99 サルタナ聞け
「テッド。頼みがある」
ポカリ街のギルドにて。緋色の髪の少女スカーレットがそう口にした。まぁサルタナの手配書を見た後での頼みだからな、大凡察しは付くが。
「なんだ?」
「パーティに入って間もない私がこんな事を言ってはいけないのは分かっているが……」
「さっさと言え」
「……私はサルタナを救いたい。その為に力を貸してくれないか」
やっぱりか。予想通りの発言だった為、特に驚く事はなかったが、「バイオレットリーパー」最小の頭脳を持つステラはどうやらそうではないらしい。
「な、何言ってるんですかスカーレットさん」
「……そうだよな。いきなりこんな事言われても、お前たちには関係ない話だよな……。すまない忘れてくれ」
「いやいい。続けろ」
「て、テッドさん!?」
俺の言葉が意外だったのか、ステラは目を丸くして驚いた。鬱陶しいリアクションが癪だったので、取り敢えずステラを鋭く睨みつける。
「な、なぁんでそんな怖い顔するんですかぁ……。ふえぇぇん! ジャスパ~しゃぁ~ん! テッドしゃんが殺人鬼みたいな目で睨んできますうう!」
「はいはい、泣かないの……ぷっ! ふっ……ふふ! ごめん! 最近なんかアンタの泣き顔が凄くツボだわっ! あはははっ!!」
「ひ、酷いです! うわああああん!!」
介抱を求めた相手にさらに泣かされるという意味不明な光景を黙殺し、俺は再びスカーレットの方へと向き直した。
「で、なんだ。どうして奴を救いたい」
「よ、よくこの状況で話を続けようと思えるな……。ま、まぁそれはともかく……。サルタナがあぁなってしまったのは、私たちに原因があると思っている。今はもう同じパーティではないけれど……かつての仲間として、せめて私たちの手でサルタナを捕まえたい。そして、罪を償ってほしい」
「それなら賞金稼ぎ目当ての連中に任せたらどうだ。わざわざ俺たちが動かなくとも結果は同じだぞ」
「賞金稼ぎの連中は一切の容赦がない。もし奴らがサルタナを見つけたら、間違いなく殺しにかかるだろう……。だから──」
「分かった。力を貸そう」
俺の言葉にスカーレットが目を丸くして驚く。その隣にいたリンリンも同様の反応を見せる。
「え……いいの? 本当は思ってないけど、君って実はいい人?」
「あー違うわよリンリン。多分コイツはコイツでなんか目的があんのよ。良心なんて欠片も無いんだからコイツ」
「あぁだよね。そうだと思った」
本人を目の前にして辛辣な会話を繰り広げるジャスパーとリンリン。内容が俺の悪口なのが多少引っ掛かるが、まぁ仲良くなれたようで何よりだ。
「本当にいいのか? 頼んだ私が言うのもなんだが、お前たちに得があるとはとても……」
「問題無い。仲間の頼みだからな」
「て、テッド……。お前は、なんていい奴なんだ! かたじけない、恩に着る!」
バッと頭を下げるスカーレット。どうやら俺に恩義を感じているらしいが、その必要は無い。ジャスパーが先ほど言っていた通り、俺には俺の目的がある。それはこの出鱈目なステータスを持つ者「トリガー」について調べる事だ。魔王軍が襲撃してきたせいで予定が狂ったが、元々俺はサルタナを探し出すつもりだった。とはいえ、トリガーに目覚めたばかりのサルタナがそれほど大きな情報を持っているとは考えにくい為、サルタナには別の形で役に立ってもらおうと考えている。そして、スカーレットたちには、サルタナ確保に至るまでに立ちはだかるであろう邪魔者を排除してもらう。正直言ってしまえば、俺の邪魔をできる敵がそういるとは思えないが、無駄な戦闘は避けるに越したことは無いし、その為の駒は多い方がいい。スカーレットとリンリンの加入によって、よりスムーズな目的達成が期待できるだろう。
「今日はもういいか。また明日な」
俺はそれだけ言い残し、ギルドを出た。
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