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94 潜伏

 

「ほっ。あらよ」


 誰にも観測できぬ場所を飛び続ける魔王城。その魔王城の中にある調理室で、人型の黒い影が陽気に鉄鍋を振っていた。


「何をしておる。シャドウ」


 その様子を後ろから眺めていた和服の少女、神楽が老人語混じりの口調で黒い影に話しかける。シャドウと呼ばれた黒い影は鉄鍋の火を止めて、神楽の方へと振り返る。


「見ての通りだよ神楽ちゃん。料理だよ、料理。しばらくは七幻魔もオフだろうし、これくらいしかやる事がなくてさぁ」


「料理? わらわにはとてもそうは見えないのじゃが」


 神楽はシャドウが振っていた鉄鍋へと視線を向ける。シャドウが鉄鍋で調理していたのは、黒のレースのパンティだった。


「気になるかい? これが一体、誰のパンティなのかが」


「いやそれ以前の問題じゃ。お主がどうしてパンティを加熱しているのかがわらわには理解ができない」


「暇だから魔王軍を辞めたジャスパーちゃんのパンティでも食べようと思ってさ。ほら、他のパンティだと加熱したら焦げが目立つじゃない? けど黒のレースなら元々黒いからオールオッケーって訳さ」


 神楽の根本的な疑問を一切解決できない返答をすると、シャドウは加熱した黒のレースを皿に盛りつけると、テーブルに置いてあったフォークとナイフで黒のレースを切り分けようとするが……


「あれ? うまく切れないな……」


「じゃろうな」


「まぁいっか。パンティはやっぱり丸かじりに限るね」


 生の野菜や果物にでもかぶりつくかのようなテンションで、シャドウは黒のレースをフォークで突き刺し、口(全身黒いので実際口なのかは不明だが恐らく口)に運ぶシャドウ。


「おっふぉっ! あちいぃっ!!」


 口に運んだ黒のレースが熱すぎたのか、床に転がりじたばたと暴れまわるシャドウ。


「相変わらずスピード以外は壊滅的じゃのう、お主は。体だけじゃなく舌も弱いのか。猫舌にもほどがある」


「し、死ぬ!? 僕は死ぬのかい!? ぬおおおあああああっ!!」


「焼きパンティを食べて死ぬ者など、後にも先にもお主以外現れんじゃろうな」


「それは……! 光栄だね……」


 そう言い残し、シャドウは床に倒れる真似をする。いい加減つまらない茶番に付き合いきれなくなったのか、神楽は前置き無しで本題へと入る事にした。


「テッドのクローンのほうは、もうよいのか?」


「彼なら大丈夫でしょ。ほっといてもどんどん強くなるし。それに彼の強みは──」


「そっちではない。2号の方じゃ」


 シャドウの言葉を遮り、食い気味にそう口にする神楽。


「あぁ2号ね。放置でオッケーだよ。引き続き監視だけ付けといてくれれば」


「いいのか? 1号……『バイオレットリーパー』のテッドを殺すとか言っておったじゃろ。2号の奴」


「ムリムリ。2号じゃテッドは殺せないよ」


 きっぱりとそう断言するシャドウ。


「彼はね、突然変異種なんだよ。オリジナルを遥かに上回る力を持つクローンなんて、彼以外には存在しない。つまり、ただのクローンである2号じゃどう足掻いても彼には勝てないんだよ」


「……どうかのう。2号の奴、少し前に隠し部屋を漁っておったようじゃぞ。少なくとも、転送屋よりは遥かに強くなっているとみて、間違いなさそうじゃぞ」


「そうなんだ。まぁ、彼のいい踏み台にはなりそうだね。じゃあ2号は今、テッドを殺せるくらい強くなる為に一人で頑張ってるって事?」


「いや。今はとある冒険者パーティに所属しておるらしい。自分でパーティを立ち上げたのか、既に存在しておるパーティに加入したのかは知らぬがな」


「へー2号が? あんな凶暴なのに他の人とやってけんのかなぁ」


「あやつは他人に成り代るのが得意じゃからのう。必要とあらば、その凶暴さを抑えつける事も可能なんじゃろ」


「あぁ。お得意の変身能力ね。その辺だけはテッドよりも2号の方が上かもね。で、今2号が所属してるのってなんてパーティなの?」


 シャドウの問いに対し、神楽は顎に指を当てながら答えた。


「確か『グリーンヴェノム』……じゃったかのう」


「……へぇ。ふふっ」


 神楽の言葉を聞き、シャドウは何故か小さく笑った。



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