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緊張の応援

「二人とも疲れてるだろうに……後でいっぱい労わないと」

「まだ終わってないわよ?最後の一周があるんだから」

エイリーンの言う通り、まだ競技は終わっていない。まだ安心するには早すぎる。

「でも見てただけなのに汗ばんじゃったわね」

「私もです、姉様。緊張しましたね……」

「二人とももう楽しみ方が分かってきたみたいね」

思えば今まで生きてきた中で誰かの応援をこんなにまじめにしたことってないかもしれない。私の周りに人が少なかったのもあるけれど、なんとなくスポーツとか頑張る人を冷めた目で見ていたのかもしれない。今思うともったいない。

「友達の応援って結構、面白いのね」

「これからもっと増えていくわよ」

そう言ってティーカップを傾ける皇女。そう言えばちょっとのどが渇いた。

「……学生生活ってこんなに面白かったのね」

「姉様?」

「ううん、何でもないの」

ここに来る前の私に話したら驚かれそうな言葉がつい口から出てしまった。人って案外簡単に変わるものだ。朱に交われば何とやらってやつ。


そして、しばらくしての三戦目。多分二人とも少なからず疲労しているだけれど頑張ってほしい。

「あら」

「おや」

「あ」

三人そろって変な声を出してしまった。ロベリアとノアがいるのは当然として、あの子がいる。一番最初にパーフェクトを出した貴族の子だ。何やらロベリア達に突っかかっているみたい?

「大丈夫かしら、あれ」

「いつものことだし……大丈夫でしょ。ロベリアがあんな小物の挑発に乗るとも思えないし」

あの貴族の子、勝手にライバル視して勝負を吹っかけてくるタイプだしロベリアも大変そうだ。

「一方的に何か言ってるように見えるわね」

ここからでは何をしゃべっているのかはわからないけど観客席は何やらざわざわしているみたい。

「宣戦布告でもしてるのかしら。二人とも得点は変わらないでしょうし」

二人ともここまでパーフェクトで来ている。というか、今出ている四人の中から代表が選ばれるのは確実だろう。彼女のことだから手袋でも投げに来たのだろうか。

「なんか観客席見る限りそうみたいですね……姉様」

「ほんとだ、盛り上がってるわね……」

やる競技自体は変わらないけどこういう見せ場を作るのも貴族の義務なのだろうか。私も一応貴族だけどこういうのはからっきしだ。

そして、競技が始まった。事実上の決定戦と言っていいだろう。

「ロベリアはどうあがいても代表になりそうだし、ノア頑張ってほしいわね」

「その発言だけ聞いたらロベリア怒りそうね」

「ですね……」

何気なくつぶやいたことで二人がちょっとジト目でこちらを見てくる。何か失言をしてしまったらしい。

「もちろんロベリアを応援もしてるわよ」

「それ以上言うと墓穴になるわよ」

どうして……。妹も私のことをかばってくれない。

競技に目を戻すと、四人とも今のところパーフェクトだ。疲れも出ているような感じもないし後半からが勝負だろう。

「ずっと試合見てて思うけどあんなに素早く魔法を展開できるのが本当にうらやましいわね……」

せめて授業で苦労しないくらいの才能が私にもあれば、と思わずにはいられない。

「あれに関しては才能もあると思うわ。でもミアだって最近少しずつできるようになってきたじゃない」

「それはそうなんだけど……こう、もっと目立つような強みが欲しいわねって」

「……はぁ」

突然のため息。

「えっ、何よ……」

「十分に強いのにそんなこと言うなんて、ちゃんと自分の強みを理解してほしいと思っただけよ……」

やれやれといった感じで首を振るエイリーン。

「もしかしたらミアに必要なのはもっと自信を付けさせることなのかもしれないわね」

隣でうんうんと頷くレイ。私ってそんなに自信なさげに見えてるのか。

「みんなで姉様を褒めて自信を持たせるって言うのはどうでしょうか」

「それじゃ効果薄そうね……いいわ、貴女と戦う時に存分に思い知らせてあげる」

「え?」

たまに覗く超好戦的なエイリーンのにやり顔。獲物を見定めたときの狩人の目だ。

「直接戦えるのが楽しみだわ~」

「ちょ、ちょっと」

「ほらほら姉様応援に集中しますよ」

どういう意味なのか聞こうとしたらレイが腕を絡ませてロベリア達の競技の方を見るように促す。謎の連携が働いてるみたい。一方その競技の方は状況変わらず進んでいて四人ともパーフェクトのペースだ。

「これって四人とも全部落としたら誰が代表になるのかしらね」

「二人以外の二戦目の成績がわからないけど仮にロベリアと同じならあとは教師が勝てそうな子を選ぶんじゃないかしらね。家柄で選ぶなんて愚かなことはしてほしくないけど」

「なるほどね」

ちょっと貴族の嫌な部分を聞いてしまった。確かにそう言う配慮があってもおかしくはない。そして最終局面、四つの的が飛んでいる。皆危なげなく破壊していくのを見ているのはちょっと気持ちいい。

「あら?」

最後の4枚が発射されたところでいつもなら発射直後に破壊するロベリアが何もしていない。と、思ったら隣の貴族の子と同じタイミングで的が集まったところで一斉に破壊した。

「えげつないわね」

今までの方法と違ってあえて彼女にかぶせて同じ方法でやったのだろう。しかも制御されているとはいえちょっと威力が強い。

「ロベリア……流石ねぇ」

結果的に四人ともパーフェクトで終わった。会場からは惜しみない拍手が注がれているけれど、視線を集めたのはほぼロベリアだろう。

この後の試合はほとんど消化試合みたいなものでちょっと出てる子がかわいそうだった。


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