レベルの差
「あ、ミア!レイの出番来たわよ!」
三組目の選手が入場したところでエイリーンが教えてくれる。レイが入場してくる。制服が他の生徒より似合っている。
「流石レイ、ほかの生徒より似合ってる」
「それは同意するけど……急に生き生きしてるわね」
ちょっと引かれている気がするがまぁいいだろう。
「レイはどんな戦いを見せてくれるのかしらね」
「そろそろ毛色の違う戦いが見てみたいわね」
私に対しての引きは置いておいて、みんなレイがどんな風に戦うのかは気になっているみたい。対戦相手は……見たことないけどまぁそれなりに自信がありそうだ。
二人とも定位置に付き、始めの合図が放たれる。先に魔法を発動したのは相手だ。水の塊がレイに向かって飛んでいく。さっきまでだったらこの後の展開はこの魔法を防ぐはず。だが私達の期待通りレイは既にそこにいなかった。
「勝った」
モニター越しに移ったレイの口元は笑んでいて、何かをつぶやいたみたいに見える。レイは加速をして相手の横に回っていた。驚く顔の相手、流石にエントリーするだけあってすぐに身を守るために魔法を発動する。ブレーキをかけたレイはそのまま魔法を発動した。しかも三連射。彼女の法力量やテクニックだったら一発でも十分だろうにすごい念の入れようだ。
結果、儚く相手の守備は砕け散って顔面とお腹にそこそこ痛い威力の水の塊が当たった。
あまりにも一瞬の出来事だったので少し遅れて歓声が上がる。レイの圧倒的勝利だった。
「すっご……」
「レイ……強いわね」
「このくらいで驚いてたらいくつ心臓があっても持ちませんわよ?」
ロベリアは事前に練習に付き合ってたっぽいけどそのおかげか謎に自信満々だ。
「あの子昔からセンスいいから強いんだろうなとは思ってたけど……」
彼女の戦っているところは実はほとんど見たことがない。なんでもできるよくできた妹を持ったものだ。
「あれくらいパッと終わると時間調整が大変そう」
「早く終わる分にはいいんじゃないんですの?」
既にレイは退場して次の試合の準備が進められている。
「これ、レイに勝てる子いるのかしら」
「数人はいい勝負できそうな相手がいますわよ」
手元に小さいカンペを忍ばせたロベリアが教えてくれる。ちらっと見ると結構事細かに書いてあるみたい。
「結構実力にも上から下まであるのね……」
さっきまで見てた長い時間の試合をする生徒は結構いい感じに見えたけどレイと比べたら雲泥の差がある。この学院でレイと互角に戦える人、むしろ見てみたい。
「そりゃあここくらい大きくなれば当然ありますわよ」
「というかミア、下なんて見てる暇ないわよ?私たちみんなで選手に選ばれに行くんだから!」
「み、見てないわよ。ただレイと互角に戦える人を見てみたいなぁって思っただけよ」
「それは確かに見てみたいけど……」
「皆さん、次の試合始まりましたよ?」
ノアがタイミングよく話の切れ目を提供してくれた。席に戻って試合を見るとさっきのレイの戦いとは一転また最初みたいなターン制の戦いが始まった。
「……レイと互角くらいの人ってそんな少ないの?」
数試合続けて見たけれどターン制の戦いが続いていた。
「多くないですわ。流石にあのレベルはトップクラスですもの、数人と言ったところかしらね」
「早く見たいわね……」
とつぶやきながらモニターを見ているとレイとはちょっと違った、キッチリした美しいと形容するべき着こなしをした子が現れる。
「何あの子……雰囲気かっこいいわね」
「あ、あの子がレイと互角じゃないかって子ですわよ」
「へぇ……」
彼女が定位置につく。準備ができたところで初めの合図がかかる。ちょっと身構えつつ彼女を見つめる。だけど初手で見失った。
「え……」
少し探したらあっという間に相手の選手に詰め寄っていた。レイより早いかもしれない。しかも相手の子が防御魔法を展開しきる前に一発の魔法で仕留めてしまった。
レイの時と同じように少し間を開けて歓声が響く。レイの時より早く試合が終わってしまった。
「本当に強っ……」
「あれは確かにレイの相手にふさわしいわね」
キッチリと一礼して帰っていく彼女。普通にかっこいい。
「やっぱり事前調査した通り強いですわね」
ロベリアは特に狼狽することもなく淡々と何かを考えているみたい。
「レイと対照的でキッチリかっこいい系でしたね」
「レイは可愛い華やか系だものね……対面で試合したら映えるでしょうねぇ」
もちろん妹の方が可愛いし勝つに決まっているのだけれど。
「この子よりも目算で強そうな子はいるの?ロベリア」
「んー……同じくらいの子はいなさそうですわ」
「なるほど」
となると決勝はこの二人だろうか。
結局その後、一回戦を全部見てみたけれどあの子と同レベルで強そうな子はいなかった。二、三人くらい戦えそうな子がいたからレイがその子と当たって万が一落とすことの内容にしっかり応援しないと。
「予想通りですわね」
「予想?」
「相手選手の強さですわ。事前に話していた範疇の強さでしたし、勝てると踏んでいますわよ」
「まぁ、レイなら勝てると思うわよ。私の妹だもの」
「はいはい」
エイリーンはちょっと呆れながら適当な相槌を返してきてくれた。