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選考会準決勝

「なんか競技中に的の仕様変わったかな」

三週目の競技を終えて一息ついたところで途中で感じたことをつぶやいてみる。どうせ誰も聞いてないだろうし。明らかに魔法防御が付いてる的の固さが上がってる気がする。一週目の時は真ん中じゃなくても割れていたのにさっきは割れなくなっていた。

「そんな仕様聞いたことないんだけどなぁ」

といっても誰に聞けるわけでもなく。さっきまでより、より慎重に狙わなければならないといけないみたい。

「……お花摘んでこようかな」

トイレの前にクロークへ向かう。選手がちょっと席を外すときは公平を期すために学院が魔銃を預かってくれるシステムがあるのだ。自分で言うのも悲しいけど私みたいなぼっちには助かるシステムである。


「……これですの?」

「この貧相なケース……これで合ってますわよ」

「あまり気乗りはしませんけど……」

「やらないと私たちが痛い目を見ますわよ。あの子に何か手心を加える理由でもありますの?」

「そうですわね……」

ここはクローク。本当は生徒が立ち入ることはできないはずなのだ。本来なら。彼女たちはとある少女の魔銃のケースを開いて何やら細工を行っている。


「うぅ……学院の化粧室全部に紙つけてほしいな」

そんなことをぼやきながら濡れた手をハンカチで拭く。鏡を見て一応服装に乱れがないかだけ確認する。

「よしっ」

クロークに交換票を渡して魔銃を返してもらう。私のを持ってくるときにちょっとだけ時間がかかったけど何かあったのだろうか。

「競技、頑張ってくださいね」

「あ、ありがとうございます」

応援までしてもらっちゃった。次は準決勝だし頑張らなきゃ。



ということで準決勝が始まる。と言ってもまだ24人もいる。4人ずつ競技をして最終的に8人まで減らされるらしい。ここまでくるのに必死で周りのことをあまり見てなかったけど大きい派閥が二つあるみたい。私みたいな個人勢は4,5人といったところか。

まぁどうせ出られるのは上位数人。派閥を組んでもあまり意味はないようにも思うけど。

そんなしょうもないことを考えていたら早速呼ばれた。どうやら一緒にする人たちは同じ派閥の人たちみたい。やることは変わらないけどちょっとだけ肩身が狭い。

さっきと同じようにレーンについたら魔銃をケースから取り出す。

「……ん?」

なんかさっきと小物の位置が変わった?今日はまだ触ってないはずなんだけど……移動途中に落ちたのかな?

「まぁいいや」

今は気にしないで準備を完了する。数分したところで審判からはじめの合図が出される。

「始め!」

合図と共に一斉に各レーンから弾が出て的を砕いているはずだった。しかし現実は私のレーンだけ砕けていない。弾はあらぬ方向に飛んでいくしさっきよりも発射の間隔が異常に狭くなっている。

「えっ⁉」

いきなり使用感が変わってしまった。驚いて一瞬思考が止まってしまったけど落ち着いて的を狙いなおす。幸い規則性はあるみたいだからあとは引き金を引く時間に気を付ければ大丈夫なはず……。

「……よしっ」

引き金を引く。さっきと弾道は変わらないみたいだ。ちょっとずつ調整していくとしっかりと弾に当たる。さっきより一度にたくさん弾が出るので的を壊すのは当たればさっきよりもたやすい。

的を砕けたことで気持ちも落ち着いたし、周りからは少し遅れつつ競技を進めていく。



「ちょっと姉様の様子が……!」

「何どうしたの?」

まさか本当にミアに何か……?

「さっきまで一番に進んでいたのに急に一番最後に……!」

この世の終わりかってくらいの様子で何事かと思えば最初で躓いただけみたい。

「そりゃミアだって失敗することくらいあるわよ。大丈夫、ミアのポテンシャルなら多少の遅れなら取り戻せるんだから」

彼女の練習に付き合っていたしあまり不安はない。

「だって姉様、最初思いっきり的を外してましたよ?今もさっきまでと違って撃ちっぱなしじゃないですし」

「うーん……それはちょっと変だけど、今はミア当ててるわよ?」

実際映っている結果表記でもだんだんと他の選手との差が埋まっていっている。ちょっと違和感はあるけどそこまで気にするほどでもないような気がする。

「ロベリアとノアはどう思う?」

「……私もちょっと見ないミスだと思いましたけど、ちゃんと取り戻せてるようですしねぇ」

「一応レディに探らせてますし、何するにしてもそれを聞いてからにしてもいいのではなくて?」

確かにそれでいい気はする。

「一旦落ち着いて見守らない?不安なのはわかるけど」

「……わかりました。姉様、頑張れ~!」

切り替えが早くて助かる。この点ほんとに尊敬ができる。



「よいしょ」

前半の的砕きを終えて後半の狙撃の方に来た。他のレーンの子はすでに準備を始めている。私も早く追い抜かなきゃ。

「予備を持ってくるって大事なのね……ほんとに」

さっきまで使っていた一般式をしまって予備に持ってきていた狙撃タイプを取り出す。ちょっと射撃速度は落ちるけどさっきまでの撃ちにくさをなくせるならこっちを使った方がいい。試しに構えて一発だけ発射する。

「ん。大丈夫ね」

まっすぐ素直に飛んで行った。これならいける。狙いをつけて引き金を引いていく。どんどん的が四散していく。さっきより狙う手間が増えるけど、エイリーンともしもの時の練習をしておいてよかった。周りを見ずに一心不乱に撃ち続ける。

「ほんと撃ちやすいわね……っと」

動いている的も難なく壊せる。さっきまでの硬さが嘘のよう。

「これで、最後……!」

スコープの十字の中の的が砕けると同時にランプが点灯する。ふぅと一息ついて周りを見渡すと一番に終われたみたい。隣の子をいつの間にか抜いていたみたい。ともあれひとまず安心……かな?

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