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84 勝利条件


 翌朝。

 俺は準備を終え、ポカリ街正門を抜けた草原へと瞬間移動した。草原には既にスカーレットとリンリンがおり、軽い準備運動をしていた。


「遅い。何をしていた」


 緋色の髪が特徴的な女、スカーレットがやや不機嫌気味にそう言った。


「別に遅くないだろ。まだ10分前だぞ」


「すみません。本当はそんな事思ってないですけど、女性を待たせるなんて男として最低ですよ」


「……あぁそうだな。悪かった」


 チャイナ服が特徴的な女リンリンがそう言った。勝手に早く来ておいてキレるのは理不尽極まりない気がしたが、どうでもいいので特に反論はしなかった。


「そういえばテッド。お前の仲間はどうした? まだ姿が見えないが」


「この感じだと多分来ないな」


 ジャスパーは確か朝が苦手だし、ステラの奴は恐らく2日酔いだろうしな。


「すみません。本当はこんな事言いたくないんですけど、貴方人望無いんですか?」


「無いな」


 人望があったら中二病、根暗……なんて揶揄されないだろうし、モノマネされて馬鹿にされたりもしないだろうしな。


「……そんなハッキリ言わなくても。なんかすみません」


「お前が言わせたんだろ」


「まぁそんな事より、これで全員ならそろそろ始めないか?」


 少し食い気味にそう言ったスカーレット。きっと今の会話に興味が無かったのだろう。


「そうだな。少し早いが始めるとしよう」


「勝負の内容はどうするんですか?」


 俺は2人から少し離れた場所まで歩き、そこに座り込む。


「そこから俺にタッチできたらお前らの勝ちでいい。勿論、俺はここから一切動かないし、何もしない」


 俺の言葉に、思わず言葉を失う2人。


「お前……どういうつもりだ?」


「すみません。私たちの事バカにしてるんですか?」


 バカにしてるつもりは毛頭ない。先ほど2人のレベルを確認したが、リンリンはレベル94、スカーレットはレベル107……十分に猛者と呼べるレベルだった。だが、それはあくまで世間一般での話。俺が直接相手にするレベルには達していない。だから……


「俺はここから動かないが、代わりにコイツがお前たちの相手をする」


 そう言って、俺はスキル「分裂」を発動させ、自分の分身を生み出した。


「それはスライムのスキル『分裂』……。モンスターのスキルを使えるとは珍しい。いやそれよりも、まさかその分身が私たちの相手だとでも?」


「そう。お前たちの勝利条件は2つ。この分身を倒すか、分身の隙を突いて本体の俺に触れるかだ。制限時間は無しでいい。俺の勝利条件はお前たちを降伏させる事のみだ」


「……スカーレットさん、私たちメチャクチャ舐められてますね」


「そのようだな。怒りを通り越して不愉快だが、まぁ向こうがそれでいいと言うなら特に異論は無い。遠慮なく叩きのめすとしよう」


「決まりだな。じゃあ好きなタイミングで始めてくれ」


 俺はそう言って草原に寝っ転がる。分身とは視界を共有している為、目を閉じていても状況把握に支障はない。


「……スカーレットさん」


「あぁ、分かってる……」


 鋭い眼光で分身を睨みつける2人。だがそれは、俺の舐めた態度が気に食わなかったからではない。


「コイツ、全く隙が無い……」


 思わず冷汗を流すスカーレット。まぁこの辺りは流石だな。そう簡単に速攻を仕掛けてはこないか。


「オマケに身体の奥底までビリビリと伝わってくるこの気迫と殺気……。分身でこの威圧感か……これは本気でかかる必要がありそうだな」


「そうですね……本当は本気なんて出したくなかったんですけど、やるしかないようですね!!」


 直後。2人を中心に強い烈風が吹き荒れた。

 どうやら言葉通り、本気を出す気になったらしいな。


「行くぞリンリン!」


「はい!」


 そう叫び、2人は風のような速度で分身へ特攻を仕掛けた。



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