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初めての味

「ふっ……!」

剣を振り下ろすと、相手の剣に触れる寸前にまた氷柱が飛んでくる。

「あぶなっ……」

「隙あり!」

一瞬止まったところをしっかりと狙って彼女は剣を振り上げてくる。何とか体を反らせて避けつつその反動を使いながら横から剣を叩きつける。

「きゃああっ!?」

振り上げた動作で空いていた体に私の剣が当たって少し吹き飛ぶ。と同時に私の腕と体に鈍い痛み。さらに飛んでくる氷柱を剣で防ぎながら距離を取らされてしまう。

「痛いわね……流石エトラ……」

思ったよりしっかり連携を取られている。もっと楽に勝てるかと思っていたけど考え直さないといけないかも。

横目でレイの様子を伺うとまだ槍の子と決着はついていなさそうだった。と、よそ見をしている隙も逃さずエトラは氷柱を放ってくる。

「避けるよりたたき落とした方確実ね……」

このまま避けていても距離を取られ続けるだけ。エイリーンが動きやすいようにするためにも私に相手の注意を引きつけたい。

「たぁっ……!」

距離を詰めて一回、二回と斬りつける。辛うじて受けられるけど相手の息も上がっている。このまま倒す心持ちで一気に……!

矢継ぎ早に斬撃を与え続ける。二人に鍛えてもらったおかげで体が軽い。

「くっ……ちゃんと援護しなさいよ!」

相手は体に少しずつダメージが蓄積すると同時にイライラもしてるみたい。

「遅いわよ……っ!」

相手が対応しきれなくなって体ががら空きになったところで思いっきり振り抜いて吹き飛ばす。

「かはっ……」

しかし、彼女が吹き飛んでエトラが視界に入ったとたん私に細かな氷柱が無数に飛んでくる。

「やばっ……!」

どれもこれもが小さくて鋭いから砕けなかった細かいものが体に突き刺さる。本当に痛い。

「あっ……ははは!ざまあ見なさい!これも作戦よ!ほら、もっと叩き込みなさい!」

高笑いする彼女。エトラも少しうつむきつつさらに私の足を凍らせて動きを止めてくる。

「一番最初はあんたよ!」

意気揚々と振りかぶって、移動のできない私に斬りかかってくるリーダー。

「消えろ!」

「ふふっ。貴女がね……っ!」

自信満々なその顔がいきなり目の前から吹き飛んで、轟音とともに壁に叩きつけられる。

「う……嘘……」

そのまま彼女は光に包まれて消えていった。

「一撃でやったらもったいなかったかしら」

「私も痛かったからちょうどよかったわ」

そのままエイリーンが私にまとわりつく氷を払ってくれる。うぅ……足とかめっちゃ冷えてる。

「ありがと、エイリーン」

「じゃあ私はレイの代わりにあの槍の子倒してくるわね」

「え?」

「ほら、エトラと戦うなら二人がかりでもう一回やり直せばいいじゃない」

「あぁ……そう言えばそうね」

リベンジ、ということか。

「わかったわ。ありがと」

「いいのよ」

エイリーンが颯爽と目の前から消えて少しした頃にレイが戻ってくる。

「姉様!」

「お疲れ様。レイ」

「エイリーンさんと交代しましたけど……エトラさんはどこでしょう……」

そう、あのリーダーの子を倒してから彼女の姿が一切見えないのだ。隠れられちゃったか。

「きっとすぐ見つかるとは思うけど」

「危ない、姉様!」

私の胸元を狙った氷柱がレイに叩き落とされる。見つけた。

「行くわよ、レイ」

「はい!」

木をそのまま真っ二つにする勢いで攻撃を繰り出す。

「はあっ!」

しかし、斬ったのは氷でできた像だった。身代わり……隠れるのも上手なのかエトラは……。

「まさか……こんなに厄介とはね」

そして私の直前までいた位置に氷柱が突き刺さる。

「私ばっかり狙ってくるし」

実際消耗度合いでは私の方がレイより大きいから仕方ない。私が一番倒しやすいんだから。

「当てさせませんよ。姉様」

「ありがと、レイ」

私を直接狙う氷柱はすべて妹の剣で叩き切られる。一個一個、放たれた場所に斬りつけに行っては身代わりの氷像を叩き切るのを何回か続ける。

「いつまでも続くとは思えないけど……」

「私はまだまだいけますよ」

そして今度は堤防の裏から飛んできた。

「そこね!」

思いっきり駆け上がって堤防の上を飛び超えるとエトラが二人。

「つ……貫いてっ!」

さっきとは比べ物にならないほど太くて長い槍のような氷柱が私とレイめがけて飛んでくる。まずい、引っかかった。空中だから避けられないし。この太さを叩き落とすのは難しい。

「こうなったら……!」


「す……すごい」

私の剣は氷の槍の真ん中を切り裂いて、そのまま本物のエトラのお腹を剣で突き刺した。

「や、やろうと思えば意外とうまくいくものね……」

あの早い氷柱、私に直線的に向かってきたから斬ることができた。

「レイさんも、ミアさんもすごい……」

「ごめんね、痛くして」

多分痛みはだいぶあるはずなのに私の事をほめてくれるエトラ。

「えへへ……大丈夫です。私も……痛くしちゃうと思うので……」

「え?あぁ……あの細かい氷柱は痛かっ……むぐっ!?」

わずかに光に包まれ始めたエトラは突然私の唇にキスをした。柔らかいし、ほんのり冷たい。

「んんん!?」

そのまま目を細めて微笑んだエトラの顔を見た、と思ったら激痛が一瞬走って意識がブラックアウトした。



「試合終了!」


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