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魔法のハグ

「エイリーンが負けちゃった……!」

「もう一歩でしたわね」

試合終了の轟音と土煙が晴れてからというものの少し気まずい雰囲気が流れる応援室。

「応援が足りなかったかも……絶対次はエイリーンが勝てるように応援しなきゃ」

「貴女が気負ってもしょうがないですわよ?結果は結果。それを受け入れないと前には進めませんわ」

ロベリアが大人な意見を言ってくる。それはそうなんだけど、エイリーンなら絶対負けないと思ってただけにちょっとびっくりというかショックというか。というかいつから私は友達に自分勝手な期待を持っていたのだろう。最低な友人だ。

「確かにそうかも……」

自分で勝手に落ち込んで返答してしまう。

「そこまで落ち込まなくても……。ともかくエイリーンだって貴女のそんな沈んだ姿見たら責任感じちゃいますわよ」

「そ、それもそうだね……。エイリーン悪くないのに」

「そうですわよ。ほら、お茶飲んで落ち着く」

今度はロベリアからお茶を飲まされる。さっきの甘いお菓子が口の中から消えてさっぱりとする。同時に気分も少しスッキリした気がする。

「にしても、強い人いっぱいいるんですね。姉様」

「そうね……残りの競技、気を引き締めなおさないといけないかもね。レイ」

「姉様の敵は全部倒します。見ててくださいね!」

自身満々にそういう妹。頑張りの炎が目の中でメラメラと燃えている気がした。

「ええ。頼りにしてるわ」

とはいえ次の競技は妹とも戦う可能性があるけれど。



「ただいま!」

しばらく待っているとエイリーンが元気に帰ってきた。

「あ、エイリーン。お疲れ様!」

「お疲れ様です」

「お疲れ様ですわ。惜しかったですわね」

当り前だけどエイリーンは特に気落ちをして暗くなってはいなかった。正直彼女が落ち込んでいたらどうやって対応すればいいのか困ったかもしれない。

「応援してくれたのに勝ちきれなくてごめんなさいね」

「頑張ってたのは伝わったよ」

ちょっと申し訳なさそうな雰囲気をちょっとだけ出す。そして流れるように隣に座ってくる。

「本当?じゃあ志半ばで負けちゃって傷心中の私を慰めてくれる?」

急に普段は見せないような弱弱しい顔で見上げてくる。普段凛々しいかっこいい顔か笑ってる顔しか見ないのでギャップが刺さる。

「え、エイリーン⁉」

「慰めてくれないの?」

「え、えぇっと……とりあえず?」

とっさのことでいつも妹にやってるように頭を撫でてからぎゅっと抱き寄せる。背中もゆっくりとさすってあげる。

「お疲れ様。頑張ったね……」

「み、ミア……⁉」

少し驚いた声を上げるエイリーン。いつも妹にこれをやるとすーっと落ち着いてくれるからちょうどいいと思ったのに違ったかな。背中をトントンと軽くたたきながらしばらく抱きしめてあげる。

「……いつまでやってるんですの?」

しばらく無言で抱きしめてあげてたらロベリアがじとーっとこっちを見てそんなことを言ってきた。

「やめ時が……」

とりあえずぱっとエイリーンの事を離してあげる。ふわっといい香りがした。

「あ、ありがとう」

今まで見たことないエイリーンの顔が目の前にあった。顔を少し赤くして惚けているというか恥ずかしそうにしている。なんかかわいい。

「どうしたのエイリーン……?顔赤いわよ?」

「ふ、普段こんなことされることないしちょっとびっくりしただけ……」

「エイリーンさっきすごいびっくりした顔をしてましたわね。見せたかったですわよ、本当に」

「ふ、普通よ!」

なんか慌ててるエイリーンって新鮮かも。

「姉様の背中トントンは効きますからね……わかります」

レイはなんかわかったように頷いてるし。

「ちょっと気になりますわね」

「ね。今度やってもらおうかな」

ロベリアとノアもちょっとしてほしそうな顔をしてるし。そんなにいいんだろうか。人とハグをするのはストレス解消にいいとはよく聞いたけど。

「わ、わかったわよ。今日の試合全部終わったらやってあげるから」

「約束よ?」

「やった♪」

私のハグでそんなに喜んでもらえるならまぁいいか。

「姉様のハグがあるとわかるとちょっとやる気が出ますね」

「レイにはいつもやってあげてるじゃない」

「何回されてもいいものですからね」

「そ、そう……」

そんなハグをするしないの話をしていたらいつの間にか眼下では決勝戦が始まっていた。


「あ、そろそろ行かないといけないわね」

そういえば次のクルセオに参加するんだった。半ば強引に参加させられてるけどやる以上は頑張りたい。

「エイリーン、疲れてない?」

「大丈夫よ!」

少しインターバルがあったから休めたみたいでよかった。今度の競技は魔法もどの武器も自由に使用しての戦いだ。私も多少は戦える気がする。自信はないけど。

「姉様は手、大丈夫ですか?」

昨日の痛みはだいぶましになったしもう剣を握ることはできそう。

「ええ。たぶん大丈夫」

「魔銃は使われるんですか?」

「んー……秘密」

レイも対戦相手になる可能性はあるし、わざわざ不利になることはしないでおこう。いくら妹でも手は抜きたくない。

「いいですわね。本番が楽しみですわ」

エイリーンもロベリアも戦う顔になっている。お、恐ろしい。

「私はみんなの子と応援してるからね!頑張ってきてね!」

そう言ってノアが一人ひとりの手を握って応援してくれる。あったかくて柔らかい手が心地いい。

「ええ。楽しみにしてるといいわ!」


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