82 勝負
「行動を共に……だと? それはつまり、お前たちのパーティに私たちを迎え入れるという事か?」
少しの間黙っていたスカーレットが、半信半疑といった様子でそう言った。
「あぁそうだ。といっても、お前たちが目的を果たすまででいい。その後は残留するなり脱退するなり好きにしてくれていい。しばらく……と言ったのはそういう事だ」
「どうして急にそんな話を? 本当はそんな事思って無いですけど、一体何を企んでるんですか?」
やや身構えながらそう口にするリンリン。まぁ当然の反応だな。
「別に。ただ新しく強い仲間が欲しいと思っただけだ」
「……本当ですか? 怪しすぎます」
じっとこちらを見つめてくるリンリン。だが別に嘘はついていない。かつて「レッドホーク」にいた時から、もしも自分がパーティを作ったとしたら、俺はスカーレットを仲間にしたいと思っていた。高い格闘センスと「竜騎士」という上級職を生まれ持ち、常に冷静沈着で視野が広い。俺の見立てではサルタナやノア以上の潜在能力を持った女だ。横のリンリンは特に必要という訳では無いが、スカーレットを引き抜ける確率が上がるなら、ついでに来てもらっても構わない。パーティが大所帯になる事にこれといったデメリットは存在しないからな。
「お前たちはノアを探すと言っていたが、たった2人で何ができる? 今回の戦いで、お前たち2人とノアが敵の主力に返り討ちにされたという話は聞いている。また同じ事を繰り返す気か?」
「いや、同じ事にはならないさ。私たちはさらに強くなる。どんな敵にも負けないくらいにな」
「そうですよ! 本当はそんな事思って無いですけど、はっきり言って余計なお世話です! 貴方みたいな超絶上から目線の人の仲間にはなりません!」
「サルタナの奴も十分上から物を言う奴だったと思うが、まぁいい。なら、明日俺と勝負しないか?」
「……勝負だと?」
俺の言葉に、スカーレットは眉をひそめた。
「そうだ。明日の朝7時、ポカリ街正門を抜けたところにある草原で俺と勝負しろ、2人がかりで構わん。ただし、負けたら俺のパーティに入れ」
「何を言い出すかと思えば下らない。申し訳ないがお前程度の実力では、私たちの一人にすら勝つことはできない。やる前から結果は見えている、時間の無駄だな」
「俺と戦うのが怖いのか? どんな敵にも負けないくらい強くなる……とか言ってたが、その程度の器でよくそんな寝言を口にできたものだな」
「……ほう」
ピキッ……と、スカーレットの表情に僅かに青筋が立った。基本的に冷静なスカーレットだが、自分の強さに対するプライドが高い為、こういった挑発には案外弱い。そして、それはリンリンも同じらしく、怒気を込めた視線をこちらに向けてきた。
「面白い。私は別に受けてやってもいいが、リンリンはどうしたい?」
「もちろん受けて立ちますよ! それに、本当はそんな事思っていないですけど、この人前々から気に入らなかったんですよね! 合法的にぶちのめせるいい機会です!」
「決定だな。じゃあまた明日」
「待て、テッド」
足早に立ち去ろうとした俺だったが、スカーレットに呼び止められる。
「なんだ」
「私たちが負けたらお前たちの仲間になる事は分かった。だが、逆に私たちが勝った場合はどうする?」
「あぁ、そういえば決めてなかったな」
少し考えるが、特にこれといった案は出てこなかった。
というのも、こいつ等に負ける自分の姿が全く想像できなかったからだ。
「任せる。明日までに考えておいてくれ」
「……貴方本当にムカつきますね! とんでもない要求されても文句言わないで下さいよ!」
「あぁ大丈夫だ」
「言いましたね! その鉄仮面を阿鼻叫喚の形相へと変え──」
なんだか会話に飽きてきた為、やかましく叫ぶリンリンを無視して、俺はそのまま店を出た。
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