73 実力
一方。後始末を終えた俺は魔王城内を歩き回っていた。だが、別に闇雲に動き回っている訳じゃ無い。先ほど戦闘を終えた後、一瞬感じた異質な魔力……。それは、あの日南ゴルゴン山で感じた魔王の気配と同質のものだった。
「この辺りか。しかし、随分と荒れてるな」
頑丈な魔王城の壁が粉々に吹き飛ばされていたり、地割れが発生していたりと、どうやら随分と派手な戦闘を行った者たちがいたらしい。俺は異質な魔力を辿って、崩壊した壁から広間の中へと入る。すると……
「!? お前は!!」
広間の中央で、3メートルほどの大男が俺を見て大声でそう叫んだ。
「この凍てつくような殺気……まさか、お前がテッドか!?」
「あぁ」
「……フハハハ! そうかお前がテッドか!! ジャスパーと互角程度だって聞いてたが!! なんだオイ!! 噂以上にヤリそうじゃねぇか!!」
「そう言うお前は何者だ。七幻魔か?」
「フハハ! その通り!! 俺は七幻魔・序列第二位のガイアだ!」
なるほど。対峙しただけでかなりの実力者である事は分かったが、七幻魔の第二位であるなら納得がいく。元七幻魔の第四位であるジャスパーと比較しても、かなりの実力差があると見ていい。しかし、ある程度は回復したみたいだが、今のガイアの体は決して万全な状態では無い。恐らく別の誰かと戦っていたのだろうが、俺と共に来た魔王城突入チームの中に、コイツとまともに戦えるレベルの奴はいなかった。極めて高い魔法の実力を持つであろうあのアルトでさえ、コイツをここまで追いつめるのは極めて困難だろう。仲間割れでもしたか、あるいは俺たちの増援か……いずれにせよ、コレをやった奴がバケモノである事に違いは無い。
「オイオイ! そんなジロジロ見るなよ! 照れるじゃねぇか!」
「注目される事を恥じる奴の声量じゃないな」
「フハハハ! 確かにな!」
豪快に笑うガイア。すると、ガイアの全身が漆黒の光沢に覆われていき、さらに体が大きくなっていく。外見だけでは無い。ガイアの魔力がさらに高まり、充実していく。黒い稲妻のような殺気がガイアの体中から放たれ、空気がビリビリと振動する。
「お前も魔王から力を貰ったクチか?」
「あ? フハハハ!! いや、俺はパスしたぜ!! 折角つえー奴が来るかもしれねぇのによォ、借り物の力で戦ってもつまんねぇだろ!?」
「見上げた根性だ。どこかのシャブ漬けに聞かせてやりたいものだ」
「シャブ漬け? ……あぁ!! もしかして転送屋の事か!? ブハハハ! 確かに! あいつはお前を倒す為に特に大量の魔力を魔王様から貰ってたからな!! まぁお前がここにいる時点で結果はお察しだがな!!」
「そうだな」
なんというか……コイツの声が過剰に大きい所為か、普段の会話より何倍も疲れるな。俺は適当に流して会話を終わらせると、「復讐の剣」を発動し、黒い大剣を構えた。
「おぉ!! やる気だな!!」
「あぁ」
「フハハハ!! 折角見つけた強敵がいなくなっちまった矢先に、またお前みたいな強者と出会えるなんてなァ!! 俺はついてるぜ!!」
「いいから来い」
獣のような獰猛な笑みを浮かべるガイア。
その瞬間。ガイアの姿がその場から消える。これまで戦ってきた敵とは比べ物にならないほどの、桁違いの速度だ。俺は高密度の闇の魔力を大剣に纏わせる。そして……
「な」
「に?」
超高速で突進してきたガイアを、頭から真っ二つに切断した。
「まぁこんなものか」
後ろを向き、真っ二つになって地面に転がるガイアの死体を確認する。
確かに、ガイアは今まで戦ってきた敵の中で一番強い。実際、俺であってもコイツを倒すのは容易では無かった。だが、それはつい先ほどまでの話。オリジナルのテッドとの戦いで、どうやら俺の力はさらに飛躍的に上昇したらしい。しかし、格下を倒しただけでここまで強くなれるとは。あんな奴でもコスパの良い踏み台としては役に立ったみたいだな。
「さて」
ガイアを倒した俺は、視線を前方へと向ける。
その先には、異質な気迫を放つ黒と金で装飾された扉があった。
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