97 憎悪
グリーンヴェノムのメンバー
ニナ
グリーンヴェノムのリーダー。サルタナの弟。黒髪美少年。
アイナ
赤髪ツインテピアス。言葉遣いが悪い。
ナーガ
上半身が蛇の鱗のようなタトゥーで埋め尽くされた男。テンションが変。
メル
焦茶色ミディアムショート。小動物系。
「ニナ、テメェ……」
猛獣のような凶暴な目つきでニナを睨みつけるサルタナ。黒紫のオーラを一度引っ込め、サルタナはニナから距離を取った。
「え、何。サルタナってアンタの兄貴なの?」
メルの回復魔法で傷が癒えたアイナがそう言った。ニナは小さく笑う。
「うんそうだよ。言ってなかったっけ?」
「聞いてねぇし。つかサルタナの匂いをアンタが感じ取れたのはそういう事だったのね。納得したわ」
世間話でもするようなテンションで会話する2人。
「久しぶりだなニナ。なんでお前が冒険者……賞金稼ぎなんてやってんだ?」
獰猛な笑みを浮かべ、そう口にするサルタナ。
「色々あってね。僕もあの家を追い出されちゃってさ。兄さんと一緒だね」
「は。俺とテメェが一緒だと……」
「うん。だってそうでしょ? 兄さんだって子供の頃ドラム街に捨てられちゃったんだしさ。まぁ兄さんが捨てられた理由は素行や出来の悪さが原因であって僕とは違うけどね」
貼り付けたような笑みを浮かべながらそう口にするニナ。それを聞いたサルタナの顔から感情が消えた。
「……違う。俺は不良品じゃない、俺は不良品じゃない。だから捨てないでくれ親父……。今の俺はあの『レッドホーク』のリーダーなんだ。今じゃニナより俺の方がよっぽど凄いんだぜ……。えへ、えへへへへ」
「なんだコイツ。ぶっ壊れちまったのか?」
ぶつぶつと怨念のような言葉を吐き続けるサルタナを見て、アイナが引き気味にそう言った。そして突如、サルタナの表情が一変する。不気味なほど見開いたその目は、ニナだけを見据えていた。
「……テメェのせいだニナ」
「僕のせい?」
「そうだ。テメェさえ生まれてこなきゃ、俺が親父に捨てられる事はなかった。そうすりゃドラム街で『ブラックファング』のクソ共にあんな事されずに済んだんだ……。毎日が拷問だった……。アイツらは悪魔だ……だから殺した」
「あぁなるほど、それで『ブラックファング』を殺したんだ。でも無事復讐できたならよかったじゃないか」
「いい訳ねぇだろうが!!」
怒りを露わにして叫ぶサルタナの肌が、徐々に薄黒く変色していく。
「『ブラックファング』と同じくらい、俺はテメェが憎かった……。ニナ、俺がこうなっちまったのは全部テメェが生まれてきたからなんだ。ぶっ殺す、殺す殺す殺すころすころすころスころスこロスコロスロスロスロス……」
サルタナの肌の色がどんどん黒く変色していく。歯は獣の牙のように鋭くなっていき、ビキビキと筋肉が膨れ上がっていく。
「キシャシャ! なんだありャ! サルタナ君どうしちまったのさァ!」
「ひ、ひええっ! なんか滅茶苦茶バキバキいってるぅ!?」
サルタナの突然変異に興奮するナーガと怯えるメル。そして、ニナはくすくすと笑った。
「ぷ。いいね。やっぱり兄さんには『レッドホーク』のリーダーなんて肩書きは似合わない。そうやってトラウマやコンプレックス丸出しで醜く暴れてるのが一番兄さんらしいよ」
「ガギャ……。黙レクソガキッ! くっソ! 頭が割レるよウ……だッ……あ゛ア゛あ゛ア゛あ゛ア゛あ゛ア゛あ゛ア゛あ゛ア゛あ゛ア゛ッ!!」
直後。サルタナの全身から膨大な黒紫のオーラが噴出される。邪気のようなオーラは徐々に何かを形作っていき、やがて黒紫の巨人の姿へと変わった。
「ウオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!」
獣の咆哮のように叫ぶサルタナ。それと同時に黒紫の巨人が素早く地面に拳を叩き込んだ。
「キシャキシャッ!! なァんて威力だァ!」
爆発のような衝撃音と共に、大きな地震と地割れが発生する。そして、割れた大地から吹き出た風が粉塵を巻き起こした。
「……ぷ。くすくす。あんなでかい口叩いた癖に逃げちゃった……」
粉塵の奥にサルタナの姿は既になくなっていた。
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