プロローグ
「ここは…?」
私は気が付いたら真っ白な空間に居た。
会社で仕事してたはず…。
「その会社で死んだんですよ。」
「うぇ?」
なんか声がする?
「誰かいるの?」
「亜希さんの目の前に居ますよ。」
「んー?このなんか光ってる、玉…?」
「そうです。僕は神のヴィオ。君の事を気に掛けて見ていたんですが死んでしまったので魂を神界に呼んだんです。」
「神様?私を見ていた?てか、死んだ…?」
「はい。亜希さんは、僕とは違う別の神から寵愛を受けていました。」
「神様の寵愛、ですか…?」
「はい。ですが、その神が罪を犯してしまい、神である称号を剥奪されました。」
「え?」
「そのため、亜希さんが受けるはずだった寵愛は、その神が受けてる罰を一緒に受けるようになってしまいました。」
「え?」
「そのクズ神が自分が受ける罰を亜希さんに肩代わりしてもらうように捕まる前に最後の悪足掻きをしたのだと思われます。」
「そんな…。」
「僕はそれをなんとか変えられないか色々と試行錯誤していました。ですが、不可能でした…。」
「そう……。」
「亜希さんの高校受験失敗もそれが原因です。」
「そうなの?」
「はい、高校受験のタイミングでクズ神が捕まって罰が与えられました。」
「じゃあ、高校受験失敗して両親から見放されたのも、虐待を受けたのも、底辺の高校にやっと入学出来たけど友達が出来なくていじめを受けたのも、大学も3流以下の大学だったのも、会社の面接を100社以上受けたのに全ての会社から罵詈雑言の手紙とともに不合格通知がきたのも、なんとか入れた会社がブラック企業だったのも、そんなブラック企業で働いてて死んだのも、そのクズ神の仕業ですか…?」
「はい…。見守る事しか出来なくてごめんなさい…。」
「いえ、ヴィオ様は謝らなくて良いですよ。」
「え?」
「だって、悪いのは、悪足掻きをしたクズ神なんでしょ?だから、ヴィオ様は悪くないよ。むしろ、私の事護ろうとしてくれてたみたいだし。」
「っ……、怒ってないんですか…?」
「怒ってないよ。あなたにはね。」
「っ、ありがとう…。」
「もう、泣かないでよ。」
「泣いてないです!」
「泣いてるよ、ほら涙流れてるじゃん。」
「光の玉になってるから見えてないでしょ!」
「ふふっ。バレたか。ふふふっ。」
「あ、」
「ん?なーに?」
「いえ、ここに来てはじめて笑ってくれたなって」
「そういえば、そうかも…?」
「はい。亜希さんには笑顔がとても似合います。」
「ありがとう、なんか、照れる…。」
「ふふっ。それで、相談なのですが、」
「はい。」
「違う世界で生活してみませんか?今度は、楽しいことばかりで。」
「違う世界?」
「はい、亜希さんの世界では、『異世界』って言った方が分かりやすいですかね。」
「異世界…。」
「はい。どうですか?」
「どんな世界なんですか?」
「簡単に言えば剣と魔法の世界です。」
「魔法が使えるんですか?」
「はい、使えますよ。リクエストがあれば言ってください。」
「リクエスト……。では、猫にしてください。」
「ね、猫?」
「はい。もう人間社会で生きたくないです。」
「っ、そう、です、か……。分かりました。猫として転生させますね…。」
「お願いします。あと、あまり人が居ないところで目覚めさせてください。」
「わかりました。魔の森と呼ばれてる魔物が沢山居る所に降ろします。」
「え、そんな所ですぐ死んじゃわないですか?」
「はい、大丈夫です。身体丈夫にして魔法も全属性使えるようにします。それと、生活スペースも用意します。」
「え、さすがにそれはやりすぎじゃないですか?」
「いえ、やりすぎではないですよ。僕は亜希さんが楽しく生活出来れば良いなって思ってるから。
次は楽しんでくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」
「向こうに着いたら《ステータス》と《インベントリ》を確認してみてください。」
「分かりました。」
「では、また。」
その言葉を聞いた瞬間に眠くなったように瞼が閉じていった。