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決勝へ

「結局この子達ががきれいに残ったわね」

数回戦を重ねて選手数が絞り込まれてきた。残ったのはロベリアが予想していた通りのメンバー。ここからがレイにとっての本番といったところだろうか。

「応援にも気合いが入りますね!」

「ええ!」

ノアと二人で応援のため気合を入れなおす。

「……ていうかミア、次の競技あるから決勝みられないんじゃ」

「言わぬが花ですわよ」

「でも教えておかないと……」

「どうせレイが勝ちますし後で連行すればいいんですわよ」

なんかコソコソ二人で話している。二人も真面目に応援してほしい。まったく。

「ちょっと!レイの応援するわよ!」

「はいはい、今行きますわ」

「ちょっと気合の入りようがすごすぎかも……」

ぶつぶつ言っているエイリーンを席に座らせるとちょうどいいタイミングでレイの試合が始まるアナウンスがされた。

今回の相手はちょっと強そうだと思っていた子だ。唯一の男子生徒だから目立っていた。

「彼ちょっと目立ってるのね。有名な人なの?」

「んー……特に有名ではないですわよ?普通の貴族の子ですわね」

「ふぅん」

ちょうどレイとその相手の子が定位置に立つ。相手、結構体格がいい。別にこの競技において体格はあまり関係ないのは当然なんだけど普段あんまり異性を見ないからちょっと新鮮というかなんというか。

始めの合図とともに二人とも動き出した。この競技場、予選の戦いではもったいないくらい広いので二人ともまずは距離を取っている。もちろんただ距離を取るだけじゃなく牽制で魔法を何発か撃ち合っている。狙いはおおよそ正確で当たりはするものの弾き合っている。

「さっきと違って速攻で勝負つけないのね」

「相手がそれなりに強いってわかってるし警戒したのかしらねぇ」

カウンター警戒ってやつか。大体50~70mくらいの距離を取りつつ魔法の打ち合い。互いに移動しながらなのによくあんなに当たるものだ。

「そろそろですわね……」

ロベリアがそう呟いたと思ったらレイがいきなり進路を90度変更して相手へ突っ込んでいった。相手の動きを制限するため水の塊が進路を妨害するように飛んでいった。相手も勝負を決めに来たことが分かったのかその場に止まって迎撃する腹を固めたようだ。

「レイ頑張れ!そのまま行っちゃえ!」

「ちょっとミア立ちあがらないの」

「あ、ごめんごめん」

さっきみたいに滑り込んで一撃で決めるかっこいいところを見られると思ったらついはしゃいでしまった。

レイは急激に距離を詰めながら姿勢を低くしている。相手の選手も何をしてくるか察しているようで対策は万全みたい。レイならどんな奴の防御だって抜けるはず、頑張れ。見ているこっちの方が緊張して来た。攻撃が始まってたった数秒しか経っていないのにちょっと握った手が湿ってきている。

互いの距離が10mまで詰まってきた。ついに決まる、と思ったらレイが魔法を発動した。

「レイ?早くない……?」

「大丈夫。レイなら絶対勝つもん」

とは言ったもののレイの発動速度ならもっと近くても余裕で間に合うはず。わざわざタイミングをずらして相手に守らせるようにしたのはなんでだろう。相手も当然魔法を発動して下側に厚く防御を敷いている。

しかし、私達が想像していた結末とは全く違っていた。彼女は魔法を地面に叩きつけた。さっきまでの水の塊ではなく強い風を起こしたみたい。激しい土埃が舞うと同時に彼女は思いっきりジャンプして飛び上がった。風のおかげでどんどん飛び上がって、驚いている彼の頭上にレイが到着した。一瞬のことだったけどその一瞬で勝負は決まった。


頭上からの水の塊で膝を屈した彼の負け、勝負あり。そのままきれいに着地したレイが彼に手を貸す。戦いから生まれる友情みたいなものだろうか。

「すごいわね、レイ」

「彼女の才能と度胸があってこそできるものですわね」

「でしょうでしょう。レイ、本当にすごいでしょ!」

思わず興奮して二人に詰め寄るような形になってしまった。

「でもあの服で飛び上がって一瞬とは言え真っ逆さまになるなんて、ちょっと下着が見えないか心配になっちゃうわね……」

「……ミア、試合中そんなこと考えてたの?」

「ち、違うわよ!今ふと思っただけ!」

苦しい言い訳にエイリーンもロベリアもノアですらちょっとジト目でこっちを見てくる。

「ちょっとどうかと思いますわよ」

「ほら、妹が恥ずかしい思いするとかわいそうじゃない!だから……」

「今の貴女の醜態の方が恥ずかしいですわよ」

「ぐっ……」

何も言い返せない。

「ちゃんと露出対策はさせてますから安心しなさいな」

「ならいいけど……」

こんな姿レイにはちょっと見せられない。


さて、レイの試合が終わって件のレイと互角そうな子の試合が始まっていた。

「流石にさっきまでの試合と違ってすぐには終わらなそうですわね」

「どれくらい手の内を晒してくれるのかしらね」

試合が始まるといきなり両者急加速で迫っていく。いきなり二人とも勝負を付けに行っている。

「うっそ……」

しかし、一回目の接近では両者撃ち合うものの互いに弾き合う。距離が離れたところで二回目。これも弾き合う。段々ベイブレード見ている気分になってきた。派手な分観客も盛り上がっているみたい。

もう十回くらいは撃ち合っただろうか。結構消耗が激しいみたいで相手の選手は少し息が上がっている。

「次かしらね」

二人とも構えて同時に距離を詰める。多分相手の子はこれが限界だ。勝負を決めに来るだろう。二人の距離が20mを切った時、注目していた子が魔法を発動させた。さっきのレイの試合と同じように少し早いタイミングでの発動。

「まさかレイと同じことやる気?」

「そんなことは……」

相手の子もそれに合わせて魔法を発動。後ろ以外の方向を守るようだ。どこに来るかわからないし最善に近そう。

そして10mを切ったところで発射。それは今までと同じ水の塊。しかし、魔法としての強度が違っていた。少し前から溜めたおかげで相手の防御をやすやすと貫通した。


驚いたことに正面から正々堂々貫いた。てっきりレイと同じようなことをするのかと思っていた。

そして、彼女は勝負がついて相手の子を起こした後変わらず綺麗な所作で一礼をして去っていく。これでレイと勝負することが決まった。

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