気合いの入る夜
「私は順調です。姉様に恥ずかしいところは見せられないので!」
「私もいつも通りですわね……もちろん貴女達と戦うことがあれば負けませんわよ?」
急に話題が変わったけれど二人ともついてきてくれた。
「姉様とロベリアさんと1対1で戦う時は全力で行かせていただきますね!」
「……手ごわそうですわね」
正直私より強いと思ってたから全力で来るなら私も全力で来ないと勝てないだろうなぁ。
「ちゃんとフラガエストの準備は出来ていますの?そこらへんの三人組にはまず勝てるでしょうけど……」
「エイリーンの鍛錬は結構きついけど……自分がしっかりと確実に成長できている感じはするわ」
「姉様、以前よりさらに強くなりましたよね!戦ってみてわかります!」
本当にあの子はストイックだから妥協をしない。付き合うと少し大変だけどそれはそれで楽しい。部活をしている感じがして気持ちいい。
「あんまり無理しすぎてはいけませんわよ?」
「大丈夫よ。レイもいるし、エイリーンも私の限界は分かってくれてるしね」
「……まぁ、彼女はそう言う目端は利きそうですものね」
私達のチームを引っ張ってくれるリーダー的存在の彼女には感謝してもしきれない。
「手伝えることがあったら言うんですのよ」
「ええ。素直に助けてもらうわ」
「選考会……もう近いのよね」
お茶を飲みながら改めて考えると少し感慨深い。慌ただしく日々が過ぎて行っているけどとても充実している気がする。これが前は味わえなかった青春か。
「姉様?改めて考えることでもあったんですか?」
「うん。ちょっとね」
「絶対に一緒に本戦に行きましょうね!」
「ええ。全力は尽くすわよ」
「……じゃあ、私はここらへんでお暇しましょうか」
「あら、もう帰っちゃうの?ロベリア」
席を立って帰る準備をする彼女。窓の外を見るとそろそろ日も落ちてきている。
「ええ。いい時間でしょう?」
「確かに」
「寮の入り口までお見送りしますね!」
「私も見送るわ」
「私も~!」
いつかみたいに、彼女の従者になったかのように荷物を持って手を引いてあげる。軽くふざけて気分はメイドさんだ。
「行きましょう。お嬢様」
「あら、ありがとう。ちょっと懐かしいわね」
彼女も乗ってくれた。
「じゃあちょっと行ってくるわね、ネイ」
「行ってらっしゃいませ」
「空気が澄んでるわね」
「気持ちいい~!」
外に出ると夜の冷たい綺麗な空気が体に当たってくる。まわりに出歩いている生徒もいない。
「今日は部屋に遊びに来てくれてありがとうね、ロベリア」
「いいんですのよ。私もちょうどいい息抜きになりましたし。貴女こそ今日はしっかりと休めましたの?」
「ええ。いい息抜きになったわ」
最近ゆっくりとお茶を飲みながら話す機会もなかったし。
「だったら良かったですわ。レディ!お待たせ」
「お待ちしておりましたお嬢様」
寮の玄関を開けるとレディシアさんがちょうどよくロベリアを待ってくれていた。
「じゃあ、今日はありがとうねロベリア」
「いいお話をいっぱい聞けましたわ。こちらこそありがとう、三人とも」
「またね!ロベリアさん!」
「またお会いしましょうね~!」
「ええ。次は是非お泊りしに来ますわね。ミアの寝相も気になりますし。それでは」
「ちょっと!?」
最後に爆弾発言を残して馬車に乗っていくロベリア。お泊りはいいけど寝相を見に来るなら少し考えないといけない……!
彼女の馬車が見えなくなったことだし、私達も部屋に戻ることにする。
「お泊り会、楽しみだね」
「寝相を見るのが目的なら開かないわよ……?」
「親睦を深めるためですよ、姉様!」
なんだかいいように言い換えられているだけな気がする。
「それこそ選考会?終わった後にお泊り会して親睦を深めるのはいいんじゃない?」
セイラがそんなことを言ってくる。ちょっと魅力的だ。
「私、最近ネイさんに色々教わってるから招待状書くのは任せてね!」
「賑やかになりそうですね」
間違いない。エイリーンを誘ったら間違いなく寝る時間が遅くなりそう。
「やるにしても選考会が終わったあとね……招待状はセイラに任せるわ」
「任された~!」
ニッコニコで先を歩いていくセイラ。ちゃんとした仕事を彼女に任せるのは初めてかもしれない。私の考えていたよりしっかりと働いてくれてとても助かる。私も彼女の友人としても雇い主としてもふさわしい人間にならないとなぁ、と改めて思う。
ともかくは近々開かれる選考会、頑張らないと。自分のほっぺを軽くたたいて気合いを入れる。