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92 手配書


 「ホワイトパール」と海で別れ、俺たちはポカリ街のギルドへと帰還した。


「なぁんだ、さっきのは誤解だったんですね。てっきり本当にアルトさんとデキたのかと思ってましたよ」


「誤解に決まってるだろ、馬鹿か」


「確かにそうね。……ぷっ。私たちが悪かったわ」


 笑いを堪えきれていないジャスパー。先ほどの騒ぎ……アホのステラと酒カス共、そしてアルトへの異常な忠誠心のせいで頭がダメになった「ホワイトパール」のメイドたちは本当に勘違いしていただろうが、ジャスパーの奴は絶対にわざとだろうな。この女は俺の不幸が何よりも好物だからな。


「なんていうか、本当は思ってないけど……君も大変だね、テッド」


 ステラとの野球拳に敗北した事で敬語を禁止されたリンリンが、ぎこちない口調でそう言った。どうやらまだタメ口には慣れていないらしい。


「……テッドとアルたんがデキてるなんて冗談でも笑えない。アルたんは私の最推しなんだぞ……。ハァ……水着姿のアルたん……可愛かったなぁ……また会いたい」


 ぶつぶつと何か呟いているスカーレット。声が小さくてよく聞こえないが、なんというか……触れてはいけないスカーレットの深淵が垣間見えた気がした為、それ以上耳を立てるのは止めておいた。


「で。テッドさん。今日はどうするんですか? 海でたくさん遊んだし、もうお開きですか?」


「いや。まだ日没まで時間はある。適当なクエストを受けて、リンリンとスカーレットの力を試させてもらう」


「力試し? 今日の朝やったからもう十分じゃない? 本当はそんな事思ってないけど」


「まだだ。お前たちがモンスター相手にどれだけやれるのかを見させてもらう」


「どこまでも上から目線の男だな。まぁ実際に私たちより強いのだから仕方がないが……」


 不満げにそう言ったスカーレットを無視し、俺はクエストを受注するべく受付へと向かう。そこでふと、クエスト一覧の隣に張り出された複数の手配書が目に入る。


「賞金首……か」


 賞金首にもモンスターと同じようにランクが存在している。E、D、C、B、A、Sの順で強さが上がっていき、その基準はモンスターのランクとほぼ変わらない。Eランクの賞金首ならEランクのモンスターと、Sランクの賞金首ならSランクのモンスターとほぼ同等の実力を持っていると言っていい。だが、懸賞金はその賞金首の危険度に応じて上がっていく為、ランクと懸賞金は必ずしも比例はしない。その為、懸賞金は高いがランクが低い……という、コスパの良い賞金首を狙う小狡い賞金稼ぎも多く存在していると聞く。だが、俺はこういった手配書には今まで目を向けてこなかった。金やアイテムといった様々な報酬が貰えるクエストと違い、賞金首を捕まえても報酬は当然金のみ。加えて、人間である賞金首を倒しても当然レベルは上がらないし、どこにいるかも分からない賞金首をいちいち探して回るなど手間でしかない。クエストと比較すると金額は多少高めに設定されてはいるが、金に興味が無い俺からすれば、どうしてもデメリットばかりが目についてしまう。


 よって、今まで手配書には目もくれなかったのだが、今日は何故かやたらと手配書の存在が気になってしまった。しばらく呆然と手配書を眺めていると、その中に見知った男の顔がある事に気が付いた。


「……ほう」


 手配書一覧の中にあった見知った顔。

 それはかつて「レッドホーク」のリーダーを務めていた男、サルタナのものだった。



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