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09 パーティ結成


 『孤独の復讐者(アベンジャー)

 パーティに加入しない限り、たとえモンスターを倒してもゴールド、アイテム、経験値を得ることができない最早呪いと言っても過言ではないスキル。

 しかも、『孤独の復讐者(アベンジャー)』は『復讐の剣(エリーニュス)』発動時に自動で付加されるらしいが、『復讐の剣(エリーニュス)』の説明には、そんな事は書かれていなかった。


「詐欺だな……これは」


 俺は思わずそう呟く。

 そんな俺を見て、女がにまりと笑い、口を開く。


「そんな貴方に、私から提案があります」


 提案? あぁそういう事か。

 俺は、女が次に何を言いだそうとしているのかなんとなく見当がついてしまった。

 女が再び口を開いた瞬間、俺は断る準備を──


「あ、話を聞く前に断るのはなしですからね」

 

 残念ながら先読みを先読みされてしまい、完封されてしまう俺。

 仕方が無い、大人しく聞くとしよう。


「で、なんだ?」


「私とパーティを組みませんか?」


「断る」


「いいんですか? このままモンスターを一人で倒し続けても、お金もアイテムも経験値も何も得られないんですよ?」


 何故か人質を取っているテロリストのようなあくどい笑みを浮かべる女。


「よくよく考えれば『孤独の復讐者(アベンジャー)』のデメリットなど、俺にとっては大した問題ではない」


「経験値はどうするんですか? 敵を倒しても強くなれませんよ」


「俺は最初からモンスターを倒しても経験値を得ることはできないから、問題ない」


「お金は? 宿も借りれないし、食事も満足に取れませんよ」


「野宿して適当なモンスターを捕獲して食う。最悪何も食べなくても俺は死なない。問題ない」


「アイテムは? 素材がドロップしないと、強い武器や防具も作れませんよ」


「戦闘では『復讐の剣(エリーニュス)』とコピーしたスキルや魔法を使うから他の武器は不要だ。防具は尚更いらん。問題ない」


「わ、私は? こんなに可愛い女の子がまた一人でモンスターに襲われてもいいんですか!」


「一番いらない。何の問題もない」


「うわぁ~ん! コミュ障! 陰キャ! 中二病!」


 泣きじゃくりながらも、まぁまぁ辛辣な言葉のブローを放ってくる女。

 別に何とも思わないが、俺は女の頭を鷲掴みにする。


「筋力強化2ってどれくらいの力が出せるんだろうな。今から頭蓋骨クラッシュのタイムアタックに挑戦してみてもいいか?」


「よ、よく見たら、貴方って普通にイケメンですよね~。赤い瞳とか紫色の髪とか、最高にクールで……痛い痛いいだぁい! 力が試したいなら自分の頭でやってくださいよ! 私の頭は世界にたった一つ! 貴方の頭は無限に再生! オッケー!?」


 激痛に耐えられないのか、早口でまくしたてる女。

 俺はぱっと女の頭から手を放す。


「はぁはぁ……。このDQN……DV男……女の子に暴力振るうなんて、男として最低ですからね?」


「大変残念だ」


 最低男のレッテルを貼られ、俺はテキトーに落ち込む。

 ん? というかちょっと待て。

 俺は女の発言を振り返り、妙な点に気が付く。


「目が赤くて、髪が紫? 俺が?」


「え、えぇ……」


 まだ頭部が痛むのか、頭を手で押さえながらそう答える女。


「頭が痛いのか。どうした、アイスの食べ過ぎか?」


「本気でそう思うなら頭を冷やすのは貴方の方です」


「そうか。で?」


「あぁはい。貴方の目と髪の色でしたよね。見たまんま答えただけですよ……」


 すると、女が手鏡を取り出して俺に差し出してきた。


「わざわざ持ち歩いてるのか」


「当たり前ですよ、手鏡は女子の必需品ですから」


「あぁそ」


 女から手鏡を借り、自分の姿を確認する。


「誰だコイツ」


「貴方でしょ……あ、そういえば名前なんていうんですか? 私はステラです」


「テッドだ」


 妙な流れで自己紹介を済ませる俺とステラ。

 まぁそれはいいとして、だ。

 ステラから借りた手鏡には、今までの自分とは別人の姿が写っていた。

 黒い髪は青みがかった紫色に。

 茶色い瞳は赤色に。

 健康的だった肌は人形のように真っ白になっていた。


「しかも今のテッドさんの気配って、結構魔族に近いというか……明らかに普通の人間のものじゃないですよ」


「そうなのか」


 俺には確認できない事だが、もしそれが本当なのだとしたら、それは……


「……面倒だな」


「事情を知らない人が今のテッドさんを見たら、普通に魔族だと勘違いしちゃいそうです」


 『復讐の剣(エリーニュス)』は倒しさえすれば、モンスターだけでなく人からもスキルや魔法をコピーできるらしいが、俺は人と好んで争うつもりはない。モンスターを狩っている時に、いちいち人に襲われていては面倒だな。


「話は戻りますがテッドさん……私には強いパーティを作って、どうしても見返したい人がいます。テッドさんのその強さを私に貸してくれませんか? お願いします!」


 真剣な眼差しでそう訴えかけてくるステラ。

 戻るも何も、その話はもう断った筈なんだが……。そう思ったが、ここで少し考えを改めることに。


「分かった。俺でよければ、一緒にパーティを組もう」


「本当ですか!? やったぁ!」


 ぴょんぴょんと跳び跳ねるステラ。いちいち騒がしい女だな。

 まぁ今の俺は能力といい、外見といい、単独行動に向かなすぎるしな。

 それに経験値はともかくとして、金とアイテムはあるに越したことはない。

 ひとまずはステラとパーティを組んで、行動を共にするほうが得策だろう。

 ……うるさくはなりそうだが。


「私は最強のパーティを作って、あの人を見返す為に! テッドさんは、そうですね……より多くのスキルや魔法をコピーしながら、失われた記憶を探す為に! ということでいきましょう!」


 勝手に目的を決められたが、記憶探しか。まぁ悪くないかもな。

 流石にここまで分からない事だらけだと、自分が何者なのか気になってくるところだしな。

 あの隠し部屋のバケモノに殺される前の俺、そして『レッドホーク』に加入する前の俺。

 ひとまずは、そんな自分を探し出すところから始めてみるとしよう。


 こうして、別々の目的を持った俺とステラは新パーティを結成した。



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