踏み出すたびに建物が近づいてくる。まだ建物からの反応はない。あと数歩で壁に貼り付ける。そう思った瞬間、雷のようなものが落ちてきた。
「きゃあっ!?」
かわいい声と共にエイリーンがバランスを崩して壁に激突する。
「ちょ、ちょっと大丈夫!?」
「やったわね……!」
がばっと起き上がるエイリーン。元気に怒ってるし大丈夫そうだ。
エイリーンが崩した壁から建物の中に突入する。
「さて、入ったはいいけどどうしようかしら」
待ち伏せされているだろうし適当に動くのは危険そう。
「いいわ、三人で動くわよ。数で押すわ」
「わかったわ。レイ、前は二人で張りましょ」
「はいっ、姉様!」
今回は私たちの力を見せるのだ。
階段を上るとところどころに罠がある。とはいえレイがすぐに気づいて解除していくのであまりやることがない。
「この階も人気はないわね……」
「あとは最上階だけね」
そして最上階への階段を上り終わる。一気に魔法と人の気配が満ちていく。
「いる、わね」
「どうしますか?姉様」
「そうね……」
扉を開けるときっと攻撃を受けてしまうだろう。いっそのことなら壁を抜いて突入するというのもありかもしれない。
「ねぇ、レイ……」
ごにょごにょとやりたいことを簡単に伝える。
「いいですね、姉様!息を合わせて攻撃……!素敵です!」
何か予想外に盛り上がっている妹だが、彼女なら一番息を合わせやすい。ということで一番濃く気配がある部屋の前に立つ。
「いい?レイ」
小声で目くばせしつつ合図を送るとレイは笑顔で頷いて返してくれる。
「ふっ……!」
大きく振りかぶって壁に一緒に剣を叩きつける。轟音をたてながら壁が崩れ去って二人で手をつないで入れるくらいの大きい穴が開く。そして、埃と煙が収まらないうちに二人で部屋の中に突入する。
「陣地……だけど、誰もいない?」
妹と背中合わせであたりを見渡すがいまだに何も起こらない。
「魔法の気配がします。油断しないでくださいね姉様」
レイがそう言った瞬間、部屋の壁沿いから氷、炎、雷といった魔法がいきなり飛んでくる。
「嘘っ……!」
剣で弾けるものは弾きつつレイと一緒に避ける。しかし、ほぼ360度から飛んでくるものだから一部が体に直撃する。妹にだけは当たらないように、この体が壊れようと守りに行かなきゃ。
「ぐうっ……!痛っ」
しかし、剣で弾くのは止められない。止めたら私達負けちゃう。こんなところでは負けられない。
五分くらいだっただろうか。全力の攻撃を叩きつけたからきっとあの後輩たちは退場しているだろう。
「やったんじゃない?あれに耐えらる一年生なんていないでしょ」
「あんまり油断しないでよ」
埃と煙が舞う陣地の中にゆっくりと歩きながら入っていく。
「あら、すごいわね。この二人退場してないわよ」
さっきの私たちの全力の攻撃を受けて一応耐えきっているのか。とはいえ力を使い果たしたようで背中合わせでしゃがみこんでいる。制服も穴だらけで肩で息をしている。
「やるじゃない、貴女たち」