マギアンド
「ミア様。マギガントに使用する魔銃の検査の時間になりました。代わりに行ってまいりますのでお借りしてもいいですか?」
次の競技まで一息ついていたらエイリーンの使用人が聞きに来た。
「あ、私行かなくてもいいんですか?」
「はい。ごゆるりとご観戦なさっていてください。こちらで済ませておきますので」
「じゃあ……お願いします」
エイリーンの使用人だし信頼は置ける。どれくらい時間がかかるかもわからないしこの際頼んでしまってもいいだろう。そう思って壁際に置いてあった魔銃を渡す。
「これ、お願いします」
「かしこまりました」
ちょっと自分で行けばよかったかもと思いつつお茶を一口。
「あら、そう言えば検査の時間だったわね」
「レイの競技見たいし頼んじゃったわ」
ちょっとだけおどけたように言ってみる。
「私の使用人だしいいけど、本当はちゃんと自分で行くのよ?細工されないとも限らないんだから」
普通にスルーされた。そして正論で返されてしまった。
「そんなに細工される、なんてことあるの?」
「けっこうあるわよ。検査人を大金で買収して……なんて聞くこともあるわ」
「えぇ……」
割と本気トーンで言うのでちょっと引いてしまった。そこまでして……。
「ミアはまだあんまり注目されてないけど、これから間違いなく注目されるんだからそう言うのには気を付けるのよ」
「私が?まさか」
「私達と一緒にいるってことは嫌でもそうなるし、これからいっぱい活躍してもらうんだからね?覚悟しておきなさいよ、ミア」
「わ、わかったわ」
レイの競技が始まる前に頭の痛くなることを教えてもらってしまった。ちょっとこれからのことを考えていたらレイの競技が始まったみたいだ。と言っても、最初に軽い説明があるみたいだが。大きく分けて三種類の魔法を使えるらしい。走攻守、それぞれ何個かあるようだ。基本的なものが多くて、怪我の発生が少ないように攻撃用は風とか水とかそう言うタイプのしか使えないらしい。守りは対魔法用のみ、移動に関しても簡単な加速のみらしい。簡単と言われてはいるけど組み合わせて使うと面白い試合が見られそう。
「レイはいつ出てくるかな」
「慌てないの。必ず出てくるから」
ちょっと体が前のめりになって気が急いてしまう。早速一組目の競技者が入ってくる。彼女はいなかったけど三か所の会場で戦うみたいだ。
「はじめ!」
試合が始まると三か所同時に魔法が煌めいた。皆発動が早い。
「うーん……微妙ね」
「ですわね。動きが少ないですわ」
目下の競技場では互いに魔法を撃ち合っている。守りの魔法で相手の攻撃を防ぎながら魔法を撃つ。ターン制勝負のようになっていて歩く程度の移動しかしていない。
「……結構戦闘というよりはどっちが先に集中力を切らすか、みたいな競技ね」
「似たような競技、さっきやりましたね」
ノアも思った競技と違うと思っているらしい。
「ほんとはこんな競技じゃないのよ?」
「そうなの?」
「実際の競技はもっと動きがあって面白いのよ」
「ただ、選考会レベルだとこうなるのも仕方ないですわね……」
「だったら早くその競技見てみたいわね」
移動用の魔法があるんだしそりゃ動きがあるのは当然だ。早くハイレベルの戦いを見てみたい。というかレイの戦いが早く見たい。
「ミア、ちょっと不満げね」
そう言って私のほっぺたをつついてくるエイリーン。
「別に不満ってわけじゃないけど……」
「レイが見られなくて不満なんでしょ。かわいい」
「そ、そんなに不満そうに見えてる……?」
かわいいって言われて思わず驚いてしまった。
「本当にミアはレイが大好きねぇ」
三人とも微笑ましいといった感じでニヤニヤされている。ちょっと恥ずかしい。