85 テッドVSレッドホーク
一気に間合いを詰めた2人は、正面からそれぞれ分身へと連撃を放った。スカーレットは剣に炎を纏わせての連続突き、リンリンは拳に熱気を纏わせた連続ラッシュだ。確かに中々の威力と速度だが、この程度ならなんてことはない。分身は「復讐の剣」を発動し、右手に持った黒い大剣でスカーレットの攻撃を難なく捌いていく。
「バ、バカなッ──!」
思わず驚きの声をあげるスカーレット。そして、分身はスカーレットの攻撃をいなすと同時に、左手でリンリンの打撃を受け流していく。
「ちょッ──! 嘘ですよね!? こんな馬鹿げた芸当ッ──!」
このままでは攻撃が当たらないと踏んだのか、2人は連撃中に一瞬アイコンタクトを取り、一度分身から距離を取った。
「これは想像以上……というか、予想外だな」
少し息を切らしながら、スカーレットがそう呟いた。
「私たちの同時攻撃を、右手と左手で別々の動きをしながら防ぐなんて……ちょっと、ガチでヤバくないですか!?」
「この強さで分身とは、恐れ入るな」
「……どうします?」
「ノアがいれば幻術で錯乱させた隙に本体を狙いに行く事もできたが、私たちは2人共前衛アタッカータイプだ。そういった策は使えない」
「と、なると……私たちにできるのは、アレを正面突破する事だけですか。本当は思って無いですけど、私たちって本当脳筋ですよね……」
「あぁ。作戦のさの字も無いが……そうするしかない。まぁどの道、あいつに生半可な小細工が通じるとは思えないしな……。こうするしかあるまい!」
スカーレットがそう言った直後。
2人の体から、さらに強力な熱風が吹き荒れた。
「『竜王開放・一!』」
「『憤怒の極意』!」
各々スキルを発動させ、全力状態になった2人は、先ほどまでとは比べ物にならない速度で分身に詰め寄った。
「奥義・サラマンドラ!!」
「爆拳・ハ・ゼロ!!」
正面と背後から分身を挟み撃ちにする形で攻撃を放つ2人。スカーレットの炎剣から放たれた蜥蜴の姿をした巨大な炎が、正面から分身を丸呑みにすると同時に、リンリンが背後から分身を殴り飛ばす。直後、巨大な爆発が巻き起こり、辺り一帯の草原が炎に包まれた。
「スカーレットさん!」
「あぁ、今だ!」
大爆発で分身を止めた隙に、寝っ転がっている俺の方へと向かってくる2人。だが……
「な、なんだ……! 体が動かない……!?」
「すみません! この空間に体を無理矢理掴まれてる感じ、なんかデジャブなんですけど……」
あと数メートルで俺に触れられるという所で、2人の動きがピタリと止まった。そして、爆煙の奥から分身が姿を現す。その体は、漆黒の光沢によって塗りつぶされていた。
「その全身が黒い鎧に覆われたような姿……。まさか……ガイアの『硬化』!? という事はこの空間魔法も……。なんでお前が──」
「なんだ知っていたのか」
数メートル離れた場所で身動きが取れなくなっている2人に対して、俺はそう口にした。
「俺は倒した相手のスキル、魔法といった能力をコピーできる。この力もそうして手に入れた」
「なんだと……。という事は、お前がガイアを……。私たちが手も足も出なかったあの怪物を……」
普段の凛々しい表情から一変、初めて弱気な表情を見せるスカーレット。リンリンも似たような表情を浮かべている。そうか、魔王軍との戦いでコイツ等を倒したのはガイアだったのか。ならよかった。おかげで、コイツ等の心を折る手間が省けた。
「テッド。お前は、一体何者な──」
直後、分身が両腕を左右に振った。
たったそれだけの動きで、静止しているスカーレットとリンリンの体が、不可視の衝撃によって大きく吹き飛ばされた。
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