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レイの善戦

「ただいま」

「ミア……!おかえりなさい」

部屋に戻るといきなりハグが襲ってきた。

「試合、お疲れ様……!」

「応援ありがとね、ノア。負けちゃったけど」

「頑張ってたのちゃんと見てたからね!相手の選手が強かったけど全力でやってたのはわかった……!」

そのまま荷物を置いてソファーに座るように促してくれる。どうやら帰ってきたのは私一人だけらしい。本当にみんな強い。

「三人ともまだ戦ってるのね」

「うん。さっきまでみたいに一瞬で片がつくことはなくなってきたけど、危なげなく上級生からも勝ちを取ってる」

そろそろ人数も絞られてきたしあの子たち同士で当たることもありそう。残っている選手の一覧を見ると一年生はあの三人と一人だけ。どうやらまだ見ぬ強者もいるらしい。

「さっきまで一人で応援してたんだけどちょっと寂しくなってきてたから……ミアが帰ってきてちょっとうれしいかも。もちろん勝ち残ってほしいっていうのもあるんだけどね」

こんな広い部屋で一人で応援はそりゃ、寂しくもなるよね。普段落ち着いているからあまり感じなかったけど、こういうところは年相応でかわいいと思う。

「次の競技始まるまでは私が隣にいるから安心していいわ」

そう言って手を握ってみる。ちょっと押しが強かっただろうか。

「……うん。ありがとう、ミア」

手を握ってから気になったけどさっきまで戦ってたから手汗とか気にするの忘れてた。不快じゃないといいけど。


しばらくして次の対戦相手が発表される。どうやら同士討ちは避けられたみたい。しかし、見知った名前があった。アル先輩だ。

「あれ……レイ、アル先輩と戦うのね」

あの先輩も例にもれず強いみたいだ。どんな戦いをするんだろう。

「本当だ……あの先輩、しっかりしてて強そうだったものね」

「ね。とりあえず一旦レイの試合でも見ましょうかねぇ」

画面には銀色と黒色の髪の二人が立っている。レイはいつもの通り剣を構えていた。綺麗な姿勢。しっかりしているあの子らしい。一方先輩の方はというと魔銃を構えていた。小銃タイプのものを一つ、腰には拳銃タイプのものを二つ。

「全部剣付きなのね……銃剣ってやつかしら」

私のものと違う点といえばすべての魔銃の先端に刃物がついていて近接戦が意識されていることだろうか。正直剣と戦える物なのかわからないけどわざわざつけていて、ここにいるということは実戦向きなのだろう。

『試合開始!』

審判の声で各試合が開始された。やはり、開始直後に先輩が発砲する。私と比べて明らかに射撃姿勢がとてもきれいだ。しかし、的確に放たれる弾のほとんどは剣で弾かれている。少し力をそらすのに失敗してのけぞることもあるけど、当り前のように弾を斬っていて驚く。

「ここまでくると魔銃を剣で斬るのは当たり前……なのかしらねぇ。私にはちょっとまだ無理だわ」

「ミアがやってた試合でも斬って弾いてる人はいたかなぁ……。とてもじゃないけど来年になったらあの人たちと同じくらい強くなってるのは難しいなぁって思ったかも」

ノアもそんなことを言う。結構化け物みたいな生徒だらけなのだろうか。私の魔銃の使い方も考えなきゃいけなさそうだ。

「というか先輩、距離詰めるのね……?」

発砲するたびに一歩、また一歩と距離を詰めている。レイは明らかに近接戦闘が得意だし近づかないのが常道だと思ってたけれど。

「というか正確性……すごいわね」

と、数発を弾ききったところでレイが動き出した。逸らすように弾を弾き、その流れのまま一歩を踏み出した。さらに一歩、どんどん距離を詰めていく。すると先輩も魔銃の持ち方を変えて片手で構える。キーンと甲高い音が鳴った。

「……そんな戦い方できるんだ」

なんとレイが振り下ろした剣を銃剣の刃ではじき返したのだ。一度だけでなく何度でも。魔銃本体には当たらないように刃の部分だけで対処している。

「一歩も退いてない……」

しかもただ剣戟をしているだけでない。レイが剣を構えなおす一瞬のスキをついて首元、鼻先、胸元、足を狙って突きを繰り出している。何とか彼女も避けてはいるけど主導権は先輩に取られてしまっている。

「レイがここまで押されるなんて初めて見たかも」

しばらくそのようにレイが押される剣戟が続いていた。しかし、さすがのレイ。何回か突きを受けるうちにある程度タイミングを見切ったようで今度はしっかりと刃を沿わせるようにして外に弾き、先輩の体勢を開かせた。

「おっ……!」

「いけるわよレイ!」

もちろんその隙を逃すことはなく、最小動作で斬りかかるレイ。このタイミングなら小銃は間に合うまい。次の瞬間、先輩の体をレイの剣が斬ると思ったその時また甲高い音が鳴った。

「噓ぉ……?」

先輩は小銃タイプの魔銃を躊躇せずに手放して腰の拳銃タイプの方で対応をした。しかも今度は弾いた手と反対側の魔銃が追撃の発砲を浴びせる。流石のレイもこの至近距離では何発か被弾してしまっている。

「あのとっさの一瞬で正確に狙いをつけて足を撃ちぬけるのすごいわね……本当に」

「あそこまでの魔銃使いは初めて見たわ……」

距離が開いてしまったのでさっきの倍の弾がレイを襲う。だんだんと傷が増えていく。このままじゃジリ貧だけど……と思ったところで彼女は距離を詰めに行った。一歩踏み出していくごとに被弾が増えていく。しかし、少し進路を左右に揺らしながら詰めることで左肩に一発の被弾で済ませたように見える。そして、そのまま右から左に斬り上げる。

「あっ……!」

上体を逸らせて避けられてしまった。これで終わりかと思ったその時。先輩の左手の魔銃が宙を舞った。なんと妹は斬り上げた勢いのまま蹴り上げで魔銃を吹き飛ばす選択をしたらしい。この土壇場で成功させるとは思わなかったけど。とはいえ、レイの反撃はそこまでになってしまった。そのままレイは転んでしまったからだ。

「あちゃぁ……惜しかったわね」

軸足にさっき何発か被弾したせいでひねったときに力が抜けてしまったみたいだ。アル先輩は転んでしまったレイの頭にそのまま発砲して試合終了。レイの体が白い光に包まれる。

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