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決勝のレイ

「入場してください」

係員に案内をされて競技場に入場する。明るくなったと思ったら歓声が降ってくる。

「ふぅ……よしっ」

息を整えると対面に相手の選手が入場してくる。互いに礼をする。相手の選手、間違いなく今回の競技会で一番の強敵。小手先の技は多分通用しない。私の全身全霊で一撃で仕留めるしかないと思う。どうやって持って行こうかな、相手も私と同じこと考えてくれればいいんだけど。

始まる前の静寂。心臓の音が一番大きく聞こえる時間だ。


「はじめ!」


開始の合図が聞こえると同時にいつもの通り相手の選手に向かって突撃する。これで仕留められるとは思わないけど相手の実力を図るためにも一回だけやっておく。

相手の選手がさっきまでの試合の倍の速度で迫ってくる。どうやら相手も同じことを考えていたみたい。いつもより早めに魔法を発動させる。ふわっと浮かんで下にいる相手に向けて水を叩きつける。今回は守るための魔法も発動している。相手も同じことを滑り込みながらやってきたし。

「……やるぅ」

顔の横を今までにない威力で飛んでいく相手の魔法。私の魔法も相手のも互いの魔法を貫通できなかった。

さっきと逆の位置でもう一度対面した。二、三回同じことを繰り返したところでいったん魔法を放ちあって牽制をする。相手が思ったより粘ってきたので付き合ってあげた。

「さて……どうしようかなぁ」

ここから私の有利なはずの一撃勝負に持って行きたい。多分勝負がつかないようなら相手も乗ってくるはず。とにかく相手のやりたいことに付き合って絶対に負けないこと。と思ったら相手からさっきより強い威力の魔法が飛んできた。気づかなかったら飛ばされていたかも。

今度は一歩前に踏み出して相手の水の塊に私の魔法を直接ぶつけていく。魔法の同時複数操作は高等技術と聞いたけど相手も同じことをやっている。流石決勝。

「これを待ってたのよ……!」

魔法防御を捨てて全力で魔法を発動する。当然相手からの攻撃は来ているのでそれを撃ち落としながら。私の発動する魔法の数より相手の方が多かったら負けるけどこれで私が負けるようなら純粋な実力不足、姉様に合わせる顔がない。

高等技術の応酬に観客から声が上がるけどそんなのは聞こえない。

相手の方からも同じような法力の流れを感じる。乗ってきてくれたみたい。

「……姉様、見ててくださいね!私の全力見せますから!」

私の持つ法力のほとんどを用いて練り上げたこの水の塊。避けることなんてさせない。相手の周りに牽制用で小さな水の塊を撃ち込む。一瞬めまいがしそうになるけど我慢我慢。

「……よしっ、いっけぇっ!!」

私が今までに撃った魔法で最も威力が高い。相手も同じように高威力の魔法が飛んできている。このままぶつかり合う。ぶつかり合った瞬間競り合う。しかしその競り合いはすぐに終わり、私の魔法が勝った。そのまま相手に飛んでいく。流石に防ぎきれないでしょ。

相手は魔法防御を全力で展開して防ごうとする。数秒は耐える様子を見せるけど少しずつほころびが生まれて割れてしまう。勝った。胸の中で飛び上がるくらい喜んでいたら衝撃がお腹に入ってきた。と同時に視界内の私の攻撃が相手に当たって轟音が聞こえる。

「痛っ……!?」

何とかよろけつつも立っていられた私。不意打ちの対策を怠っていた。本当に痛い。お腹の中身出さなかったの褒めてほしい。相手の方を見ると立ち上がろうとするもばたっと倒れる。


「そこまで!」


綺麗には勝てなかったけど何とか選考会の一番上に立つことができた。姉様、後で褒めてくれるかな。

相手の方へ歩いていって無事を確認しつつ、意識はあるみたいだったので手を差し伸べて立たせてあげる。

「……貴女、強いのね」

「あなたこそ。結構痛かったよ」

「お互いさまね……。まさかあんな威力の魔法が飛んでくるなんて思わなかった」

「ふふっ」

にやっと笑いながら彼女は笑いかけてくれる。いい友達になれそう。

軽く抱き合ってから観客に向けて礼をする。今までで一番大きい歓声が聞こえる中退場していく。

「……この競技っていちいち服がびっしょり濡れるの、ちょっと嫌かも」

本番の時はもうちょっと考えなきゃ。


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