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始末

もう何人斬っただろうか。地面には敵の死体がいたるところに横たわっていて、もう残り10人ほどになっている。

「こいつら強ぇ……」

「おらぁ!」

また一人の敵を切り伏せる。相手もさすがにここまで消耗するとは思っていなかったのか驚いている。

「ずらかるぞ!」

敵のリーダー格らしい人物の言葉を合図に獣道を撤退していく。

「あっ……待て!」

「ミア様」

追いかけようとする私をネイが引き留める。

「皆さまもう限界点に達しております。我々も帰りましょう」

確かに殿として残った三人ともだいぶ戦って疲労が顔に出ている。

「ネイさんの言う通り、一旦帰ろう。ミアリーンさん」

「……そうね」

「マスター。遅れてしまい申し訳ございません」

空中から私の近くに降り立ってくる。

「イオナ……。ううん、もっと早く呼べばよかっただけだから大丈夫」

「では……街までお送りいたしましょうか?」

「うん。お願い」

「かしこまりました。三名様ですね」

そう言うと、イオナは私のことをお姫様抱っこしてきた。ネイもどこからか現れた自動人形に抱っこされている。

「おおっ!?」

カイもいきなり現れた自動人形におんぶされてびっくりしている。

「戦士様。しっかりとお掴まりくださいませ」

「では参ります」

その言葉と同時にものすごい速度で三人とも走り始めた。半ば飛んでいるといってもいいだろう。木の上を軽々と走っていく。

「うおあああ!?」

カイが一番驚いている。叫び声がずっと聞こえる。

私達が出発した街まで到着するのに数分もかからなかった。


「それではこの辺で」

街の入り口の近くまで来て、そっと降ろしてくれる。

「ありがとう、イオナ」

一礼をした後三人とも消えてしまう。

「あれは……ミアリーンさんの知り合いなのか?」

「まぁ……そんなところです」

目と鼻の先の街まで歩いていく。

「ミア~!」

門を抜けようとしたところでセイラが思いきり抱き着いてくる。

「無事だったんだね!よかったぁ……」

「セイラ……汚れちゃうわよ」

私の体は返り血で割と衝撃的な見た目ではあるのであまりくっつかれるとセイラまで汚れてしまう。

「そう言えばほかの人は?」

「宿で休憩中。皆無事だよ」

「よかった……」

「三人とも血塗れだし、宿に戻って一旦休んだ方がよさそう」

「そうだな……さすがに疲れた」


宿について、怪我をしていたセレスタたちの安らかな寝顔を確認して改めて一安心しつつ湯浴みをする。ほっとする温かさだ。

「ミア様、お着替えを用意してあります」

「ありがとう、ネイ」

綺麗な服に着替えたところで、レムオリの部屋へ向かう。

ノックをすると不機嫌そうな声が聞こえる。

「誰だ」

「ミアリーンでございます」

そのまま部屋の中に入る。

「何の用だ」

「これからの話です。我々としては一度ご帰宅なさることをお勧めしたいのですが」

「何も成果を得ていないのに帰れるか!」

「しかし、負傷者多数であなた様の護衛が難しいため成果を得るのも難しいと思われますが」

「お前らが不甲斐ないせいだろ!」

「護衛対象が攻撃してくるのをだれが予測できるでしょうか」

ちょっとだけ冷たく言う。

「あれも……お前らが……」

急に語気が弱くなって、ごにょごにょ何か言っている。

「ともかく、一旦お帰りになって改めて護衛を雇ってください。私達は報告を終えたら帰ります」

そう言って返答を得る前に部屋を出る。


「ミア……どうだった?」

部屋を出てすぐにセイラがこちらの様子を見ていた。

「明日にはスタリジャンに帰りましょう」

「はぁ~やっと帰れる!」

「領主への報告は気が重いわね……レスタは負傷してるし私がするしかないでしょうけど」

「あぁ……あんまり人当りよさそうじゃなかったもんね……」

「はぁ……」

ため息を吐いても仕方がないのだがこの後のことを考えると心が重い。


2日ほど護衛対象とけが人の静養のために町で逗留してからスタリジャンに戻ることにした。

相変わらずド派手な馬車を連れて帰り道を行く。今回は流石に私達を馬車に載せることはしなかったので馬車の周りを歩いている。

「そう言えば昨日はどこに行ってたの?朝方三人で出かけてたの見たけど……」

どうやらセツには見られていたようだ。

「んーちょっと忘れ物を取りに、かな?」

「忘れ物?」

「あとで多分見せてあげるから楽しみにしてて。絶対役に立つから」

「ふーん?」

帰り道では特に誰かに襲われることもなく順調に帰ることができた。お屋敷に着いて、私達は部屋に通された。領主への謁見はしばらくしてからになりそうだ。

「せっかく戻ってきても領主様が外に出られてて謁見はまたあとでかぁ……」

「怪我をしてる二人は宿においてきたから時間はかかっても良いのが救いだね」

「また明日出直しましょう」


翌日、改めて館へ向かう。今回は私の他に、ネイとセツの三人で行くことにした。

セイラ達には馬車の用意をしてもらって、すぐにカーンへ帰ることができるようにしてもらっている。

「ミアさん……改めてだけど大丈夫だよね」

「多分、大丈夫。任せておいて」

昨日と同じように部屋に通されて一時待機をしているが、昨日と違って領主は帰ってきているようで少ししたら呼ばれるみたいだ。

「皆さま、ご当主様がお呼びです」

ちょっと休んでいたらすぐに従者が呼びに来た。彼女の後についていくと二度目の大扉を通って領主の前に通される。

一礼をして、簡単な報告をする。息子はいないようだ。

「申し訳ございません、ご当主様。我々七名はご子息の護衛任務を放棄いたします。護衛として、盗賊と戦うことは異存なく襲撃に対してもご子息を無事に街まで送りましたがご子息に攻撃されては護衛ができません」

「我が息子と聞いていた話と違うが。嘘を申しているのではあるまいな」

「いえ、本当で……」

「盗賊に襲われ、我が兵士ごと切り捨てながら強引に街まで戻ったと聞いたが。また、我が息子に恥をかかせるような言があったと聞いた」

「それは本当では……」

「大体、依頼したのは護衛だけでなく箔つけの手伝いもあったがそれを達成できないのでは報酬は払えんぞ。むしろ兵士を切った分の謝罪金が欲しいくらいだ」

「結構でございます。そもそもご子息の行動を見て報酬をいただけるなど思っておりませんし、謝罪することもございませんので支払うこともございません」

「貴様その態度はいったい……!この場で斬ってやろうか!」

急に言葉を強めた私に当然怒っているようだ。後ろに控えていた兵士が私たちに武器を向けてくる。

「よろしいのですか?ご子息が欲しがっていた『これ』を持ってきましたのに」

ネイに持ってきてもらっていた宝石の原石を掲げる。

「あそこの奥にあった洞窟。そこにしかない宝石を得るためにご子息を送られたのでしょう?アウリナから無事に出られる確証が頂けるのでしたらお渡ししてもよろしいのですが……」

あそこの周りにはそこそこに強い魔物がいたので取りに行くのはめんどくさいだろう。

「貴様……!」

予想通り領主のハンドサインで武器を向けていた兵士が私達へ攻撃をしてくる。小娘に侮られて交渉などを迫られるなど気に喰わないのだろう。

五人程度なのでネイと二人で敵の武器を切って無力化する。ネイは武器の石突の部分に当たる部分でそのまま兵士を吹き飛ばす。

「領主様、いかがでしょうか。この宝石と無事に出る保証を交換していただけますか?」

兵士たちの武器を使えなくして、ほとんど行動ができないようにして改めて領主に問う。

「チッ……勝手にしろ」

「感謝します。それでは」

原石を地面に適当に放ってからネイがセツの背中を押して殿を務めつつ部屋を出る。


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