気の早い計画
「さて、明日のことを話したいけど……特に改めて話すこともなかったわね」
寮の部屋に戻ってきた。この部屋には私とレイとネイやセイラ、オーバしか住んでいないはず。なのにここには三人追加されている。
「ん、貴女のお茶おいしくなりましたわね」
「本当⁉うれしい!」
セイラは褒められて喜んでいるし。エイリーンは窓から外を眺めながらお茶を飲んでるし。無駄にキマっててかっこいい。
「まだ日は高いですしゆっくりするって感じでいいんじゃないですか?」
ノアはお菓子を食べながらそんなことを言う。私とレイだけ制服を脱いで私服になってるの、ちょっと浮いてる感じがしてちょっと慣れない。
「お菓子はたくさんありますからごゆっくりしていってくださいませ」
「ありがと、ネイ」
「そういえば明日って誰から競技始まるの?」
「私よ。それくらい把握しておいて欲しいわ、ミア」
「ご、ごめん」
ちょっと拗ねたようにするエイリーン。
「えぇっと、確か……水上の競技よね」
「ええ。私の水着を見るのも楽しみにしてなさい!」
「水着かぁ」
そういえば最近水着を着たのなんていつだったろう。人のでも見るだけで楽しそう。
「何?水着着たいの?」
「そんなこと……思ってないわよ?」
着たくないといえば嘘になるだろうか。というか小さなころの思い出でしか水着を着た思い出がない。そりゃあ前の世界じゃいっぱい着たけども。
「用意しましょうか?」
ちょっとニヤッとしながらエイリーンがそんなことを言う。
「別に欲しいだなんて……ただ、久しぶりに海に行きたいなって思っただけよ」
「そういえば最後に海に行ったのって子供の頃でしたっけ、姉様」
「エイリーンと初めて会った時が最後ね」
「じゃあ久しぶりに行く?」
想像もしなかった提案をされる。
「行くって……いつ行くの?」
「そうねぇ。選考会終わって時間ができたらとか?」
「ならうちの別荘を使うといいですわ」
ロベリアまで乗り気だ。正直別荘に行くっていうのもあんまり良いイメージはないけどロベリアの別荘は楽しそう。というか、友達と行く旅行って絶対楽しい。
「それは……楽しそうね」
「じゃあ決定ね!」
「別荘を使えるようにしておきますわ」
「私はそこまでの移動方法と、そうね……貴女たちの水着を用意しておくわね!」
「別に私はいいですわよ。困ってませんし」
「いいからいいから!私が贈りたいって言ってるんだから受け取っておきなさい!」
なんという宣言。一方的である。嬉しいけど。
「後で体の採寸だけさせてね」
「ミア様達の採寸はすでにまとめてあります」
「ね、ネイ⁉」
なんといつの間にかまとめられていた私たちのデータがエイリーンに手渡される。
「ふむふむ……。あら?ミアとレイの分しかないじゃないの」
「と言うと……?」
ペラペラと紙をめくって疑問符を浮かべる。
「ネイとかオーバ、セイラの分がないわよ?」
「私たちもですか?」
驚いたように聞き返すネイ。彼女が驚いたところを久しぶりに見たかもしれない。
「当たり前よ。みんなで海に行くんだから」
本当に彼女らしい言い分だ。彼女のカリスマの元はこういうところにあるのかもしれない。
「か、かしこまりました」
「何なら今から採寸してきてもいいのよ?私お茶してるし」
「……では今すぐに」
そう言ってセイラを連れていくオーバとネイ。
「あ、ついでにノアの採寸も!」
「かしこまりました」
「私も!?」
驚きながら連れていかれるノア。流れ的に当たり前だろう。
「せめて、私に移動手段を用意させてくれないかしら。全部用意してもらうんじゃ申し訳ないし」
「んー……まぁいいけど。無理しちゃだめよ?」
「ええ」
「それにしても……ふぅん」
データを見ながら私とレイの体を下から眺めている。
「何よ。じろじろ見て……」
「見て、ロベリア。羨ましくない?」
「なんですの一体……。ズルいですわね」
ロベリアまで私たちの体を見て、自分の体を見て少し悔しそうにしている。彼女もスタイルいいくせに。
「これはちょっときわどい水着で攻めさせてもいいかもしれないわね」
「ですわね。せっかくいいものを持ってるんですから、しっかりとわかりやすくしないと」
なんか恐ろしいことを言ってる気がする。
暫くしてノア達が戻ってきた。
「しかと、採寸してきました」
データの書かれた紙を手渡すネイ。ちょっと気になる。後で聞いたら教えてくれるのかな。
「ん。ありがと。……ふむふむ」
軽く目を通すエイリーン。
「ミアのお家、なんというか羨ましいわね。みんな出てるとこ出てて羨ましいわ」
「それ、あなたが言う?」
The・美人といった風の人間にそんなこと言われてもな。
「まぁ、水着は楽しみにしてて。とっておきのみんなに似合うやつにしてあげるから!」
「楽しみにしておきますわ」
「手加減してよ」
まだ選考会が終わってもないのにすでに終わった後の楽しみのことを考えてしまう。これもまたちょっと贅沢で楽しい事なのだろう。昔味わうことはできなかった分いっぱい楽しまないと。