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88 海

せっかく海に来たんだから、海に行こうぜ。


「わぁ、ここが海ですかぁ! なんだかんだで初めて来ましたよ!」


 ステラのやかましい第一声で、自分が今、どこにいるのかを改めて実感した。俺の目前には、鮮やかな青色で染められた水の世界が広がっていた。

 

「皆さん! せっかく海に来たんですから泳ぎましょう! この景色を前にして泳がないのは嘘ですよ!」


 テンションが爆上がりしているステラは砂浜まで走っていき、豪快に服を脱ぎだした。そして、服の下に着ていた水着が露わになる。


「みーなーさーん!」


「はいはい分かったわよ。今行くから待ってなさーい」


 気が抜けるような返事をするジャスパー。そして、一緒に来たスカーレット、リンリン、ホワイトパールのメイドたちも服を脱ぎ、水着になって海へと向かっていく。


「君は行かないの?」


 無心で海を眺めていると、横からアルトに話しかけられた。目を向けると、いつの間にかアルトも水着になっていた。俺たち全員をわざわざ瞬間移動で海に連れてくるくらいだ。よほど海へ来るのが楽しみだったんだろう。子供にしてはかなり大人びた印象を受けるアルトだったが、こういった部分はまだ年相応なんだな。


「俺は──」


 言葉を返そうとした瞬間、俺の背後から、何故か一緒に海へやって来た酒カス共が姿を現した。


「おいおいテッドちゃんよォ。せっかく海に来たってのに、テンション低くなぁ~い?」


「この美しい景色を目に焼き付けないなんてよ。お前の感性はマジで終わってんぜぇ? テッドォ」


 鬱陶しいテンションで馴れ馴れしく話しかけてくる酒カス共。俺は振り返ることなく、思った事をそのまま口にする。


「お前らが目に焼き付けたいのは海じゃなくて女連中の水着だろ」


「ヒュー♪ 流石だなテッド。付き合いが長くなってきただけあって、俺らの事よく分かってきたじゃねぇか」


「今のお前たちの姿を見れば誰だってそう思うだろ」


 さも俺が名推理をしたかのような反応をする酒カス共。だがその姿は、荒ぶる性獣を抑える為に両手で股間を隠し、前屈みになっているという、なんとも無様なものだった。


「仕方ねぇだろ!? 俺たちのアイドルステラちゃんだけじゃなく、他のカワイ子ちゃんまで水着になってるんだぜ!? つーかなんでお前らがあの天国を前にしてトランスフォームしねぇのか不思議でならねぇよ!」


 何がトランスフォームだ。男のメカニズムに屈しただけだろ。


「確かに随分と目に優しい光景だけど、僕はショタだからね。何事においてもそう簡単に心を揺さぶられはしないのさ」


 いつもの謎理論を口にするアルト。コイツは、ショタを人類の超越者か何かと勘違いしているんだろうか。そんなアルトの言葉を全く理解していないであろう(俺も分からない)酒カス共は適当に相槌を打ち、すぐさま視線を女連中の方へと向けた。


「うっひょ~。ステラちゃん、普段は子供っぽいけどスタイルめっちゃいいよなぁ! ガン突きしてぇわ!」


「ステラちゃんもいいけどよ! エロさで言ったら断トツでジャスパー様だろ! なんだよあのドエロい下品な体はよぉ! あの乳反則だろぉ! ぷるんっぷるんでマジたっまんねぇ!」


「『レッドホーク』の2人も至高ブヒィ……。スカーレットちゃんのケツで圧し潰された後に、リンリンちゃんの美脚で首を絞められたら最高だブウ!」


「水着メイドちゃんたち皆クッソ可愛くね!? ×××で〇〇〇! *****!!」


 興奮するあまり、後半の方は最早人語すら話さなくなった酒カス共。


「ヒャッハァ! 普段やっっっすい風俗のパネマジでデブとブスとババァを召喚し続けて徳を積んだ甲斐があったぜぇ!! Prrrrrrrrrrrrrrrrrrッッッッハァァ!!」


 ボルテージが最高潮へと達した酒カス共は、ついに女連中の元へと走り出していった。


「止めた方がよかったかな?」


「大丈夫だろ。酒カス共はクソみたいに雑魚だからな。女連中なら余裕で返り討ちにできる」


「確かに。アル中お兄さんたち、信じられないくらい弱いもんね。普段相当簡単なクエストしか受けてないから、レベルが全然上がらないんだろうね」


 酒カス共を一通りディスった後、俺たちはなんとなく砂浜を歩き始めた。


「どうだい? 初めて見た海は」


「お前から聞いていた通りだな。どこを見ても水で満たされている」


「そういうのじゃなくてさ、綺麗だとか思わなかったの?」


「別に」


「つまんないなぁ。あ、そうだ。後で海水を舐めてみるといいよ。すっごくしょっぱいから」


「分かった」


 機械的に言葉を返していると、アルトが突然足を止めた。


「どうした?」


「今思いついたんだけどさ。ちょっとお願いがあるんだよね」


「なんだ?」


 一呼吸置いて、アルトがゆっくりと口を開いた。


「今から海の向こう側……霧のある場所まで行ってみないかい?」


 今までの大人びた態度から一変、アルトは子供のように目をキラキラさせながらそう言った。



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