エトラとのブレイクタイム
しばらくして、座ってモニターを眺めてる私の服をちょいちょいと引っ張ってくる感覚があった。
「あ、あの……」
そこには最後に戦った氷の魔法使いがいた。小さくてちょっと自信なさげというかおびえているというか。
「あぁ……最後の」
「その、最後の戦闘、痛かったですよね……ごめんなさい」
ぺこっと頭を下げてくる。小さい体が少し震えている。
「あ、全然大丈夫よ。普段できない感覚を味わったし……うちの妹が斬ってるからお互い様だし」
「妹さん……かっこよかったです。お二人とも連携がしっかりしてたし……」
だんだん声が小さくなっていく。
「そんなにおびえなくても大丈夫、よ……?」
「あ、そのえっと……」
何かを言いたげにしている。ふと、彼女の手をぎゅっと握ってみた。あったかくてすべすべだ。
「取って食べたりしないから。ゆっくりしゃべってくれればいいわよ」
この対応で合ってるだろうか。いきなり手を握った不審者になっていないといいけれど。目の前の彼女は驚いたり目を逸らしたり慌ただしい。ただ、手はぎゅっと握り返してくれている。
「えと……その、隣座ってもいいですか……?」
「え、ええ。大丈夫よ」
出てきた答えは拍子抜けするものだった。許可を取ったと思ったら隣にちょこんと座ってきた。もちろん手を握ったまま、だいぶもたれかかってきている。なんか末の妹ができたみたいでちょっと嬉しい。
「同じチームの人は大丈夫そう?戻らなくてもいいなら一緒にいてもいいけど……」
「同じチームの人……ちょっと怖くて、だから一人で守ってたんですけど……。お金持ちの貴族の方って高圧的で……叩いてくるし」
「あー……そういうことか」
どうやらこの子は私と似たような身分か、ノアのような特待生なのだろう。うまくチームメンバーになじめないというか誘われて断れなかったタイプか。にしてもこんなかわいい子を叩くなんて。
「で、でも……貴女は優しいし、妹さんはかっこいいし……落ち着いていられるから」
「ミア、でいいわよ。後で妹の事も紹介してあげるわ」
「み、ミアさん……素敵な名前ですね」
「貴女の名前も知りたいわね」
「わ、私は……エトラです」
「エトラ、かわいい名前でいいわね」
ちょっと照れながら名前を教えてくれた。レイと違う方向で本当に妹っぽい。
「かわいい……って初めていわれたかもです」
「そうなの?こんなかわいいのに」
正直こういう可愛さのある子は守ってあげたくなる。
「そ、そうですか……?え、えへへ」
照れ笑いもかわいい。
自己紹介を済ませたところで改めて画面を見ると、なんとエイリーンがほかの陣地を襲っていた。レイに陣地を任せて攻撃を始めるなんて……。戦い足りたなかったのかしら。
「エイリーン、強いわねぇ……」
攻撃した子が落ちたり、防御の子が落ちているチームがほとんどなので欠員が出ているチームを襲っては退場させている。どこにあんな元気が残っているんだろう。
「え、エイリーンさんって言うんですね……。強そう」
「ほんとに強いわよ。活発だしいつも元気をもらってるわ」
「仲良くなれると……いいな」
「大丈夫よ。いい子だから」
こんなところで友情をはぐくめるとは思わなかった。周りは全部敵だと思っていたし。そんなことを思っていたら既にエイリーンが一つの陣地を落としていた。
「す、すごいですね……」
「もうそろそろ試合時間も終わるわね……満足したのかしら」
時間ギリギリまで攻めるのかと思いきや彼女はそのまま自分の陣地に戻っていった。画面にはエイリーンとレイが一緒に写っている。
「勝ち抜け……おめでとうございます」
試合はまだ一応終わっていないけどエトラはそう言って微笑んでくれる。
「あはは……ありがとね。二チーム行けるみたいだけどエトラのチームは行けそう?」
エトラ自体が強いしほかのメンバーも強ければ引っかかってはいそうだけど。
「……どうなんでしょう。ミアさんのチームに最初に行ってなければある程度は行けると思うんですけど」
「それは……運になるわね」
「正直、あの人たちと長く試合するのは疲れるので……早く辞めたい気持ちもあります」
結構本音をぶっちゃけてくれる。やっぱりあんまりチーム内の雰囲気はよろしくないらしい。
「もっと早く出会ってれば一緒にできたかもしれないわね」
「惜しいことをしました……」
各チームに動きが無くなってしばらく経つと終了を示すブザーが鳴り響く。
「あっ、終わったわね」
集計中と表示されるスクリーンをちょっとの時間眺めていると、すっと各試合の順位表が表示される。
「えーっと私のチームは……」
「あ、あそこに……!おめでとうございます」
エトラのかわいい指が示す先には旗数ぶっちぎりの一位で通過した私のチームがいた。
「ほんとだ。ありがと。エトラのチームは……あら、通過してるじゃない」
「うっ……本当ですね」
「また試合で会うこともあるかもしれないわね」
本人はあんまり嬉しそうではないけどギリギリ二位で通過しているみたいだ。結構実力のあるチームみたい。用心しないと。
「できれば試合では当たりたくないですね……三人とも強いし」
「私は、どうかしらね……」
そんなことを話しているとあちらに残っていた選手がぱらぱらと戻ってくる。レイとエイリーンも戻ってきたと思ったらすぐにこちらを見つけて近寄ってくる。何で一瞬で見つけられるんだ。
「二人とも帰ってきたわね」
と、思ったら近づいてくるとレイがだんだん歩幅を大きく、足早に近寄ってきた。
「レイ、お疲れ様。私の分まで……」
「ね、姉様⁉隣の子は……」
ちょっと警戒するようにエトラの方を見ながらさらっと私の隣を確保する。




