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口火を切るミア

「はじめ!」

審判の開始の合図が鳴ると同時に的が打ち出される。ノアたちがやっていた競技よりちょっと距離が離れているけどこの魔銃なら問題はない。一呼吸入れて引き金を引く。まずは左から打ち出された的を、それを壊したところで右側から打ち出された的に薙ぐように引き金を引いたまま銃を滑らせる。弾が爆発して的を確実に壊すようにしたのでちょっとした花火みたいになっている。音はそうでもないけど結構きれいに光っている。

「た~まや~……なんてね」

ついボソッとつぶやいてしまった。たぶん誰にも聞こえてないけど。しっかりと的が粉々になって地面に落ちていく。と思ったらすぐ次が飛んでくる。

「慌てない慌てない……んっ」

また一呼吸おいて引き金を引く。ちょっと照準はぶれていたけどどんどん壊していく。自分でもあんまり美しくはないしスマートじゃないなぁと思うけどとりあえず壊れてるしいっかぁ……。さすがに本戦が始まるころまでには成長したいけどね。

「ふぅ……まだ終わらないんだね……」

ずっと引き金を引き続けて指が疲れてきた。というかちょっとつりそう。

「練習の時こんなに長くなかったのになぁ……」

ノアたちの競技の時より飛ぶ的の数が多いような気がする。周りがどのくらいできてるのかすごい気になるけどよそ見はできない……。

「って……固いと思ったら魔法で加工されてるわね」

と言っても二、三秒多く撃ち込むだけだけど。華やかさのない力押しだ。かすかに防御の破れる音が聞こえるけど爆発音の方が大きいので観客には聞こえてなさそう。

しばらく撃ち続けて最後の的が砕ける。

「完璧っ!」

引き金から指を離す。隣を見るとまだ撃っているっぽい。一番乗りはもらったわね。魔銃を下ろしてケースにしまう。と同時に観客から歓声が遅れて聞こえた。

「……ちょっと嬉しいわね。狙撃も頑張ろっ」



「ミア……ちょっと規格外すぎないかしら……」

「貴女、練習見ていたんじゃなかったんですの?あれはやりすぎですわよ」

「いやぁ~私が見てた時はもうちょっと控えめだったんだけどね……」

ミアの試合を見ていたらちょっと言葉が出てこなくなってしまった。流石にあれはほかの生徒と比べて格が違いすぎるし、最高レベルの魔銃使いと比べても遜色がない。それだけならいいけどここまでだとよくないものに目を付けられかねない。

「やっぱり姉様はすごいですね!」

レイは姉の活躍に興奮しているみたいだけど。まだ危険性に気付いていなそう。

「ちょっと……真面目にミアの事考えなきゃいけないかもね」

「私が守って差し上げますわよ」

ロベリアは自信ありげに胸を張る。この国ならロベリアの力である程度守れそう。

「私も手伝うわ!いざとなったらみんなで逃げられるようにするし」

「逃げる?なんの話ですか?」

ちょっと大きい声を出してしまったからノアとレイがこちらを覗いてきた。

「あぁ、大丈夫よ。そんなことにならないようにするから」

「ふむ?じゃあ早く姉様の活躍を見ましょう!」

「あはは……はいはい。ちょっと待って」

いつもは姉を支える才色兼備のしっかり者の妹なのに姉のことになるとどうしてこうなってしまうんだか。ちょっと苦笑を浮かべつつレイに引っ張られていく。


「静かね……」

狙撃の競技場に来ると私以外の参加者がまだ来ていないのでシーンと静まっている。ちょっと声を出したらものすごく響きそう。やりたい誘惑には駆られるけどはしたないし我慢する。

「私のレーンは……ここね。よいしょっと」

ケースを置いてさっきまで使っていた銃を取り出す。今回は狙撃タイプに変えないでこのままいく。あんまり使い慣れていないのだ。と言っても弾倉は少し変更して撃つ弾を変えた。さっきの弾じゃ安定して遠くまで飛ばないし。

準備を完了させるとブザーが鳴って遠くにあるランプが点灯する。競技再開だ。

「ん~……っ!」

スコープをのぞき込んで的を見つめる。ほとんどズレは気にしなくていい。そのまま引き金を引いて発砲する。さっきよりもちょっと大きい発砲音を響かせつつ、ものすごいスピードで弾が的に向かって進んでいく。命中。しっかりと指定された場所だけ抉れている。

「いい感じ!」

次の目標に切り替える。また狙って引き金を引く。途中の妨害なんて気にならない。どんどん弾は的に吸い寄せられていく。気持ちいいくらいど真ん中に命中。

「やっぱり当たると気持ちいいっ」

しばらく的に命中させると的が動き始める。といってもやることは変わらない。狙って撃つ。これだけ。最後の一枚まではあっという間だった。今までで一番速い動きをする的も、落ち着いて狙って引き金を引く。

「命中!」

ブザーが鳴って競技の終了が告げられる。私の初めての競技は大成功で終われたと思う。スコープから目を離すと隣のレーンでは別の生徒が競技を続けていた。

「……さて、控室に戻ろうかな」

ケースを背負って出口の方へ向かう。


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