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危なげない緒戦

遂に試合が始まった。

「じゃあ、行ってらっしゃい!」

「またあとでね!」

エイリーンの見送りを背に方位磁石の指す方向へ向かう。自己強化の魔法を用いていつもより早い速度で走り出す。森を一気に走り抜けるのはあまり慣れないので少し大変だ。

「姉様、転ばないようにお気を付けくださいね。足元にたまに根っこが張っていますので」

「ありがと、レイ。大丈夫よ……おっ!?」

そんなことを言っていたらレイの言うとおりに足を引っかけて転んでしまった。本当に情けない。

「大丈夫ですか姉様⁉」

「だ、大丈夫……」

姉の威厳が……。レイが手を貸してくれて立ち上がる。軽く土をはらって周りを見渡す。よかった、持っていた方位磁石を落としてなかった。

「もう相手の陣地が近いって言うのにこんなことしちゃって……恥ずかしいわ」

手元の方位磁石がゆっくりとした周期で点滅している。陣地が近づいてくるとこのように光りだすらしい。ここからはある程度慎重に。ゆっくりと陣地を探す。

「あ、ありましたよ。こちらです姉様」

そう言ってレイがこちらに来るように促す。隣からひょこっと顔を出して100メートルくらい先を見ると開けた場所を見つける。私たちと似たような石畳に旗。間違いなく相手の陣地だ。

「守ってるのは……見る限り一人ね」

「ですね、姉様。一気に攻め取りますか?」

この可愛らしい妹は目に期待の色を浮かべて好戦的なことを言ってくる。士気の高いうちにさっさと勢いに乗って攻めた方がいいかもしれない。

「……うん。そうしよっか」

「じゃあ早速」

「待って待って。できるだけ近づいてから攻撃しましょ。私あっちから回るからレイはこっちから回って」

「了解です。姉様」

少し時間をかけて慎重に防御の子に近づいていく。静かに剣を抜いて対面にレイが来るのを待つ。と思ったがひょこっとレイも顔を出していた。準備は万端。アイコンタクトをしてレイが頷いたのを確認。私の方が先に草むらを一気に走り抜いて守っている子に斬りかかる。

「とりゃあ!」

「来たな!」

思いっきり打ちおろしたが相手もしっかりと受ける。だけど万全の体勢じゃないようで少し辛そう。とはいえ私がここで動きを止めているところでレイが予定通り後ろから斬りかかる。

「ぐあっ……!」

特に何事もなく相手が光に包まれて消えていく。

「いい感じね」

「じゃあ、この魔法解きますね」

「お願い」

レイに旗を取るのを任せて私は他に誰か来ないか警戒する。とはいえそんなに時間はかからなかった。

「姉様、取れましたよ~!」

にっこにこで旗を見せてくれる妹。とてもかわいい。

「いい感じね。一旦レイが持っておいてちょうだい」

「わかりました!」

多分私が持つよりはレイが持っていた方がいいだろう。私ふとした瞬間に失くしそうだし。

「それじゃあ……次、行こっか」

方位磁石を見直すとまた違う方向を示している。エイリーンからの連絡はまだないしさっさと次の旗を取りに行こう。もぬけの殻になった陣地を後にして走り始める。しばらく森を走っていたが途中から草原に入っていった。走りやすいけどどこから狙われるかわからないから気は抜けない。

「姉様と草原を走るって久しぶりですね……!」

「な、何急に……確かにそうだけど」

一緒に走り回ったなんて本当にちっちゃい頃の話な気がする。あの頃が懐かしい。

「一緒にまたいろいろなことをできるのが本当にうれしくてつい……」

えへへと照れたように笑う。本当にいい子だし自慢の妹だなぁ。なんて感慨にふけっていたら方位磁石がまた点滅し始めた。敵の陣地が迫ってきているみたいだし少し速度を緩めて近づいていく。

「全然見えないわね……」

「緩い丘陵地帯になってますしこの稜線の向こうかもしれませんね」

「レイちょっとそこから向こうの方見られる?」

「了解です」

彼女は慎重に顔を出しつつ様子を探ってくれる。結果待ち……と思ったのもつかの間、エイリーンからの連絡が来た。手元で淡い光を放つ宝石。これが彼女との連絡手段。

「姉様。ありましたよ、相手の陣地。相手は一人みたいです」

「なるほどね……こっちにもエイリーンからの連絡がきたのよね」

「どうします?」

「うーん……」

連絡が来たしエイリーンの方を支援したいところだけどこんなところで目立つ砲撃したら……いや、むしろこれをうまく使うべきかも?

「ねぇ、レイ。ちょっと協力してくれる?」

「もちろんです!」

今思いついた作戦を簡単に話す。最初は驚いていたし複雑そうだったけどすぐに受け入れてくれた。

「じゃあ……お願いするわね」

「絶対に守ってみせます」

頼もしい。実力を知っているからこそ安心して背中を任せられる。


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