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78 影


「ふむ。取り敢えず、今回もなんとかなったのう」


 テッドたち突入チームが去った後の、魔王城のとある一室にて。

 七幻魔・序列第三位の神楽は、やたら派手に装飾された金色の椅子に座る。


「あの小僧……。まさかあそこまでやるとはのう。想像以上じゃわい」


 神楽の脳裏には、「ホワイトパール」のリーダーであるアルトの顔がよぎっていた。


「しかもラミアに加えて、あのガイアまでもが倒されるとはのう……。今回わらわたちが払った代償はかなり大きなものになってしまったぞ」


 神楽はそう言って、床に倒れている全長8メートルほどの巨大なオオカミに目を向けた。先ほどの戦いで、突如現れたレオに踏み潰されてしまった七幻魔・序列第七位のガロウだ。


「……おい。いつまでそうしておるつもりじゃ。お主が反応せんと、まるでわらわが独り言を言っているように見えるではないか」


 神楽がそう言った直後。

 倒れているガロウの体が真っ黒に染まっていき、オオカミの姿から人型の黒い影へと変化した。


「いやーごめん。君がいつまで一人で喋り続けるのか見てみたくなってさ」


 人型の黒い影は、脳内に直接ハウリングするかのような異質な声でそう言った。


「質が悪いのう。今回、お主がそうやって静観を決め込んでいなければ、七幻魔がここまで倒される事もなかったじゃろうに」


「まぁ、確かにラミアはともかくあのガイアがやられるなんてね。正直予想外だったよ。素の戦闘力だけで言えば、ガイアは七幻魔最強だし。というか、誰があのガイアを倒したの?」


「テッドじゃ。帰ってきてから魔王城に記録された戦闘映像を確認した。しかし、テッドと戦う頃には既にガイアはボロボロじゃったがな」


「へぇ。じゃあ、そこまでガイアを追い詰めたのは?」


「『ブラックファング』のリーダー、レオじゃ」


「あー僕を踏んづけた彼か。しかし惜しいなぁ。ガイアを倒すほどの実力者なのに。ちょっと来るのが早すぎたね。順当に行けば、もしかしたら3人目になれたかもしれないのに」


 黒い影は少し落胆した様子でそう言った。

 そんな黒い影を見て、神楽はさらに続ける。


「ところで、第一位はどうしたんじゃ。まだ帰っておらぬのか」


「あぁうん。さっき帰ってくるように伝えたところ」


「そうか。収穫は?」


「残念ながら無し。けどまぁ、彼らをたった一人で止めるなんて第一位にしかできないし、本当ぶっ壊れだよね、あの強さ」


 そう言って、黒い影は自分の体にゆっくりと手を突っ込み、闇の奥から何かを取り出した。それはふりふりとした柄が特徴的な、薄ピンク色の下着だった。


「そ、それはわらわのパンツ!? 待て!! な、なんでお主がそれを持っておるんじゃ!?」


「意外と可愛いデザインのパンツだね。そういうの興味無いタイプだと思ってたな」


「ま、まさか……。ポカリ街に降りる前、お主が別室で準備しとったのは……」


「勿論、君のパンツ・ベスト・オブ・ザ・イヤーを決めていたのさ」


 黒い影はそう言って、まるで口から万国旗を取り出すマジックのように、自分の顔から大量のパンツを取り出した。無論、全て神楽のパンツである。


「キ、キモすぎるわお主!! 取り敢えず返せ!!」


「あらよ! ほっ!」


 大切なパンツを取り返すべく、凄まじい速度で黒い影へと突っ込んでいく神楽。しかし、黒い影は数枚の丸めたパンツでジャグリングをしながら、柔軟で流動的な動きで神楽の攻撃を躱し続けた。


「お、おのれ……。全く捉えられん……」


「いやー楽しいね」


「どこがじゃ! わらわだけでなくラミアや他の女魔族からも毎度毎度下着を盗みおって!」


 どうやら黒い影が下着を盗むのはこれが初めてではないらしい。黒い影は怒り狂う神楽を両手で制止する。


「まぁまぁ神楽ちゃん。こんなやり取りを楽しめるなんて、世界が平和な証拠じゃないか。違うかい?」


「お主のような変態がのさばる世の中を、わらわは平和だとは思わない」


「見解の相違だね」


「お主が変態なのは世界の総意じゃがな」


 その言葉を受け、黒い影はピンクのパンツ一枚を残し、大量のパンツを再び自分の体の中へと戻す。そして、手に残したピンクのパンツをゆっくりと被った。


「さて、話を戻そうか」


「よくその姿で仕切り直せると思ったなこの変態が」


「まぁそうカッカしないでよ。折角またしばしの安寧を手に入れたんだからさ」


 パンツを頭に被った黒い影に呆れ果てた神楽は、一度パンツの事は忘れて、話を続ける事にした。


「……まぁそうじゃのう。じゃが、この安寧は偽りじゃ」


「勿論分かってるよ。だから、次で全て終わらせる」


 深刻な黒い影の声に、神楽は驚いた表情を浮かべる。


「……ついに始めるのか。何年後じゃ?」


「早くて3年後くらいかな」


「そうか、もうそこまで……」


 神楽の表情が曇る。

 それを見た黒い影は、被っているパンツを脱ぎ、神楽に向けて飛ばした。神楽は小さくジャンプして、飛んできたパンツをキャッチした。


「神楽ちゃん。僕たちにはもう時間が残されていない。なんとしても3年後までに器を完成させるんだ。そして……」


 黒い影は一度言葉を切り、より重みを込めて再び言葉を発した。


「世界を元の姿に戻す」




----------------------------------------


名称:シャドウ

ランク:E

属性:闇


備考:七幻魔・序列第七位?


----------------------------------------




「……あぁ、そうじゃな。ところでシャドウ」


「なんだい?」


「残りのパンツも返してほしいんじゃが」


 神楽のその言葉を聞いて、シャドウは闇の彼方へと消えていった。




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