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競技中のティーブレイク

さて、二人の素晴らしい競技一回目を見終わったところでまた二周目が来るまでゆっくりとティータイムだ。

「簡単にお菓子も用意してあるから是非食べてみてちょうだい」

パンパンと手を叩いて従者を呼んで、机の上にお菓子が並べられていく。まるでアフタヌーンティーみたいだけど……量が明らかに多い。

「……多くない?」

「……お祝いですか?」

お祝いには早くない?まだ一回しか終わってないのに。

「多い?とりあえず食べたいものがないと悲しいしいっぱい用意したわ!いっぱい食べても大丈夫!」

「今日試合あるのにそんなにいっぱい食べるわけないでしょ……嬉しいけど」

正直どのお菓子もおいしそうだしいっぱい食べたくなる気持ちはある。あるけれど私も協議があるし食べすぎるわけにもいかない。あと太りたくもないし……。

「ん……!姉様!このクッキー美味しいですよ!」

そんなことを考えていたらお目目をキラキラさせた妹がクッキーを食べさせてくれようとしていた。これは口を開けろ、ということだろうか。

「姉様。あーん」

「……あ、あーん」

エイリーンにみられてるのにこれはちょっと恥ずかしいかも。クッキーはバターの風味が効いているしジャムが程よく主張していてとてもおいしい。この位のしっとりクッキーは結構好みかもしれない。

「どうです?姉様」

「うん。とっても美味しいわ」

「やっぱりあの二人が出るまでは貴女達見てた方が面白いわね」

他の競技を行っている生徒には絶対に聞かせられないことを言うこの皇女。ここがVIPルームで本当に良かった。

「エイリーン……大丈夫だろうけど外でそんなこと言わないでよ……?」

「それは大丈夫よ!場所は選ぶから」

ウィンクする彼女。まぁ……皇女という身分だろうし大丈夫だろうけど。と、しっとりクッキーをもぐもぐしながら考える。彼女に注意しつつも私だってあの二人の競技までお菓子を食べて過ごしているつもりだからあんまり人のことを言えたものじゃないんだけど。

「お茶と合うわね……このスコーンみたいなの」

ほんのりリンゴの風味がするスコーン。上品な甘さでとてもおいしい。はじめてこんないいもの食べたかも。

「当然よ!最高品質のものを取り寄せて作らせたもの」

「あの二人にも是非食べてもらいたいですね、姉様。これ、本当においしいです」

「セイラ達にも食べさせてあげたいわ」

彼女なら私よりいい反応をしてくれそう。いっぱいあるしちょっと持って帰っても怒られないかも。

「そうねぇ……最近ロベリアも貴女達の部屋に遊びに行ったらしいし私もお土産もって行こうかしら」

「お土産……部屋に入りきるんでしょうね」

彼女のことだからお土産、と言いつつ部屋に入りきらないくらいいっぱいのお菓子を持ってきかねないし。彼女の皇女としての器の大きさを表す振舞いとしてそうなるのは理解できるけど……そろそろ友達として健全な量というのを分かってほしいかもしれない。

「失礼ね!適量っていうものをわかってるわ!」

「ならいいけど」

「安心して!いっぱい食べても太りにくいお菓子にするから」

「やっぱりいっぱい持ってくる気じゃない……」

「まぁまぁ、姉様もエイリーンさんも。食べて落ち着きましょう?」

すかさずレイが間に入ってお菓子を食べさせてくれる。口の中にまた優しい甘さが広がる。なんだか餌付けされてるみたい。

「というか二人とも戻ってこないのね。集中切れちゃうから仕方ないけど……」

流石に競技中にお菓子を食べに来るほど暇ではなさそうだし。

「いくら近いと言ってもあんまり暇じゃないしね」

「私普通に休憩しに来ようかと思っちゃったわ」

部活の試合とかそう言うところを考えていた節もあったので豪華なベンチに帰ってこようかと思っていた。

「もう……!ちゃんと試合に集中しなさい」

窘められてしまった。


そんな戯れをしていたらいつの間にか二人の二周目の競技が始まろうとしていた。

「あら、また二人同じタイミングで勝負なのね」

ロベリアとノア以外の二人は面子が変わっていた。二人ともさっきの競技を見ていたのか緊張の面持ちだ。

「多分盛り上がるし知り合いだから一緒にしたんじゃないかしら」

「そんな恣意的な事があるのね」

てっきりランダムで決まっているのかと思った。

「順位を付けると言っても直接対決で勝敗を決めるわけじゃないし互いにプレッシャーがかかった状態でもどれくらい力を出せるのかとか見ているんじゃないかしら?」

語尾に知らんけどが付きそうな解説をしてくれるエイリーン。

「どっちかって言うと彼女たちの方がプレッシャー掛かってそうだけど……」

変な気遣いをしていたら競技が始まった。最初の方は見事に四人ともパーフェクトで順調だ。疲れを見せる選手はいない。枚数が増えてきても破壊の時間差はあれど丁寧にこなしていく。

「……結構競ってて見てて面白いかも」

「あの子達も選手候補かもしれないわね」

世界は思ったより広いみたいだ。私の視野が狭いだけかもしれないけど、ロベリアとノアについていける人間がこんなにいるとは思わなかった。

「あ、一枚落としたわね」

意外なことに最初にミスをしてしまったのはノアだった。

「頑張ってノア……」

何とかその後の的はしっかりと落ち着いて処理していたみたいで一安心。そのまま競技は続いて終盤戦。

「みんな強いわね。あんまり油断出来なそう」

最後の関門の四つの的が一緒に出てくる。ロベリアは危なげなく処理する。ノアも落ち着いて一枚ずつ破壊する。残りの二人もギリギリ破壊しきったみたいだ。

そして二回目。みんなが固唾をのんで見守る中、的が発射される。また時間差が付きながら破壊音が聞こえる。そして、少し経ってからいくつかの的が落ちる様子も見える。

「二人とも流石、ね……」

見ているだけなのにほっと安心した。結果、ロベリアはパーフェクト。ノアはあの一枚だけ。残りの二人は最後の的をいくつか撃ち漏らしてしまった。彼女たちは大分疲れているみたいでここから見ても肩で息をしている。

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