フラガエスト1回戦開始!
「人数的にはさっきと同じか少し少ないくらいかしら」
待機場所にはすでにたくさんの生徒がいる。さっきのクルセオで見かけたような人たちもいる。げっ、マギガントの時に妨害してきた人もいる。何にもないといいけど。
「そうねぇ。なんにしても勝ちに行くわよ?」
「もちろん」
「それにしても……少し視線を感じませんか?姉様」
「確かに?そうね」
私達の周りに空間が開いているし何か避けられているのかなんなのか。たまに鋭く敵視するような視線も感じる。
「私たちを恐れてるんじゃない?さっきまでの試合を見てきて」
「それでこんな腫れ物に触れるような扱いになるかしらねぇ……」
というかその場合原因はエイリーンとレイじゃない。
そして、しばらくしたところで審判の先生が入ってきてグループ分けを発表する。一概には言えないけど基本的にはグループ一位で抜けたところを通しつつたまに二位も通すらしい。もちろん私たちは一位以外目指していない。
「私達ここから転移みたいね」
前情報通りすでにほかの五グループは集合していた。どうやら私たちが最後についたみたい。相変わらずチクチクとした視線は感じる。
「よし、全員揃ったな」
「今から各チームごとに指定の陣地へ送る。試合開始はこちらで合図するから準備をして待つように」
担当の先生がそう言って全員いることを確認した後ですっと転送された。さっきと同じ現実ではない仮想の空間。ただし広さが桁違いらしい。
「森……?」
目を開くとそこは針葉樹のたくさん生えた森だった。私たちの陣地はわかりやすく石畳になっている。
「ふむ……これが旗ね。確かに動かすことはできなさそう」
目の前には一本の旗が刺さっている。なんてことないこれを奪い合うのかぁ。しっかりと陣地に刺さっていてほのかに薄い光の幕のようなもので守られている。
「それにしてもちょっと視界が悪いわね。ミア、大丈夫そう?」
「ええ。これくらいなら遠ければ遠いほど大丈夫なはずよ」
魔銃のケースを開封しつつエイリーンに銃弾のような形をした色付き水晶を渡す。これをうまくマーカーのように使うのだ。そのままエイリーンはいくつか木の陰などに配置している。
「地図がないのが不便よねぇ」
「確かにね」
そう、敵チームの陣地もほぼ手探りで探らねばならないのだ。大体全体の大きさは正六角形で構成されているので推測はできるけど。
「私も手伝います!」
「ありがと。じゃあこれ、あそことあそこに……」
レイも準備を手伝ってくれるのであっという間に支度は済みそうだ。今回は陣地を守るように魔銃を使うのである程度の威力を担保しつつ弾が届くように調整をしてもらった。少し重いけどこのくらいなら大丈夫。妹の足は引っ張らないはずだ。
「よしっ。これで大丈夫ね」
しばらくしたところで準備が整う。
「ふぅ……。相手これでいきなり攻撃されたらびっくりするでしょうねぇ」
「私たちも攻めるときに気を付けないとね。レイ」
「ですね!敵の罠を見破るのはお任せください!」
今回エイリーンが陣地を守って私たち二人で敵の陣地を攻める。いつもなら逆の動きをするだろうけど、姉妹の方が動きやすいだろうという配慮らしい。正直エイリーンとレイで攻めてもうまくいきそうだけど私一人に陣地の守りは荷が重いから今回の作戦でちょうどいいかもしれない。
「私の陣地への攻撃は少し遅れるかもしれないけど大丈夫?」
改めて聞いておく。私もできるだけ合図が出たら即撃ちたいけど、状況によってはそういうことができないかもしれないし一応。
「ええ。びっくりさせて隙を作りたいだけだしね。もちろん全部倒しちゃってもいいのよ?」
「ぜ、善処するわね……」
そんなにうまくいくものではない。距離にして1000レムは超えるだろう。直接は見えない目標に放物線を描いて射撃するだろうし直撃するかはお祈りだ。
「姉様。どこから攻撃しますか?」
「とりあえずこれで表示された隣にあるところから攻撃かしらね。詳しい場所はわからないし……これを見ながらできるだけ早く攻撃したいわね」
手元にある方位磁石のようなものを見ながらそう言う。この一見普通の方位磁石は一番近くにある相手の陣地を指し続けてくれる。どこにいるかわからない相手をやみくもに探さなくてもいいのは助かる。流石にある程度距離のある陣地同士で敵陣地の場所の探り合いで終わるのはつまらないからこのような便利グッズが配布されている。
「二人に期待させてもらうわね」
「頑張ってくるわ」
改めてエイリーンと軽く握手をする。
「レイもよろしくね」
「もちろんです」
しばらくすると音声だけで先生の声が聞こえてきた。一定の時間が経ったらしい。ついに始まるようだ。
「では、試合開始!」